第42話 お姉さま
POLOLIVEの宇佐田社長の記者会見、そしてアニエスさんが抱えていた海外のファン。
それらのおかげで、俺のチャンネルにはどんどんスパチャの額が積みあがっていった。
さすがに世界的な有名人、アニエスさんだ。
集まった額はなんと2200万円ほど。
チャンネル登録者数500万人のみっしーはそれでも日本国内のみの知名度だったけど、アニエスさんほどの人物となると桁が違ってくる。
そのアニエスさんはまだ意識が戻らない。
400万円で手足は元通りになったし、外見からではほかにどこかダメージ受けているのかわからないけれど、今はただぐっすりと眠っているように思える。
顔色も悪くないし、ひとまずはこのまま寝かせてあげよう。
ちなみに、着ていたドレスは多量の出血でごわごわになってしまったので、今は全裸に風呂敷を重ねてかけてあげている。
「
みっしーが尋ねると、
「うーん、三十枚くらいかなー。小さく折りたたんでリュックのはじっこに詰めておくと場所もとらないし」
タコ、っていうかクラーケンの肉を棒に刺して火であぶりながらそんな会話をしている。
俺もクラーケンの肉をかじる。
うーん、プリプリしてうまいなあ。
塩味しかつけていないのに、深みのあるうまみまで感じられる。
ビールが欲しくなる。
こいつをつまみにしてキンキンに冷えたビールを喉に流し込んだらうまいだろーな。
今は飲み物と言えば水しかないからな。
アニエスさんの顔を眺めた。
青いメッシュがはいった金髪の、ゲルマン系の白人だ。
色素が薄いのか、唇の色も淡い。
情報では二十四歳とかいってたけど、それより幼く見えるな。
身体も小柄でちっちゃい、これ母国のアメリカだと本当に子どもに見えていただろうなー。
ヴァンパイア化させられて操られていたんだ、マネーインジェクションや治癒魔法の力だけでは回復しきれないくらい精神的・身体的疲労が深いのかもしれない。
俺も右足を復活させたけど、痛みはもうないにしろ、若干の違和感は残っている。前衛で物理攻撃担当の俺がこんなだと、戦闘力も落ちてるしな。
っていうか、天井に靴をもっていかれてしまった。
しょうがないから今後ははだしで行動するしかない。
アイテムボックスからブーツとかでてくるといいんだけどなー。
そういや、アンジェラ倒した時にはアイテムボックス出現しなかったな、消滅させたからか?
ドラゴンゾンビ倒した時には出現していた気もするが、アンジェラの爆炎の魔法でふっとんじまった。
ふう。
俺も疲れた。
とりあえず、今日一日はこれ以上の行動はせずに休息にあてたほうがよさそうだ。
と、そこに。
「ね、基樹さん。ずっとアニエスさんの顔眺めてるけど……そういう女の子が、好みなの?」
とみっしーが聞いてきた。
「ん? ああ、まあ好みかどうかはともかく、美人だよなー」
「あ、そう、そういうブロンドの美人がいいんだ……」
ちょっと不機嫌そうにいう。
みっしーにくっつくように座っていた
「あれ? もしかしてみっしー、やきもち!? ついにお兄ちゃんの魅力に気づいた?」
みっしーは少し顔を赤くして、
「いやいや、そんなことはないよ。ちょっと気になっただけ……ね、
あ、ばかっ、そんなことを聞くんじゃない!
俺が止める間もなく、
「えへへ、いないよ。お兄ちゃん、誰とも付き合ったことないよ。ほら不器用で口下手だから女の子口説くとか無理だよ。だから、お兄ちゃんはずっとあたしのものなの、えへへ」
ううううう、恥ずかしい……。
恥ずかしくてちょっとうつむいてしまう。
そんな俺をみっしーは横目でちらっと見て、
「ふーん、そっか、そうなんだ……。基樹さん、どんなモンスター相手にも絶対怖がらずに真っ先に斬りかかっていくし、すごい勇気ある男の人だし、もう有名人だし、きっと地上に出たらいろんな女の子に告白されるよ、よりどりみどりだよ」
「あ、ダメ、お兄ちゃんはあたしのだから。最悪、あたしが認めた人じゃないとお兄ちゃんと付き合うのは禁止だから」
と、そこでみっしーはタブレットのミュートボタンをぽちっと押して、そして俺の方を一瞬だけ見て、
小声だったけど、俺は耳がいいので聞こえてしまった。
「じゃ、
ん!?
なんだって?
え、待って、それって、それってさ、そういうふうなこと?
俺はこういう男女の機微とかまったくわからないから……。
あー変な期待はやめておこう、きっとそういう意味じゃない違う意味でいってるんだな、これは。
おかしな誤解をすると恥ずかしい思いをしちゃうぞ……。
「そっかー、みっしーが妹になる……ってのは、悪くないかなー。いい子だし。あたし、みっしーのこと好きだよ」
「私も
「じゃあ、みっしーはあたしの妹だね」
「
え、それって、つまり、俺の妹の
「ふふふ、タイが曲がっていてよ」
「お姉さま……」
……そっちの意味!?
なんか二人していちゃいちゃキャッキャッし始めた女の子たち。
うーん、若い女の考えなんて一ミリもわからんな。
俺はひと眠りしようかな。
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