第3話

僕は町に着いたら行こうと思ってた所があるんだ。

それは娼館だ。

スミレに激しいのはダメって言われたから激しく無いの見つけないと。


最近僕はフラストレーションが溜まっている。


スミレの誘惑が確実に効いて来ている。

更にはミレイヌを使おうとすると、悉くナイトメア・ルミナスのみんなに邪魔をされてる気がしないでも無い。


僕はロリコンじゃなくて良かった。


もしロリコンだってみろ。

道中でヒメコに更なるフラストレーションを蓄積させられてたに違い無い。


むしろあの無邪気な可愛いさに助けられた感もある。


しかしながらあのツバキの色気によるダメージが大きい。


だから女を買いに行くんだ。

まずは部屋に荷物を……あれ?

ここ僕の部屋だよね?


僕は渡された鍵の番号と部屋番を見比べる。


うん。

間違い無い。

この鍵で扉開くし。


僕は部屋に入ってベットを見下ろした。


なんで?

なんでルージュが僕の部屋のベットで座ってるの?


「主、やっと来たー」


首を傾げている僕をルージュが寝惚け眼でじっと見てる。


いい感じでネグリジェが開けてるのは計算でも何でも無いんだろう。

正直、ちょっとエロい。


「どうしてここに居てるの?」

「スミレにここで居たら主が来るって言われた」

「そうなんだ」

「……」

「……」


ルージュは僕を見たまま首を捻る。

いや、首を捻りたいのは僕である。


「それで?」

「ん?

なにが?」

「何が僕に用事あったんじゃないの?」

「なんで?」

「だって僕を待ってたんだろ?」

「うん。

待ってた。

待ってたら眠くなって来たけど我慢してた」


珍しい。

ルージュは眠くなったらいつでも何処でも寝ちゃうのに。


「で、用事は?」

「無いよ」

「無いの?」

「うん。

無いの。

だってルージュは仕事で来たから」

「そっか〜

仕事かー」

「そう。

主の部屋で待っとく仕事」

「は?」


なに、その仕事。


「ルージュ最近暴れてないの」


おや?

話が変わったぞ。


「そうなんだ」

「いい子?」

「うん。

いい子だね」

「でも、暴れたいの」

「そうなんだ〜」

「だから来た」

「は?」


どうしよう。

話が全然読めないぞ。


「もしかしてここで暴れるの?」

「ううん。

ルージュ、主の迷惑する事しない」

「いい子だね」

「うん。

いい子」


結局よく分からなかったけど……

まあ、いっか。

早く女を買いに行こうっと。

今晩は楽しむぞ〜


「ちょっと出掛けてくるね」

「うん。

ルージュ、ここで待ってるね」


ん?

待ってる?

何を?


……そんな事より女だ。


「主」


出て行こうとしたらルージュに呼び止められた。


「なに?」

「お店行くの?」


予想だにしなかった質問に僕は心臓が止まりそうになった。


「お、お店?

な、なんの?」


なんとか平然を装って聞き返す。

きっと娼館の事を言ってる訳じゃないはずだ。


「わかんない。

ただ、主が出かけるから」


ほらね。

大丈夫、大丈夫。

気にし過ぎたらダメダメ。


「そうだね。

お店に行くんだ」

「なんのお店?」

「そうだね。

最近運動不足だから運動出来るお店だよ」

「スミレに言われた」

「何を?」

「主がお店行ったら暴れていいって」


なんでやねん。


「どう言う事?」

「ルージュわからない。

ただ……」

「ただ?」

「なんか主が夜にお店に行けないようにしないとって言ってた」


もしかしてだけど、スミレはその為にルージュを送り込んで来たわけ?

スミレは僕の理性を本気で破壊するって目的の為に手段を選ばないつもりだ。


……流石スミレだ。

どんな手を使ってでも目的を遂行する。

悪党の鑑だ。


だが、僕も悪党だからね。

欲望に忠実なんだ。


ここはルージュを説得すればいい。


「ルージュはいい子だから僕の言う事聞ける?」

「うん。

ルージュはいい子だから主の言う事聞く」


ほらね。

ルージュは素直だからね。

簡単簡単。


「僕は今からお出かけするからね」

「お店行くなら暴れていいって言ってた」

「暴れちゃいけないよ」

「なんで?」

「なんでも。

そこで寝てていいから暴れちゃダメ」

「暴れたら主困る?」

「困るね」

「じゃあ我慢する」


よし、勝ったな。

じゃあ早速――


「主、早く帰って来てね。

ルージュ眠たいから」


ん?

どう言う意味?


「いや、多分今晩は帰らない――」


あれ?あれれ?

なんか泣き出しちゃった。

両目から大粒の涙がポロポロ落ちてる。

なんでなんで?


「なんで泣き出すの?」

「だってルージュ、今日は主と寝るの」

「は、へ?」


訳がわからな過ぎて変な声出た。


「スミレが主と寝ていいって言ってた」

「いや、僕は何も――」

「言った」

「だから僕は――」

「言ったもん。

だからルージュ眠たいのに我慢してたもん」


だから寝てなかったのね。


「我慢しなくて寝てていいよ」

「嫌」

「別にベット使ってもいいんだよ」

「嫌」

「ルージュはいい子だよね?」

「嫌。

主と寝ていいって言われたからいい子する。

主と寝れないならいい子しない」


そうだった。

ルージュも立派な悪党だったわ。


「ルージュ眠たい〜

すっごく眠たいの〜」


あっ、やばい。

ルージュのイライラが限界突破しそうになってる。



「わかったわかった。

出掛けないよ」

「本当?」


ルージュの涙がピタリと止む。


「本当」

「ルージュ、主と寝ていい?」

「いいよ。

その代わり暴れない?」

「うん。

暴れない」

「いい子に出来る?」

「うん。

いい子にする」


僕がベットに入るとすぐにルージュに抱き枕にされた。


仕方ない。

娼館は明日にしよう。


しかし、これはこれで生殺しだよ。


「ここにいる間は主と寝れる。

幸せ」

「ちょっとルージュ。

今、なんて言った?」


ああ、ダメだ。

もう完全に夢の中だ。

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