VTuberおじいさん

おじさん(物書きの)

配信中

 むかしむかしあるところに、余命宣告を受けたVtuberのおじいさんがいました。

 おじいさんは若い頃から体が弱く、やつれた顔が辛気臭いと言われることがあって、それがとてもコンプレックスでした。

 それでも生来のおしゃべり好きと趣味の多さで交友関係は広く、わりと活動的でした。

 月日が流れ、体調が思わしくなくなってくると家にこもりがちになり、おばあさんや家族以外の人と話す機会も減ってきました。

 ある日、孫の勧めとおばあさんのサポートを得てVtuberを始めることになりました。

 はじめは可愛い見た目と声に戸惑いつつも、いろいろな人とおしゃべりできることがおじいさんにはとても嬉しかったのです。

 おじいさんの昔話や趣味の話は意外とリスナーに受けが良く、楽しい日々に若返っていくようでした。

 気力の充実とは裏腹に体調悪化が進んでゆき、ついにおじいさんは余命宣告を受けてしまいました。

 ひどく落ち込んだおじいさんはあれほど楽しかった配信の時間も楽しめなくなり、日の近かった誕生日を区切りとしてVtuberを辞めることに決めました。


 その日、おじいさんはベッドから起き上がることができず、予定していた配信ができずにいました。

 朦朧とした意識の中、おばあさんの温かい手が感じられました。

 ゆっくりと目を開けると周りには孫や家族、そして古い友人たちがいました。

 おじいさんがか細い声でどうしたんだと聞くと友人の一人が誕生日だろ、と言いました。

 そうか、そうだったなと、周りを見渡すとおじいさんは懐かしい気持ちと不思議な感情が湧き上がってきました。

 思い返すと昼間からでも集まってくれるコアなリスナーたちと、古い友人たちの面影が重なって見えたからです。

 おじいさんはありがとうありがとうと繰り返しながら穏やかな眠りに付きました。


めでたしめでたし。

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