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「ね……聞こえてる?」

 いつまでも返事をしない瞬に、ポニーテールの女性は怪訝そうに首を傾げた。

 和輝が軽く瞬の横腹を肘で突いてやると、瞬は反射的に姿勢が伸びた。

「あっ! はい、そうだ……です!」

 ……もしかして緊張しているのか?

 それを訊かずとも瞬の震え気味の声と態度で察しはつく。

「……変な喋り方」

「……わっかり易いヤツ」

「存在が犯罪」

「……おい最後関係ねーだろ!」

 示し合わせたかのように小柄な女性、和輝、優弥の順に一言ずつコメントが付いた。

 優弥はノッて来ただけのようだが。

 だが、和輝から見ても確かに目の前の女性は見目麗しく映る。

 黒のシャツとハイウェストのスキニージーンズが彼女のスリム体型のラインを余す事無く見せつけ、履いているヒールを抜きにしても優弥とそう変わらない高身長が長い足を際立たせている。

 瞬の事を馬鹿にしてみたが、女性への耐性が少ない和輝が話し掛けられても似たような結果だったかもしれない。

 優弥と出会ったばかりの頃もそうだったが、大学ではなく街中で見かけたとしたらモデルか何かか、と思う事さえあったろう。

 比べるのは悪い気がしたが、隣に立つ小柄な女の子には足りない大人の色香という点で差は歴然としていた。

 だが、その小柄な女の子が可愛くないのかと問われると、決してそうでは無い。

 身長は高校の時クラスで下から数えた方が早かった和輝、よりも一回り小さくて今も尚そわそわしているのは先程見た通り子供と言うか、小動物のようだ。

 顔立ちも幼く、それと対比するように毛先に緩いパーマの掛かった亜麻色の髪が、絶妙に大人びた印象を与えた。

 彼女が動く度、髪がふわりと揺れる。笑顔が凄く似合う子だ。

 和輝が彼女らに見惚れていると、ポニーテールの女性が腰に右手を当てて瞬に一歩近づく。

 瞬の返答に訝し気だったが、微笑みに変わるまで時間は掛からなかった。

「御堂君……だったわよね? そっちの彼らはお友達?」

 優弥が瞬に何かを耳打ちする。

 聞こえなかったが、それに対して瞬が肘打ちで小突くのが見えた。

「そうですそうです! この眠そうな奴が相田で、こっちの陰険そうな唐変木が城戸! 今日一緒に行くって言った奴らですよ!」

 机の下で優弥が瞬の足を蹴り飛ばしたが、和輝はそれよりも瞬の紹介の中に疑問を感じた。

「なぁ瞬、『一緒に行く』ってまさかお前……」

「お前も良いから話合わせろって! こんな美人と近づく機会なんて滅多にねぇんだぞ!」

 耳打ちしてくるが、この至近距離で瞬の声量では意味を成さないと思う。

 つまり、和輝達は二人組と遊びに行く為の出汁にされた訳だ。

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