【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~戦いに巻き込まれるけれど、モフモフとハーレム付きのスローライフに意地でもしがみつく~
1-20. 帰らせると思っていたらそうならずに賑やかになった(5/5)
1-20. 帰らせると思っていたらそうならずに賑やかになった(5/5)
ユウとナジュミネが風呂から出た後、次はムツキとプロミネンスが入ってきた。
「すごい身体だな」
ムツキはプロミネンスの身体を見て、そのような言葉が思わず口に出た。
「身体は資本じゃからな。賢人とはいえ、日々の筋トレを欠かしたことはない」
ローブを纏う頭脳派の老人とは思えないほどの張りのある筋肉はムツキの持つ理想的な容姿にも引けを取らない雄々しさがある。
「おぉ。毎日の筋トレは立派だな」
「お主もな」
プロミネンスはムツキの股間を見ながら、親指をグッと突き立てた。
「いや、どこ見て言ってるんだ……」
「はっはっは。そうそう、こういうのが男同士のノリじゃよな」
「……そりゃ男同士でしかできないバカ話には間違いないな」
年齢を感じさせない二人の会話は、露天風呂でも続く。
「ふぅ。いい湯じゃ。それに、ここは月が綺麗に見えるのう」
「いいだろ? 1日の疲れなんて、どっか消えるよ」
黒猫がお盆の上に酒とぐい呑みを器用に持ってきた。
「ニャ」
「ありがとう。よっと」
「すまぬな。ありがと。では、よっと」
2人は余計な言葉を交わすことなく、お互いに酒を注ぎ合う。
「ありがとう。では、乾杯」
「乾杯」
「かーっ! 常温の酒も旨いな。これは、人族の酒じゃな。あ奴らは手先が器用じゃし、真面目じゃから良いものを作りよる」
「いつでも来てくれ。ここに来れば、いくらでも出すさ」
ムツキはプロミネンスと話していると不思議な感覚になっていた。
まるで旧来の友人のようであり、年の離れた先輩のようであり、親のようにも感じる。
「まあ、ムツキやナジュミネの顔でも見にたまに来るかもしれん。それよりも、今日は急に押しかけてすまんかったな」
プロミネンスは少し申し訳なさそうな顔をしてムツキに謝った。
ムツキは酒を一口入れてから、笑顔で口を開く。
「気にしないでくれ。この世界に降り立って3年経つが、今日ほど刺激的な1日はなかったさ」
「なんじゃ。その見た目で3歳児か。ん。酒をすすめて良かったのか?」
「大丈夫だ。実質20歳過ぎているからな。ユウのいた神の次元? とやらで18年弱を訓練に費やしたからな」
この世界には、酒にまつわる明確な共通ルールはないが、おおよそ身長が伸びなくなった以降であれば酒を飲む風習があった。
「そうか。この歳でいろいろと新しいことを見聞きすることになろうとはな。長生きはしてみるもんじゃな」
「まだまだ、なんなら俺たちよりも長生きしそうだけどな」
「はっはっは。どうかのう。まあ、どんなものも永遠なぞないからな」
プロミネンスは豪快に笑い飛ばす。
「なんだかんだで、スローライフには、こういうのもあってもいいかもな。美人の奥さんもできたしな」
「ユウは違うのか?」
「ユウは、単純にこうと言えない感じだな。母のようでもあり、姉のようでもあり、妹のようでもあり、彼女や奥さんのようでもある。まあ、近くにいてくれると安心できる存在だよ」
ムツキの嘘偽りのない言葉と思いがプロミネンスに伝わってくる。
「そうか。まあ、小さい頃から共にいると、そうなるかもしれんな」
「かもな」
「ところで、ハーレムも男の夢だからいいが、ナジュミネを大切にしてやってくれ。少しばかり、諦めの悪いところと、頑固なところと、素直じゃないところと、まあ、いろいろと玉にキズじゃが、基本的には気立ての良い子じゃよ」
「いや、キズが多いな」
「キズが多いとか言うでない」
「言わせたのはそっちだろ」
「はっはっは」
プロミネンスは酒をぐいっと飲み干す。ムツキはそのぐい呑みに酒を継ぎ足す。
「もちろん、大切にするさ。まあ、たしかに、もう少し素直になってくれるといいけどな」
続いてムツキが酒をぐいっと飲み干す。今度はプロミネンスが酒を継ぎ足す。そして、もう一度お互いの杯をコツンと当てる。
「はっはっは。そう言ってくれるな。ナジュミネはあれでかなり繊細な心じゃから、優しくしてやってくれ」
「だろうな。気を付けるよ」
「それに伴侶には意外とベタベタに甘えてくるかもしれんぞ? 想像してみたらどうじゃ?」
「……たまらないね」
「はっはっは。ありがとうな。あとは、まあ、ナジュミネの生い立ちをわしから聞くのもなんじゃろ。別に特別不幸な生い立ちでもないが、本人から聞いておくれ。しかし、まあ、なんだかのう。ほんの少しじゃが、親代わりをしておったからか、なんだかしんみりしてしまうわい」
プロミネンスは酒が回ってきたのか、急に月を見ながら、何か想い出を巡らせるかのように優しい顔でそう呟く。
「……お義父さん」
「誰がお義父さんじゃ」
プロミネンスが真顔でツッコむので、ムツキは思わず笑った。
「ははは。いや、今、絶対。そういう流れだったろ」
「はっはっは。まあ、お主なら安心して任せられるわい。ナジュミネとの子どもができたら、いの一番にわしとナジュミネの両親に知らせるんじゃぞ? 絶対にな。というよりも前に、ナジュミネの両親に会ってみてくれ。ナジュミネは魔王になってから帰っておらんからの」
ムツキとプロミネンスはお互いに笑いながら話し込んでいる。
外の少しひんやりした空気と露天風呂、そして月見酒は話を盛り上げるのに十分すぎるシチュエーションだ。
「分かりました、お義父さん」
「お義父さんはやめい。今まで通りの爺さんか、プロミネンスか、プロみんでもいいぞ」
「プロみんって、ユウか。あだ名を付けるの好きだからな」
「この歳になって、あだ名を付けられることなんてないからのう。新鮮な気分じゃよ」
2人はその後、もう1杯ずつ飲んでから、湯あたりをする前に風呂から上がった。
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