第12話 何を見せられてるんだ
「まず、俺が刀で切り落とす。マネーインジェクションするから、スパッと切り落とせると思う。痛み止めが……あればいいけど、ないんだ」
「あはは、こわいね~……。魔法で私を眠らせるとか、できない?」
それは名案だけど。
「ごめん、俺も
「あはは~じゃーしょうがないねー」
笑ってはいるけど目が笑ってない。当然と言えば当然か。
「で、その時の外傷性ショックとか出血性ショックで命にかかわることもある。だから、切り離すと同時に
「いや~怖いな~……あはは」
ひきつった笑いのみっしー。
「んでもってすかさず俺がマネーインジェクションで腕を復活させる。さっき、左足は百万円で復活できたから、右手も同じ金額でいけると思う」
「は、ははは……一日に左足をモンスターに食いちぎられて、右腕を刀でぶった斬られるJKって、世界で私だけ……だよね……?」
「JKなのか」
「通信だけど、十六歳だし、高校卒業くらいはしときたいから。じゃ、みんな、応援よろしくね!」
【¥2000】〈みっしー頑張れ〉
〈これ、配信外でやれば? 配信中にやらなくても〉
〈そうだ、配信をいったん切ってやってくれ〉
「それはダメ!」
ビシッとみっしーがいう。
「私は配信者としての責任があるから! やります!」
……責任じゃなくて税金対策だけどな。
でもよく考えたら、この場合課税されるのはチャンネルの所有者である俺だから、別にみっしーがそこまで自分の身体をはらなくてもいいはずだけど。
「このチャンネルは俺のチャンネル……」
それを言おうと思ったら、すかさずみっしーにさえぎられた。
「まかせて! ダンジョン配信、世界に数あれど、美少女のこんな衝撃展開そんなにないでしょ、この私が! 生き残るためのサバイバルなんて最高のエンターテイメントよ!」
そして俺にむかってウインクするみっしー。
やばい、ほんとに聖人か、こいつ?
「じゃ、やっちゃって!」
「ああ、じゃあ、やるぞ。インジェクター、オン! セット、一万円!」
そして注射器を自分の腕に刺してパワーを注入する。
力が全身にみなぎってきた。
それを確認して、俺は刀を鞘から抜いた。
無銘だし、高級な刀じゃないけど、そこそこの切れ味の一振りだ。
刃がギラリと光る。
それを見たみっしーの顔が見る間に青ざめた。
……そりゃそうだ、こんな状態で怖くない人間なんて多分存在しない。
カタカタと細かく震え始めるみっしー。
「ちょ、ちょっと待って。やっぱこわいから、あのね、目、目隠しして。
「あ、うん、この風呂敷でいい?」
背負っていたバッグから風呂敷を取り出す
こいつ風呂敷好きだよな。
それでみっしーの目をふさいでぎゅっと固く結ぶ。
「あ、あと、なんか噛むもの。噛むものほしい」
「じゃあこのタオル嚙んでて」
さて、用意はできたかな。
目隠しされ、タオルをぎゅっとかみしめた美少女JKを前に、俺は刀を振りあげた。
なるべく痛くないように、スパッといかないと……。
狙いをよく定めて。
「ふー、ふー、ふー!」
みっしーは緊張で息遣いが荒くなっている。
俺も俺で女の子に切りつけるなんて生まれて初めてだから緊張するなあ。
――よし、いくぞ!
俺は無言で刀を振り下ろした。
バツン!
鈍い音とともに、壁と一体化していたみっしーの細い腕が切り離された。
「んんぎゅ~~~~~~~~~~~!」
みっしーが悲痛な声をあげてその場に崩れ落ちる。
血がふき出てダンジョンの床を赤く染める。
「あたしのマナよ、あたしの力となりこのものの傷口を癒せ!
俺も急いでスキルを発動した。
「インジェクター、オン! セット、百万円!」
痛みにのたうちまわるみっしー。
目隠しして口にタオルをくわえたみっしーは足をバタバタさせて痛みに耐えている。
その身体を俺と
「んんぐううううううう~~~~~~~!」
〈やばい〉
〈みっしー頑張れ〉
〈何を見せられてるんだおれたちは〉
〈頑張れ〉
〈たすかる〉
〈がんばれ〉
〈加油〉
それから腕が復活するまでの十数分間、
……MP回復に
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