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鹿角印可

第1話

 1 美しい「もの」のこと


 久々津英真は大層、美しい子だったが、背中にも美しい「もの」があるともっぱらの評判だった。

 男みたいな名前に読めるが、久々津英真は「くぐつ えま」と読む。女だった。浪人したという噂は聞いていないから、同い年の二十歳のはずだ。

 大学のキャンパスで見かければ十中八九、男も女も振り向く。まさに高嶺の花というにふさわしい美しさだった。どんな美しさかというと男は自らの不釣り合いを嘆き、女は嫉妬の炎を陰々滅滅と燃やす。そういうタイプの美しさだった。

 どんなに瑞々しくおいしそうなブドウだって、渇望しても渇望しても手の届かないところにあれば悔し紛れにあれは絶対に酸っぱいというだろう。

 かくして、

「オタサーの姫」

「ヤリマン」

「ヤクザ」

 という実にきらびやかな称号がこのブドウには与えられた。

 しかし、これらの称号が全く根も葉もない噂ではないところが、また久々津英真の厄介なところだった。

 一つ一つ解説していく。


「オタサーの姫」とは文字通り、彼女が漫画研究会に所属していることに由来する。

 一悶着あったという。入会希望ではない野次馬が漫画研究会のサークル棟に殺到し、揉めた挙句に乱闘騒ぎ。自治会が介入して漫画研究会の新規入会希望停止となった。

 意外にもこの騒ぎに際して漫画研究会の面々が矢面に立ち、英真を守るためにこの騒ぎに対処したと聞く。

 獅子奮迅の活躍はさながら、姫を守る騎士のようであったという。

 騒動の後の研究会の様子は騎士どもは姫のための特等席を用意し上にも下にも置かぬ扱いであり、姫は騎士の忠心を知ってか知らずかひたすらに研究会内の本棚の漫画を読みふけっているとか。

 一度だけ漫画研究会の部屋の前を通ったことがあるが、扉には「新規入会お断り!」と朱文字も鮮やかな張り紙を見た。


 そして2番目の称号だ。

 単純明快に言ってしまうと漫画研究会の全員とセックスしている噂だった。

 騒動に対しての騎士の面々の意気に感じ、その礼とでもいうのか久々津英真が直々に童貞を卒業させてあげたと揶揄する者がいるのだ。

 いやいや、そうではなくあれは単なる生来の淫乱だ。

 噂には尾ひれがつくものだ。

 ともあれ、漫画研究会の面々のクソ度胸でもついたような堂々とした様子を見れば察しが付く。

 学内の女子など眼中にない様子だった。

 

 3番目の称号。

 これは私が直々に目撃したことを記す。

 私は浜ノ湯という少し辺鄙なところにある銭湯の常連だった。そこそこ小奇麗な銭湯で追加料金もなしでサウナも使えて快適だった。

 いつものように浜ノ湯の暖簾をくぐると、受付に久々津英真がオーラを放つ彫像のごとく番台に鎮座していた。風呂場の掃除に来た店主によれば、アルバイトとして入ったものらしい。

 浜ノ湯は昔ながらの銭湯のように番台が男湯、女湯の両方を見渡せるようなタイプではなく、番台というか受付(入浴のためのタオルや小さな石鹸やシャンプーなども売っている)で料金を支払ってから男湯、女湯に分かれて入る。

 下駄箱に靴を収めることも忘れ、数舜固まっていたが後から来た客に押されるように勘定を済ませる。

 私の時は実に事務的に会計を済ませた久々津英真は、後ろの勘定を済ませた老年の客に、お愛想なのか口の端に笑みを浮かべる。それだけで客は笑み崩れる。

 なぜかすこし緊張しながら、入浴を終え、その日から浜ノ湯に行く回数が増えた。浜ノ湯に久々津英真がいることは周りの友人には言わなかった。


 ある日のことだ。

 いつものように、少し緊張しながら浜ノ湯の暖簾をくぐった。いつものように鉄面皮の久々津英真がいた。緊張しているのに少し安心する。

 他の客もばらばらと入ってくる。私も下駄箱に靴を入れようとしたとき。

「すみませーん」と受付の久々津英真に向かって声がした。

 同い年くらいの女の子が下駄箱を指さしながら言う。

「調子が悪くて開かないんですけど」

 久々津英真が受付から出てくる。黒いTシャツに黒のジャージだった。黒が好きなのか、大学内でも黒をよく着ているなと思った。

 少し女の子に違和感があった。なぜ、ほかの下駄箱も空いているのにわざわざ呼ぶのか。

 その違和感もあって様子を見ていた。どっちにしても久々津英真がいなければ、勘定できないというのもある。

 久々津英真が少しかがんで下駄箱を見る。女の子に背中を向けている。

 女の子がカバンの中を探る。と見るや、取り出したのは包丁だった。場違いなものに周囲の客も私も凍り付く。

 周囲の客も私もまさかと思う間もなく女の子はためらいなく、久々津英真の背中に包丁を振り下ろした。

「何してんだ!」

「警察! 救急車もだ!」

「大丈夫か?」

 怒号が飛び交う。私は何もできず呆然としていた。

 意外にも久々津英真は倒れ伏すこともなく、うめき声をあげるわけでもなく、その場に平然と立っていた。Tシャツが背中から切り裂かれていた。右肩のあたりから左腰のあたりまで。

 色白の彼女の背中は絹のように真っ白ではあったが、真っ白ではなかった。

 彼女の背中で私をにらんでいる「もの」があった。

 切り裂かれたTシャツ越しに、背中全面を白いキャンバスにして、今彫り込まれたと見まごうばかりの色鮮やかな和彫りの龍がまっすぐに私を射すくめていた。雷雲の中を身をくねらせ、鋭い爪を持つ。その手には宝玉が握られている。

 私のみならず周囲の視線を背中に感じたのか、ゆっくりと久々津英真が振り返る。目が合った。背中の龍よりも心をわしづかみにされる、恐ろしいほどの迫力だった。

 彼女の全身から怒気が炎のごとく立ち上っているのが、視覚的に見えたような気がした。怒気というのも正確ではないかもしれない。感じたことはないが殺気という言葉が一番しっくりくる。殺気を立ち昇らせてさえ、彼女は美しかった。

 その時、救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきた。

「なんで!」

 久々津英真を刺した女の子が叫ぶ。男二人に押さえつけられながら、なおをも暴れていた。押さえつけられてない方の手が手探りで刃物を探しているのが醜悪だった。

「切ったのに! 切ったのに何で死なないの? 死ね! 死ね! ヤリマン! ヤクザが! 調子に乗りやがって!」

 聞くに堪えない罵声を尻目に久々津英真は浜ノ湯の女将に背中にタオルをかぶせられて、女湯の方に避難させられていった。女の子の声に振り返りもしなかった。

 そう。

 女の子は確かに彼女を切った。刃こぼれした包丁が床に転がっている、血もついていない。

 そして、彼女は傷を負わなかった。

 それが私の記憶に彼女の美しい刺青と美しい殺気とともに残った。

 実に美しかった。

 この件はまさに可及的速やかに大学中の話題となったが、私がこの話題の流布に一切関与していないことは自分の名誉にかけて記しておく。

 

 下卑たことを書く。

 久々津英真が漫画研究会の面々とセックスしていたという噂が本当だとすると、初めての相手にあの「美しいもの」が背中にあったなら、さぞかし、性癖が狂ったことだろう。

 なるほど、学内の女子たちなど眼中にないわけだ。

 

 女の子は私と久々津英真と同じ大学だった。女の子の彼氏が久々津英真に懸想して鎧袖一触とばかりに振られて、ショックのあまり大学を休学したという。女の子は彼氏に振られただけでなく、プライドすら粉々に砕かれた。そして、逆恨みの末、今回の凶行に及んだというわけだ。恐ろしいことだ。

 事件が大学中を駆け巡っても、久々津英真は超然として大学に通っていた。

 好奇の視線をどれほど送られてもどこ吹く風といった様子だった。

 ちなみに女の子は不起訴となった。久々津英真が刑事事件にしなかったそうだ。

 こうなれば、女の子も図太い。あの日、見た「もの」を大げさに吹聴し始める。

 ならば、と不届き者が現れる。

「見せてよ」

 すれ違いざまに。何を、とは言わない。男女問わず。陰湿だった。

 久々津英真は何の反応もない。調子に乗った男が(ラグビー部で乱暴者で有名だった)夕方の空き教室に久々津英真を強引に連れ込んだ。

 見回りの警備員が血まみれの男を発見したのは深夜のことだった。

 顔面は原型をとどめず、手足は指から前腕から砕かれない箇所はないくらい、肋骨はすべて折られ、噂によれば、睾丸も潰されていたとのことだ。

 半死半生というか、生きているのが不思議なほど。まさに再起不能。

 うわ言で、

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 と、今も言い続けていると聞いた。

 久々津英真ももちろん事情聴取を受けたが、乱暴されそうになったのですぐに教室から逃げた。あとのことは知らないと答えた。

 男の凄惨な姿はとても女子にはできることではないと、久々津英真の言い分は全面的に受け入れられた。

 しばらくの間、大学内に不審者に気を付けるようにと通達があった。空き教室は施錠を義務付けられるようになった。

 不審者の仕業とはいえ、この事件以降、久々津英真は「周りを不幸にする、下手に近寄ればケガをする」、近寄りがたい存在となった。

 

 事件からそれほど時間のたっていないある日のことだ。

 6限の講義を受講して家に帰るかと、駐輪場から自転車を出そうとしていた時に後ろからふいに声をかけられた。夕方、駐輪場に他に人もいない。

「なあ、あんた!」

 女の声だった。関西弁のイントネーション。

 振り向くと久々津英真が立っていた。相変わらずの黒ずくめだった。気まずい思いが顔に出ていなければと思う。

 浜ノ湯の一件以来、浜ノ湯には行っていない。大学内でも意識して避けていた。

「言うた?」

 意外に低い声だった。探るような表情は二十歳の年相応の幼さに見えた。

 言うたとは、浜ノ湯の一件を大学で言いふらしていないかと言っているのだろう。

 むしろ、顔を覚えられていたことに、焦りとうれしさが交錯する。

「言ってないよ!」

 即答する。

「ほんまにぃ?」

「ほんま、だよ」

 つられてほんま、と言ってしまう。

 久々津英真が笑った。

「下手くそやな」

 関西弁のイントネーションを言っているのだろう。確かに久々津英真のイントネーションとは明らかに違う。

「なんばのそこらへんにおるおっちゃんらぁが聞いたら、殴られんで」

「殴られるの?」

「殴られるわ。確実や」

 何とはなしに打ち解けた雰囲気だった。お互いに笑む。

「また、来てよ」

「うん」

「ほんまに来てよ」

 そういうと、久々津英真は私の横の自転車のカギを外して、颯爽と去っていった。


「おい!」

 去っていったと思う間もなく、今度は男に声を掛けられる。しかもまた、後ろから。今日はよく声を掛けられる。

 振り向く。一目で久々津英真の係累だとすぐに分かった。それくらい顔立ちが似ていた。

 顔だけを見れば、モデルでも通用する一線を画する美があったが、どこかゆがんだ雰囲気もある。

 その印象を強くしているのはシャツの首元、半袖の袖口、短パンの裾からはみ出している刺青だった。ファッションでするような刺青ではない。和彫りと呼ばれるものだった。よく見れば、素肌に直接来ているのだろう。白いシャツからも刺青が透けて見える。

 明らかに周囲に見せびらかして威嚇する目的だろう。下卑た根性だと思った。

 黒ずくめで刺青をかたくなに隠す久々津英真とは対照的だった。

 第一印象にたがわず、威嚇するように、下からねめつけるような目はチンピラを思わせる。

 その表情は恐怖というよりも嫌悪感が先に立つ。

「姉ちゃんと何話してんだよ」

 やっぱり。しかし、弟くんは関西弁ではなかった。

「殺すぞ」

 いきなり言った。

「は?」

「は?じゃねえよ。聞こえねえのかよ」

 まじまじと弟君の顔を見る。年のころはどうだろうか。姉ちゃんと言っていたから、19歳かそれより下だろう。

 殺すとかできもしないことを、平気で口にするような奴は本当に嫌いだった。

 が、ふと思う、もしかしたら、あのラグビー部の男をあんな目に遭わせたのはこの弟くんなのだろうかと。

 その思いはすぐに打ち消される。不健康に細いこの弟くんに(伝聞でしか聞いたことはないが)あの惨状を作り出せるとは思えなかった。

 弟くんをそっちのけで、そんなことに思いを馳せていると、胸倉をつかまれた。意外に強い力だった。

 目の前に弟君の顔がある。まっすぐに怒気をはらんだ目が私をにらみつける。やはり久々津英真によく似ている。

「今度、姉ちゃんの、周りで、お前を、見たら、殺す」

 一言一言区切るようにして、私に宣告した。

 宣告すると、突き飛ばすように胸倉をつかんでいた手を離す。

「よぉ覚えてろよ」

 関西弁交じりの捨て台詞をはいて弟君は去っていった。


「はぁ! 英磨きとったん?」

 浜ノ湯で久々津英真に弟君のことを話すと、なんとも素っ頓狂な声を上げた。なるほど、弟君は英磨君と言うのか。

「どこで?」

「あの駐輪場で」

「あいつストーカーか! きっしょ!」

 身内には恐ろしく口が悪くなる人間がいる。久々津英真もそういうタイプなのだろう。

 前よりも距離が縮んだような気がした。

「何が殺すじゃ、ボケ! 今度、おおたら半殺しじゃ!」

 あまりの激昂ぶりに単純に引いた。

「あんたは気にせんでええで。どうせ殺す度胸もないくせに、言葉だけは一丁前なんやから」

「わかったよ。気にしないでおくよ」

 返事もそこそこに入浴代金を払う。男湯に入っていこうとする、後ろから、

「あの寝ションベンたれが!」

 まだ、気持ちが昂っているのか、そんなことを吐き捨てるのが聞こえた。


「今度会ったら、姉ちゃんがお前を殺すって、あんのヘタレに言うといて」

 浜の湯から出ていくときの久々津英真の言葉だ。

 

 それからしばらくして、久々津英真は大学に姿を現さなくなった。すでに一月は経つ。

 果たして漫研は軽いパニック状態になった。文字通りの正真正銘のアイドルを失ったわけだ。誰かが抜け駆けして不貞を働いたのではないかと、心当たりの学生のつるし上げを行った。

 と、断言できる。

 私がその当事者の一人だったからだ。

 講義が終わった夕方の駐輪場で声を掛けられた。

「ちょっといいかな」

 声を掛けてきた男は見たことがある顔だった。漫研のメンバーだった。

 いやです。と言って逃げたかったが、一人ではなく私を取り囲むように三人がいる。

 三人が三人とも、すごんでいるのだろうがいまいち迫力がない。だが、滑稽なほど真剣なのはわかる。懐に忍ばせていた刃物をそっと見せて来たからだ。

 自転車にかけていた手をそっと外され、促されるままについていった。

 連れていかれたのはやはり漫画研究会だった。

 所狭しと漫画の収められた本棚がある雑然とした漫研の部室の中にはさらに四人がいた。

 この七人が久々津英真に忠誠を誓った騎士団というわけだ。

 その奥には妙にきれいな椅子がある。そんなに広くもない部室の中で誰も椅子の近くに行こうとはしない。聖域のようだと思った。

 漫画研究会の中で久々津英真は漫画を読みふけっていたというが、おそらくはあの椅子に座っていたのだろう。

 ドアの前で立ち尽くしていると、早く入れと言わんばかりに強く押された。

 最初の穏便に済むかもしれない、という思いが揺らぐくらいの強さだった。

 たたらを踏んで部室の中に入る。後ろのドアが静かに閉められる。そのままナイフを持っていた部員がドアの前に立ちふさがる。

 なんとも格好が悪い思いをしていると、奥にいた男が口を開いた。

「手荒な真似をして申し訳ない。僕はH大漫画研究会部長の遠藤だ。本当に来てくれて礼を言う」

 芝居がかった話し方だと思った。

「これは脅迫じゃないんですか。拉致監禁かな」

 できるだけ平静を装って、こちらも精いっぱいの虚勢を張る。

「確かに。刑法220条と221条に抵触するね」

 即座に出るあたり、遠藤は法学部だろうか。分かってやってるなら故意犯になることも承知のはずだ。

「単刀直入に言うと久津津さんの行方を知らないか。ぜひ、正直に教えてほしい」

「なんで僕が知ってると思うんですか。こんなことをしなくても聞かれたら答えましたよ」

「それが本当かどうかを判断するのは君じゃない」

 さすがに常軌を逸していると思った。

「きみが久々津さんと話していたのはわかってるんだよ」

 ぞっとする。こういうタイプの背筋が凍る思いをしたのは、塾をさぼってゲーセンにいたのを家に帰ってから母親にやさしく指摘されて以来だ。

「エマさんがどこに行ったのか。君なら知ってるんじゃないかって、みんなと意見が一致してね。隠し事は無しにしようじゃないか」

 この口ぶりでは僕が久々津英真を監禁しているのではと疑っているようだ。

 確かに意見は一致しているらしく、まわりの騎士たちも一斉にうなずく。

 それにしてもエマさんときた。自分たちとの関係を匂わせているわけだ。

 お前はどうなんだという、本当に監禁しているのか、あの宝玉を独り占めにしているじゃないだろうな、という焦燥と嫉妬が透けて見える。

 白状してしまえば自分はいわゆる陰キャだし、彼女もいないし、童貞だし、どうにもそれが劣等感となっているが、こういう匂わせ方をされては気分が悪い。

 なにより、黙って監禁されるようなタマではないことくらいは知ってるんじゃないかと思う。

「龍になって飛んでいったんじゃないですか?」

 ナイフで脅されて連れてこられたことを完全に失念していた。背中の入れ墨があることは知られているが、何の刺青かは学内でも知っている者はいない。

 これでは監禁を暗に肯定するような口ぶりだった。逆上した部員から刺されかねない。

「龍?」

 遠藤だけでなく騎士団全員がぽかんとした。

 そして、何か合点がいったのだろう。遠藤がはじけるように笑うのを皮切りに部員全員が笑った。

「君が何も知らないことはよくわかったよ」

 よっぽどおかしかったのだろう遠藤が目の端に浮かんだ涙をぬぐいながら言う。その仕草さえ芝居じみている。

「本当に悪かった。脅されて連れてこられた事は警察に行ってもかまわないよ。それだけのことはしたからね」

 部室のドアの前に立ちふさがっていた騎士が脇にどいて、出てもいいよとばかりにドアを開ける。

「それにしても、あんな綺麗な菩薩様を龍とはねぇ」

 出て行きざまに誰かの声がした。それで笑い声が挙がる。

 ほっとしたような声音だった。

 久々津英真を菩薩様とは、どこまで偶像視しているのか。何かもっとやばいことを起こさなければよいがと他人事ながら心配になる。

 ともあれ、助かった。あんな所であんな連中に怪我をさせられてはつまらない。

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