暴露屋ユラン~底辺配信者、スキル【万能鑑定】に目覚めたので暴露系ダンチューバーとして転生する~俺を馬鹿にしてきたやつらの黒歴史暴いて社会的に殺してざまぁする

月ノみんと@成長革命2巻発売

第1話 闇への誘い


 20XX年、突然、地球にダンジョンが現れた。

 ダンジョンの中にはモンスターたちがいて、そのさらに奥にはたくさんのお宝が眠っていた。

 お宝は、アーティファクトと呼ばれた。

 欲深い人間たちは、そのアーティファクトを求めて、あらゆる手段を使ってダンジョンに潜った。

 しかし、一般の兵器などではモンスターには歯が立たなかった。


 だが、ある日特殊な能力に目覚める人々が出てきた。

 彼らは、モンスターに対抗できる、特殊な魔法やスキルを駆使した。

 力に目覚めた人々は、探索者と呼ばれるようになった。

 探索者たちはアーティファクトを求め、ダンジョンに潜り続ける。


 しだいに、探索者たちの中で、自分の行動をカメラで配信するものたちが現れはじめた。

 彼らはダンジョン配信者と呼ばれた。

 配信者たちは、自分のダンジョン探索の様子をカメラで配信することによって、広告収益を得ていた。

 中には企業がスポンサーに着くような有名なダンジョン配信者もいた。


 これは、そんな世界で巻き起こる物語だ――。


 

 ◆

 

 

 僕の名前は闇雲やみくも遊蘭ゆらん

 この日本国に暮らす、ごく普通の青年だ。

 僕は、ダンジョン配信者をしていた。

 とはいっても、ぜんぜん人気のない、底辺配信者だけど。


 だけど、配信をするのは楽しかった。

 少ないけれど、コメントと交流するのはいい。

 全然お金にはならないけれど、モチベーションにはなる。

 ただダンジョンに一人で潜っているだけだと、孤独だしね。


 僕には、どうしてもダンジョンに潜り続けなければならない理由があった。

 僕には、妹がいる。

 そして両親はいない。

 妹は、まだ高校生だ。

 24歳でフリーターの僕は、妹のために生活費や学費を稼ぐ日々。


 可愛い妹だし、少しでもいい大学に通わせてやりたいからね。

 僕は大学を卒業したけど、就職先が見つからなくて、バイトで食いつなぐ日々を送っていた。

 だけど、バイト代だけでは正直、二人がいい生活をするのなんて無理だった。

 だから、僕はダンジョン配信者になったんだ。


 ダンジョン配信者として有名になれば、億万長者も夢じゃないからね。

 だけどまあ、今のところ、ダンジョン配信者としての収益は月に500円程度だ。

 主な収入は、ダンジョンに潜り、アーティファクトを売って生活している。

 とはいっても、僕なんかがアーティファクトを手に入れられるのは、ほんとうに稀なことだ。


 だけども、アーティファクトを手に入れれば、一攫千金。

 少なくともその週は遊んで暮らせる。

 バイトの間に趣味兼、兼業としてやるのに、ダンジョン探索者はうってつけだった。


 こう見えて僕も、ちゃんと能力に目覚めたダンジョン探索者だ。

 とはいっても、僕は雑魚中の雑魚なんだけどね……。

 だからそのせいで、僕はパーティーも組んでもらえない。

 僕は一人で孤独に、こつこつとダンジョンに潜り続けるしかなかった。


 ダンジョン探索者に目覚めた人たちは、同時になんらかの魔法やスキルに目覚めるものだ。

 だけど、僕が目覚めた能力はただ一つ。

 それは「鑑定」というスキルだった。

 まあ、鑑定といっても、いろいろあるだろうけど、僕の鑑定は、雑魚スキルもいいところだった。

 漫画とかでは、鑑定スキルが最強の作品だってあるのだろう。


 だけど、僕に使える鑑定は、アーティファクトを鑑定するだけのものだ。

 なんの戦闘能力にもならないから、戦力としては僕は無能だった。

 それに、アーティファクトの鑑定は、別に鑑定スキルじゃなくても行える。

 鑑定するためのアーティファクトがあるのだ。

 鑑定屋にアーティファクトを持っていけば、鑑定用のアーティファクトで鑑定してもらえる。

 だから、僕の鑑定スキルは、なんの特別性もない、無用のスキルなのだった。


 ちなみに、アーティファクトっていうのは、どれも最初手に入れたときは真っ黒な塊である。

 それを鑑定することで、アーティファクトは姿を現す。

 アーティファクトはいろんな種類があって、いろんな効果のものがある。

 例えば、火炎に燃え続ける剣なんかもある。


 一見、アーティファクトを鑑定するなんていえば、そこそこ使えるスキルに思えるだろう。

 だけど、鑑定スキル持ちは僕以外にもたくさんいる。

 それに、僕以外の人はみんな、鑑定スキル以外にも戦闘に使えるスキルをいくつか持っていたりするのだ。

 鑑定スキルしかつかえない無能は、僕くらいなものだった。


「はぁ……こんなんじゃ、妹を大学にいかせられないよなぁ……」


 妹にはもっとオシャレな服とかも買ってやりたいし、とにかく僕にはお金が必要だった。

 だからかもしれない、あんな口車に乗ったのは。


「おう、ユランじゃねえか。今日も一人でシコシコやってんのか? 雑魚のくせに、ご苦労なこったなぁ!」

「五味…………」


 僕に声をかけてきたのは、五味ごみたけし

 五味は、いかにもなDQNといった見た目の、金髪でゴリゴリマッチョな色黒男だ。

 彼とは大学時代からの知り合いだ。

 彼は大学のころ、同じサークルのメンバーだった。

 なにかと僕をからかってくる、いけ好かないやつだ。

 だが、ダンジョン探索者としての腕は確かだ。


「今日はかわいそうだから、特別に俺たちが一緒にパーティー組んでやるよ」

「え……? い、いいのか……?」


 願ってもない申し出だった。

 たしかに五味はいけ好かないやつだが、探索者としてはかなり腕がいい。

 そんな五味のパーティーに同行できるのなら、金が手に入る。

 そうなれば、僕としては万々歳だ。


「ああ、お前も苦労してんだろう? 妹のために。俺は優しいからな。お前がかわいそうに思えてきてな。ちょっと手伝ってやろうってわけだ」

「そうか……ありがとう……」


 あれ……?

 こいつ、案外いいやつなのか……?

 そんなふうに思った僕が馬鹿だった――というのは後で思い知ることだ。


 僕は、五味率いるパーティーと共に、ダンジョンへと潜るのだった。


「あ、今日は配信はやめてくれよ。俺は顔出しとかしたくないんだ」

「うん、わかった……」


 僕は、このことに違和感を持つべきだったのだ。

 五味は、普段から配信をしていた。

 なのに今更……?

 僕はさらっとスルーした。


「いろいろと、映されると面倒だからよ……。へっへっへ……」

「…………?」

「いくぞ……!」

「う、うん……!」


 僕たちは、危険なダンジョンに足を踏み入れる――。




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