【本編完結】借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら下層階で瀕死の国民的アイドル配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
第1話 兄妹は、生きることをあきらめた。
【本編完結】借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら下層階で瀕死の国民的アイドル配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
羽黒 楓
第1話 兄妹は、生きることをあきらめた。
「えー、いつも私たち兄妹の配信を見に来てくれてありがとねー。今から私たちの、最後の配信を行います」
俺がかまえるカメラに向かって妹の
明るい髪色のサイドテール、曇りのない素直な笑顔はわが妹ながらいつみてもかわいい。
ま、頭の中が最高にアホなんだが。
:同時接続数 4人
その数字を見て、俺たちの人生の総決算が4人かと思ったら逆に乾いた笑いが出てきた。
まあこんなもんだよな。
〈え、最後ってもう配信やめちゃうの?〉
「いや、違うの。……今私達、実は
〈はあ? 亀貝ダンジョンって日本唯一のSSS級でしょ?〉
〈シャーリーちゃんまだA級じゃん! お兄さんの
「お兄ちゃんはこないだC級に落ちました!」
〈え、なんで降級してるの?〉
「それにはウケる理由があるんですけど!」
この妹何言ってやがる、そのウケる理由って、お前のせいじゃないか。
「その話はまたあとでするね! いやー実はですね! ……お兄ちゃん、今回のこと言っていい?」
「ああ、言っちゃえ言っちゃえ」
俺が言うと、
「実は!! 私、海外のめちゃくちゃ怪しい証券会社でレバレッジを死ぬほど効かせてえふえっくすなるものに手を出したところ、こないだの歴史的ユーロ安で一億二千万円の借金を背負っちゃいまして!」
〈はあ?〉
〈ゼロカットシステムあるんじゃないの?〉
「あると思ったんだけどない契約だったの! 私の確認不足でぇす! えへへ!」
〈あれ、きみ、去年もなんかのマルチに引っかかって借金あったよね?〉
「そ〜でーす!! 去年一度自己破産してまーす! だからさすがに今年は免責おりませーん! 終わりでーっす! あたし、死にまっす! 死ぬって言ったらお兄ちゃんも一緒に死んでくれるそうなので、どうせなら心中配信しまーす! ね、お兄ちゃん?」
「まあそういうことだ。お前ら、俺たちの最期を看取ってくれよな」
〈
「さすがに一億二千万は無理だろ、最後にダイヤモンドドラゴンと戦って死ぬのが俺たちの目標だ。な、
「うん! ダイヤモンドドラゴンって、倒すどころか出会って生還した人すらほとんどいないからね! エンカウントするだけですごいんだから! じゃ、みんな、あたしたち行くね、見ててね〜」
ダンジョン。
数十年前、それは突如として世界中に発生した。
実態はいまだ謎だが、探索者として入ると不思議なスキルをダンジョン内限定で得ることができる。
そのかわり、ダンジョン内には危険なモンスターがうろうろしており、命がけの戦いとなる。
だがモンスターたちは地上世界ではほとんど手に入らない、貴重なアイテムをドロップするのだ。
国会で特別法が立法され、15歳以上のものに限れば登録さえすればダンジョンの探索が可能になっている。
そして、亀貝ダンジョンのダイヤモンドドラゴン。
あまたのS級探索者を返り討ちにしてきた、最悪、いや災厄のSSS級モンスターだ。
出会うだけでも至難の業だが、それに勝てる人間なんてほとんど存在しないのではと言われている。
ちなみに亀貝というのはダンジョンのある場所の地名だ。
俺たちは二人ともA級だから、SSS級ダンジョンのSSS級モンスターを倒せるわけない。
だけど今回俺たちは生きて帰ろうだなんて思っちゃいないわけで。
死ぬのが目的なのだ。だから、行けるところまでダンジョンにもぐってやろうというやぶれかぶれな計画だ。
ちらっとダイヤモンドドラゴンの姿をおがめるところまで行けたらラッキー、まあ駄目だったら死んじゃいましょう、という感じ。
両親も昔死んじゃってるし、頼れる親戚もいないし、22歳と19歳の兄妹が一億二千万円の借金背負って暗い人生をのたうち回りながら生きるくらいなら、花火のようにパーッと華やかに散ろうっていうわけ。
生きて帰ることをあきらめさえすれば、ワンチャン最深部までいけるんじゃないか? と思ったのだ。
「よし、じゃあみててくれよな!」
〈犬の散歩行ってくるわ、おつー〉
:同時接続数 3人
「……いてら。……みててくれよな!」
ダンジョン内はなぜか電波が届くから、配信しながら探索することにする。
いままでもちょいちょい配信していて、数人の常連さんは見てくれたりするのだ。
これが超絶人気配信者とかなら同時接続数万人とかでスパチャとかメンバーシップ登録とかでウッハウハなんだろうけど、同時接続3人じゃあなあ。
「よし、じゃあお兄ちゃん、行こうよ、死出の旅へ」
「……お前なあ……。なんかウッキウキで言ってるけど、これ、お前のせいだからな……」
「あ、はい、このたびはまことに申し訳ございませんでした」
頭を下げる
はぁ。ほんと、仕方がない妹だ。
「いっとくけど、めっちゃこき使うからな」
「あ、はい、どうぞ私をお好きなようにおこきつかいくださいませ」
「おこきつかうってなんか響きがエロいな」
「……どういう脳みそしてたらそう思うの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます