体験を、夢という形で、体験から得られた感覚や感情といったものをイメージで表わしてフェードアウトしていくという、絵本のような終わり方。
「私は何にもなれない、ただ錆びて朽ちていくだけ。」
と缶という比喩から来たイメージでもありますが、健やかな夢にややネガティブな表現が見られるのが、この作品のポイントなのかな。そして、今という時代を表しているような気もします。
ややネガティブな表現ではありますが、悲観的ではありません。諦めというほど深刻さもなく、軽く受け入れている感じ。むしろ、何ものにかならなければならない、という切迫感からの解放に思えます。
それでいて、自分という確かな枠に何を詰め込むか、それこそがアイデンティティになっていくという未来指向の自己変容の期待感が、
「世界中の素敵なものを、この身にできるかぎり詰め込んで。」
に現れていると思います。