第5話 安否確認
「えー、今地下八階を探索しています。もう戻れないよ。みんな、見てるー?」
:同時接続 0人
誰も見てねー!!!
「……お兄ちゃん、これ配信する意味ある?」
「ないかもしれんけど、誰かが突然来て投げ銭してくれるかもしれないだろ! 一応続けとけ」
「虚空に向かって誰もいない配信続けてる兄妹ってちょっと悲しすぎる……」
:同時接続 1人
お。
誰か来たぞ。
〈まだやってた。生きてたのか〉
「昼間来てくれてた人かな、まだやってるよー」
〈そこ、亀貝ダンジョンなんだよな?〉
「うん、そうだよー。今地下八階に到達したとこ」
〈まじか〉
まあそろそろ余力も少なくなってきたし、地下十五階にいるというダイヤモンドドラゴンと出会う前に死んじゃいそうだけどなー。
「今のうちにいっとくね、お兄ちゃん、私お兄ちゃんの妹に生まれてきてよかった……」
うるうるとした瞳で俺を見つめる妹。
「俺はお前が妹として生まれてきて……まあ、なんだ、うん、そうだなあ……どうだろうなあ……」
「なにそれひどい」
「一億二千万円」
「すびばぜんでじだー!」
俺はサイドテールの妹の頭をポンポンしてやって、
「ま、しょうがないか、お前といた十九年間は楽しかったしな」
:同時接続 8人
お、急に増えたな。
〈まじで亀貝ダンジョンか〉
〈こいつら、あの亀貝ダンジョン地下八階に潜ってるの?〉
〈え、お前ら何級?〉
「いやー実は二人ともまだA級なんだよな」
「そうでっす! 私もお兄ちゃんもA級! あ、違うよお兄ちゃん! お兄ちゃんはこのあいだC級にランクダウンさせられたじゃーん!」
「それお前のせいだからな」
「ごめん」
〈え、じゃあA級とC級でSSS級ダンジョン探索? 死ぬじゃん〉
「そうでっす! 私たち、兄妹で心中しちゃいまっす! 概要欄にある通りだけど、借金が一億二千万円できちゃって……」
〈みっしーを助けられる?〉
〈助けに行ったわけじゃないの?〉
〈もしかしたらみっしーの件知らないのか?〉
ん?
なんの話してるんだ、こいつら。
:同時接続 128人
おいおいおい!
なんだ突然増えたぞ?
見ている間にもどんどん増える。
:同時接続 389人
〈ここか、亀貝ダンジョン配信〉
〈みっしーをたすけたげて!〉
〈みっしーがそこにいるんだよ!〉
???
よくわからん。
みっしーって、あの有名な針山美詩歌のことか?
:同時接続 1288人
「え、なになになになに!?」
突然の同接爆上がりに、俺たちはパニックになる。
「なんだ、俺たちの心中そんなに炎上してんのか?」
〈お前らの命なんか知るか、それよりみっしーだ〉
【¥50000】〈助けてあげて! 生きてるかもわかんないの! 急いでください!〉
「おわっ!!」
上限赤スパが来たぞ!?
上限どころか赤スパ自体が生まれて初めてだ。
:同時接続 24888人
ああ? 秒単位で桁が増えていくんだが!?
「ちょっと待ってくれ、だれか状況を説明してくれ」
【¥50000】〈こちらPOLOLIVE公式アカウントです。お願いがございます〉
〈きたー!!〉
〈本物のPOLOLIVE公式アカウントだこれ😂〉
〈POLOLIVE公式なんて初めて見た〉
【¥34340】〈みっしーをどうかどうかお願いします!〉
〈ほんとほんとほんとお願いお願い!〉
★
ピロリロリーン。
【緊急ニュース速報】
人気配信者の針山美詩歌さん(16)が行方不明になっている事故で、同じダンジョン内の同じ階層に他の探索者がいることが判明。所属事務所は針山美詩歌さんの安否確認の要請を行った模様
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