【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~戦いに巻き込まれるけれど、モフモフとハーレム付きのスローライフに意地でもしがみつく~
1-Ex4. 飲める口と思ったらいろいろと勢い余っただけだった(1/2)
1-Ex4. 飲める口と思ったらいろいろと勢い余っただけだった(1/2)
家の一室。
ムツキもナジュも寝間着の浴衣を借りていた。ムツキは藍色の浴衣で、ナジュは薄い桃色の浴衣で、既に仲睦まじい夫婦といった様子である。
「今日は楽しかったよ。昔のナジュもいろいろと知れたしな」
「それは……少し恥ずかしいな。はい、お茶だ」
ナジュはお茶を淹れながら、気恥ずかしそうにそう呟く。
「ありがとう。しかし、正装はやはり身体が固くなるな」
「お疲れ様。今日は、惚れ直した。いや、旦那様には惚れっぱなしだ」
「それは……少し恥ずかしいな」
ナジュはムツキの後ろに回り、肩を優しく揉み始める。
「ありがとう。肩を揉むのが上手いな」
「ふふっ。昔はよく父の肩を揉んだものだ。母には肩たたきだな」
「親孝行者だな。しかし、あー、ちょっと飲み過ぎたな。鬼族の酒も旨いな。人族の酒よりも少し雑味があるけど、決して飲みにくいわけじゃない」
ムツキはまだ顔が赤く、パタパタと手を振って顔を冷やそうとしている。
「そうなのか? 私は飲んだことないから分からないな」
「そうか。まだ17だもんな」
何の気なしにそう言ったムツキの言葉に、ナジュは引っ掛かりを覚える。
「む。ちょっと待て。今、子ども扱いしたな? 私はもう大人だ。酒は飲んでもいいのだぞ」
「そうなのか? まあ、前の世界でも国や地域で飲める年齢が異なっていたからな。」
「……? それはよく分からないが、私ももう大人だ。酒の一斗や二斗くらい問題ないぞ!」
一斗は約18リットルである。
「そんなにお腹に入らないだろう。どれくらいだと思っているんだ」
「むむ。升か。合か」
一升は約1.8リットル、一合は約0.18リットル、つまり、180ミリリットルである。
実際のところ、ナジュはとりあえず聞いたことのある単位を言っているだけだった。
「ははは。単位も分からないのに、本当に飲めるのかな?」
「むむむ! それは私への挑戦と受け取ろう。そこに貰った酒があるのだろう。私が今飲む」
ムツキが少しからかうと、ナジュはムスッとした表情で酒を所望した。よほど、子ども扱いされたように思えるのが気に食わないらしい。
「おいおい、酒は無理に飲むものじゃないぞ」
「無理などしていない! ただ、初めての酒は旦那様に注いでほしい」
ナジュはお猪口を用意して、顔を若干俯かせながら、酒をムツキの前に置いた。
ムツキもそう言われては注がざるを得ない。
「かわいいなあ。無理はしないようにな」
次の瞬間、ナジュは一気に飲み干した。
「お猪口とはいえ、一気か……。大丈夫か?」
「……美味しい。もっと欲しい」
「おぉ。いけるのか? ほら」
ナジュはお猪口を前に出した。ムツキは一気に驚きつつも次を注いだ。そして、ナジュはそれを一気に飲み干す。
次第にナジュの白い頬にほんのりと赤みが帯びてくる。
「美味しい。もっと欲しい」
ナジュは潤んだ瞳をして上目遣いでムツキにお酒をねだってくる。
「いや、ちょっと早くないか? ちょっと水も飲んだ方が……」
「もっと欲しい!」
「えっと、まあ、怒らない、怒らない。お酒は飲めばなくなるけど、逃げはしないから」
ナジュの強い語気に、ムツキは宥めるような優しい声で話す。彼女はその優しい声がくすぐったいのか、嬉しそうな笑みを浮かべる。
ムツキはナジュに水を飲ませた後、まだ酒を欲しがるので注いであげる。
「ん」
一気。仕方なく注ぐ。
「ん」
一気。仕方なく注ぐ。
「ん」
一気。注がない。
「いや、早い! 明らかにペース早いから!」
ムツキはお酒を自分の身体の後ろに隠した。
「妾にお酒を飲ませないのか。水でお茶を濁そうと言うのか」
「水でお茶を濁すって面白い表現だな」
「誤魔化すでない! そういう態度はモテぬぞ!」
「……モテてほしいのか?」
「やだ!」
「えぇ……」
ナジュは服が若干はだけそうになるのも構わずに、ムツキにくっついてきた。髪の毛が少し邪魔なのか、大きく掻き上げて首元を露わにする。
そのようなナジュの上気した顔やいつもはしない女性らしい仕草に、ムツキはドキドキする。
「意地悪しないで、ねぇ、いいから注いで」
「いや、もうやめておけ。身体熱くなってないか?」
「……ほんのちょっとだけ、ぽーっとするかもしれん」
「ほら、もうやめとこう」
「む。まだ飲めるぞ! 旦那様は妾を信じていないのか!」
「酒を飲むと面倒なタイプか」
「む?」
「……あ」
ムツキは明らかな失言をしてしまった。そして、それを聞き逃すナジュではない。
「面倒? 今、面倒と言ったな?」
「あ。いや。あー」
ムツキは目を逸らすが、ナジュはそちらに素早く回り込む。
「面倒って言ったな?」
「はい」
ムツキは何かに気付いたのか、自分のはだけがちだった服を着直しつつ、これ以上ナジュが荒れないように大人しく反省した様子を見せる。
「素直でよろしい。そうだな、妾は少し眠いので、旦那様には……膝枕の刑に処す」
ナジュはそう言うと、ムツキにゆるいあぐらをかかせて、横になった。ナジュの頭がムツキのあぐらの中にすっぽりと収まる。
「ナジュ、あったかいな。飲み過ぎだな」
ムツキはナジュの頬に手を当ててそう呟く。
「旦那様の手、少しひんやりしてる? 気持ちいい」
ナジュは少し身体を動かして、ムツキと見つめ合うように仰向けに寝転がっていた。
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