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とんでもなく人に合わせるのが苦手。
かと言って他人と一緒に居るのは別に苦じゃない。
レストランに皆で食事に行ったとしたら、真っ先に食べ終わるか皆が彼の皿が空になるのを待つかのどちらかだろう。
そんな時の場繋ぎに登場するのが瞬で、和輝は優弥の皿を見ながら食べるペースを速めたり遅くしたりする。
馴染みの光景だ。和輝もこの関係が嫌いではない。
目つきは怖いしいつも怒っているようにも見える優弥だが、彼なりの気遣いというのを和輝は知っているからだ。
例えば、そう。
「おい、あんま離れんなよ。迷子になるぞ」
この言葉と先の行動だって「俺が先に行って危なくないか見てきてやる。足元に気を付けろよ」という意味が込められているのだ。
「よし、じゃあ瞬」
「はい!」
「お前は引っ付きすぎだ。離れろ。あと、この先にもし何も無かったらお前の喉に手ェ突っ込んで掻き回すからな」
やっぱり違うかもしれない。
瞬は返事をした笑顔のまま後退し、まひろと舞よりも更に後ずさって和輝の真横まで来てから項垂れた。
「城戸っち……俺の事嫌いなのかな?」
「嫌いなんだろ」
適当に返事をした和輝が先に前へ出る。
暫く項垂れていた瞬は、顔を上げた時に横に居る筈の親友が居ない事に驚きながら慌てて皆の元へ走って行った。
合流してからの五人は、そこから無言で歩き出した。
緊張していた、という訳では無い。
思っていたより目的地が遠かったというのと、そこに辿り着くまでの五人共通の話題、つまり肝試しや井戸の事は話し尽きていたからだ。
殆ど横一列に並んだ一行は、先頭から優弥とまひろ、その後ろに瞬と和樹、舞の順に生暖かい風が流れる墓地を進む。
肝試しと言っても、誰かが何かを仕掛けている訳では無さそうだ。
良く聞くのが入り口で二組に分かれて、順番に目的地を目指すというもの。
こういう時は大抵先に入った組か、もしくは下見に来たという女子二人が驚かせるようなポイントを仕込んだりするのだろう。
入口に立った時点でそんな提案が無かった事から、舞とまひろは本当に純粋に例の井戸にしか興味が無いのだろうと伺えた。
もうだいぶ歩いてきたが、墓地は相変わらず小奇麗だ。
だが、雑草の伸び具合だけは入り口側よりも酷くなっているように思える。
進みにつれて息が苦しくなってくるだとか、そんな定番の感想を抱く事も無かった。
むしろ息苦しさだけなら、廃病院から見下ろされる入り口の方が強い。
それでもどんよりとした空気だけは剥がれる事は無い。
和輝が胸の鼓動を早く感じているのは、幽霊の存在より丑三つ時という想定されていない時間に墓地へ立ち入っている事への背徳感。
そして墓は小奇麗なのに通路は手入れの跡が見えないという、違和感に不安を覚え始めたからだろう。
今は皆黙々と足を進めているが、この瞬間にでも何か起きれば心臓が生き急いでしまいそうだ。
「……変ね」
優弥の真後ろでまひろが突然ポツリと呟いた。
その一言でさえ、今の和輝の心臓は跳ね上がりそうだった。
「何だ、どうした?」
優弥が顔を少し横に向けて問う。
「井戸、こんなに遠かったかしら……ねぇ、舞?」
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