或いは、戀文

@haruwo_tokiwo

第1話

引き出しに壊れし蝶の羽と空

船底が夜を漕ぎだす春の海

佐保姫の花弁衣を脱ぎ捨つる


蒼き花踏みて僕らは春の鳥


もし君の吾を思ふと告ぐならば


エーテルのそら裏返し夏

炎昼のまぼろしとして喰むうつつ


彷徨ふは嘘とくちびるジキタリス

呪われし黒百合と酌み交わす杯

のがるさき虚空に揺れる女郎蜘蛛


かはたれに駆け落つ二人天の川


稲妻や星つる人のはかりごと


心臓は無月となりて散りぬるを

不機嫌な水晶砕けキリギリス


指先に赤き結晶割れ柘榴


風に舞ふしるべを墓と星月夜


深海へ降り積む雪の音を聴く


ゆずりはに重ねし指の震へぎん

描かれし明日への記憶 福笑ふくわらひ


玻璃が影護る誓いと白詰草







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

或いは、戀文 @haruwo_tokiwo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ