この貞操逆転異世界の少女たちは勇者のチ◯コを狙っている。

ナガワ ヒイロ

第1話 勇者、襲われる



「勇者ソーマ。面を上げよ」


「はっ」



 僕の名前は大神おおがみ壮馬そうま


 数年前、女神によって剣と魔法のファンタジー世界へ召喚された勇者である。


 最初は突然のことで困惑したけれど……。


 魔王率いる魔王軍との戦争が何百年も続いていると聞いて、僕は放っておけなくなってしまった。


 数年の訓練を経て強くなり、魔王が住まう魔王城を強襲。

 そして、戦争をすぐ止めるよう説得し、不可侵条約を結ばせることで平和を実現した。


 うん、我ながら凄く頑張ったと思う。



「そなたは見事に人類と魔王軍の戦争を止めてみせた。褒めてつかわす」


「勿体無きお言葉、ありがとうございます」



 そして、王座に座りながらにこやかに微笑む金髪碧眼の美女が一人。


 この女性の名前はクラウディア・フォン・ヴァレンティヌス。

 僕を召喚した女神を信仰するヴァレンティヌス王国の女王である。


 スタイルが抜群で、おっぱいが大きく、腰はキュッと細く締まっており、太ももはムチムチというコンボ。


 それらのプロポーションを強調するような、薄いレース生地の服がまた破壊力抜群だった。

 しかし、その格好をクラウディアが恥じる様子は無い。


 何故なら、そのエッな格好がこの世界では当たり前のことだからだ。

 異世界の常識という奴である。


 うむ。この際だし、ハッキリ言おう。



――僕は今、チ◯コがとても痛い。



 だって冷静に考えてみて?


 地球にいたらハリウッドスターになっていてもおかしくない絶世の美女が、ムッチムチのエッチな身体を恥ずかしがる様子も無く晒しているのだ。


 たしかに僕は戦争を止めた勇者だよ。


 けれどね、僕だって男なのさ。

 こんなエッチな格好してる綺麗なお姉さんを前にチ◯コが勃起しないわけがないでしょうが!!


 でもチ◯コが勃起していることがバレると色々不味いので、必死に平然を装う。


 何が不味いのかって? それは――



「さて、ソーマよ。そなたに報酬をやらねばな」


「クラウディア女王陛下。以前も言いましたが、僕は褒美が欲しくて戦ったのではありません」


「ふっ。相変わらずだな、そなたは。それでこそ女神フレイディーテ様がお認めになった男だ。しかし、最も手柄を上げたそなたに報酬を与えねば、私や国が狭量と思われる。何か望みは無いか?」


「……では」



 僕は望みを口にする。



「どうか平和を維持してください」


「ふむ?」


「僕は勇者として戦い、使命を全うしました。明日にでも女神フレイディーテ様の使いが来て、僕を元の世界に帰すかも知れません」


「なるほど。そなたがいなくなったのを機に戦争が再開するかも知れない、と。では、その方法を解決する方法を教えてやろう」


「そのような方法が、あるのですか?」


「無論、ある」



 僕の言葉に、クラウディアは力強く頷いた。



「そなたがこの世界で子を為すことだ」


「――え?」


「そうだな、例えば余はどうだ? もう三十になるが、女神フレイディーテ様の次に美しいという自負がある。そなたもよく、余の胸を見ておるしな。今も余の身体を見て、そなたの聖剣がおっ勃っておるではないか♡」


「こ、これは……その……」



 僕は言葉を詰まらせた。


 そう、これが勃起していることがバレてはなれない理由である。


 この世界は、地球と真逆の貞操観念をしている。


 男性よりも女性の方が多くの権利を持ち、色々な意味で女性が強い世界なのだ。


 王は女王だけだし、騎士も女だけ。商人も女がなるもので、男は家庭を守るもの。

 ここは地球とは全く異なる世界なのだ。


 だからこそ、チ◯コが勃起していることを知られてはならなかった。


 知られてしまっては、とんでもないドスケベ男と思われるから。

 そして、性的に襲われてしまうから。


 ここで反応してしまっては、クラウディアの思う壺となる。


 僕は極力冷静に努めて口を開いた。



「……いえ、陛下。以前も言いましたが、僕は故郷に想い人がいるんです。陛下のお気持ちにお答えすることは、出来ません」



 僕は地球に帰らなきゃいけない。


 全ては、初恋である近所のお姉さんに想いを伝えるため。

 だからこの世界で誰かの想いに答えることはできない。



「ふむ。しかし、その想い人とやらがすでに他の男を作っていたらどうする?」


「それは、その時になったら考えます」


「……ソーマよ。一度冷静になって考えてみるが良い。そなたは英雄だ。多くの女がそなたの子種を求めるだろう。そして、それは余も同じ。いや、もう取り繕うのは止めよう。ハッキリ言う!!」



 クラウディアが王座から立ち上がり、叫ぶ。


 国内の有力貴族が僕の功績を讃えようと集まった、謁見の間で。



「余はそなたの子が欲しい!! そなたと毎日ラブラブエッチしまくりたい!! 夫に先立たれた寂しさをそなたとそなたのチ◯コで埋めて欲しい!!」


「あ、あの、クラウディア陛下……?」


「元の世界なんかに帰らず、この世界に残って余とラブラブしよう!! 毎日イチャイチャしよう!! 毎晩ドスケベなことをしよう!!」


「ちょ、落ち着いてください!! 女王が言っちゃダメなこと言ってます!!」



 僕は大慌てでクラウディアを止める。


 この場に他国の貴族がいたなら、色々と問題になっていただろう。


 幸いにも、この場には全員ヴァレンティヌス王国の貴族しかおらず、女王の自由奔放さを知っている者ばかりだったので良かったが。



「はぁ、はぁ、はぁ……ソーマよ。ここまで言っても、そなたは余の想いには答えてくれぬのか?」



 僕の目を真っ直ぐ見つめながら、問いかけてくるクラウディア。


 ここで誤魔化すような態度を取るのは、不誠実だろう。

 僕はクラウディアの青い瞳を真っ直ぐ見つめながら、断ることにした。



「申し訳ありません。僕には、好きな人がいますから」


「……そうか。ならば仕方あるまい。そなたが、そなたが悪いのだぞ」


「陛下……?」



 クラウディアが手を上げると、謁見の間に大勢の騎士がなだれ込んできた。


 無論、この逆転世界では全員が女性だ。

 そして、身にまとう鎧もビキニアーマーという徹底っぷり。


 本当にこの世界はどうなっているのだろうか。


 あんな鎧としての意味を為していない鎧でよく今まで魔王軍と戦ってきたもんだと思う。


 って、そんなこと考えてる場合じゃない!!



「陛下!! これは何の真似ですか!?」


「騎士たちよ!! 勇者ソーマを捕らえよ!! その男を何としても余の夫とする!! 相手は勇者!! 油断せず、複数人で攻撃せよ!!」


「「「はっ!!」」」



 騎士たちが剣を抜いて、襲いかかってくる。


 ぐぬぬぬ、チ◯コが勃起してるせいで上手く動けない!!

 聖剣を抜いて傷つけるわけにもいかないし!!



「お覚悟を!! 勇者様!!」


「勇者様!! ヤらせてください!!」


「あ、ずるいわよ!! 勇者様!! 私、身体には自信がありますわ!!」



 騎士の中にも俺のチ◯コを狙っている輩がいるらしい。



「阿呆共!! ソーマは余のものだぞ!!」


「では陛下の次で!!」


「そうです!! 陛下一人で勇者様の子種を独占するなど言語道断!! 反乱起こしますよ!!」


「ぐっ、ならば仕方あるまい!! 最初は余だが、その次は騎士団にソーマを貸してやる!!」


「「「よっしゃああああああああッ!!!!」」」



 前から思ってたけど、この世界おかしいよ!!


 いくら貞操観念が逆転してるからって、こんなフリーダムになるのはダメでしょ!!


 僕は聖剣を鞘に収めたまま、騎士たちの連携攻撃を凌ぐ。

 しかし、あまり長くは保ちそうになかった。



「くっ、なんていう練度!!」


「ふっ、そうであろう? そなたを捉えるためだけに集めた、魔王軍との戦争で数々の武功を上げた英雄たちだ!! 逃げられると思うでないぞ!!」



 どんだけ僕に執着してるんだ、クラウディアは!!


 いや、クラウディアみたいな美女にどんな手を使ってでも欲しいと思われるのは正直嬉しいけれども!!


 しかし、このままではジリ貧だ。


 騎士たちに怪我をさせてしまうかも知れないが、もう聖剣の力を開放するしか――



「ソーマ様!!」



 誰かが俺の名前を叫んだ。


 そして、鼻先すら見えない程の濃い霧が謁見の間に充満する。



「っ、この霧の魔法は……ソフィア!! これは何の真似だ!!」


「お母様、ソーマ様のことは諦めてくださいませ!!」


「この、母に逆らうか!!」



 声の主は、クラウディアとよく似た顔立ちをした金髪碧眼の美少女であった。


 将来はクラウディアに比肩するスタイルとなるであろう見事な発育。

 まさしく絶世の美少女という言葉がピッタリな女の子だ。


 彼女の名前はソフィア。

 ソフィア・フォン・ヴァレンティヌス。


 クラウディアの娘である。



「今です、ソーマ様!! こちらへ!! お城の外へ繋がる秘密の脱出路へ案内します!!」


「ありがとう、ソフィア!!」



 僕はソフィアと共に謁見の間を飛び出し、秘密の脱出路とやらを目指して走った。

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