広島女子と食べる賑やかごはん 〜うちと一緒じゃと美味いじゃろ?〜

三屋城衣智子

第一話 お帰りなさい

//SE 玄関の戸を鍵で開ける音、閉まる音


廊下の奥から玄関へと駆け足で近寄る


「お帰り〜、疲れたじゃろ? お風呂にする? ご飯にする? それともたちまち、うちにする?」//冗談めかした感じで


//SE 玄関先、動揺でがたたと音がする


思わず吹き出し笑いの声、少しひっそり目に


「じょーだんじゃし。ご飯出来とるけ、はよ服着替えんさい」


//SE 靴を脱ぐ音、ついで廊下を二人して歩く音


「お仕事お疲れ様。一日必死こいとったんじゃろ、汗だくだくよ? しょうがないけぇきょーは一本いっとくかねぇ、お生ビール様。え、酔いそうじゃけいらん?? そっか」


//SE 廊下を歩きダイニングへの扉を開ける


鼻をくすぐる香ばしいソースの香り

嗅ぐ姿に、ちょっと得意げに胸を逸らし


「ふっふっふ、気づいた? ジャジャーン! 今日はなんと、自家製お好み焼きでーす♪」//ウキウキとした感じで


ダイニングテーブル、ホットプレートの上、保温だが先ほどまで調理が行われていたのか、たれたソースがジュウジュウと音を立てている


//SE 服を脱ぎリビングのソファの背もたれにかける音


裏返って丸まった靴下が床に転がる


「あっ! まぁた靴下丸まっとる〜、いっつもゆうとるじゃろ? 靴下は裏返しにならんように親指入れ込んで、爪先まで手を持ってくとええって。裏返しじゃと、汚れた面がうちっかわになってしもぅて砂とかついとったら入ったままになるんじゃけぇね」//呆れた感じで


ダイニングからリビングへと近寄っていきつつ


「ほら、うちも一緒にやるけん」


近寄り、もう片方残った靴下へ一緒に手を添える、結果、二人の体が密着する


「こうやって、そう、親指をぐいってして、そうそう上手じゃん。ええよ、そのまま爪先まで……」//耳元で囁くような声音で


靴下が裏返らずに足から外れる

片足立ちでやったのでぐらつき床へと倒れた


「きゃっ」


すんでのところで両腕を床につき、押し潰しにはならず

けれど押し倒したようになる

不意に汗ばんだ頬を触りながら


「うわぁ、ほんとに汗まみれじゃねぇ。後で一緒にお風呂かね? ふふ、真っ赤になった。すぐ顔に出るんじゃけぇ」


頬からつつつ……

指先で顎の方まで触り、首筋までその手がいきながら


「はよ部屋着に着替えて食べよ? ぇえ?! だぁめ、ごはんが先ってちょ、あ、っ……ん」//吐息が混じる


//SE ゴソゴソする音


必死の抵抗と、どうにかこうにかほっぺたを両手でむにっとし


「ご・は・ん・が・さ・き、ってうち、ゆーたよねぇ?! タマぁとられんとわからん?」//ドスの効いた声、けれどどこか照れている


密着した体を少し離す

その顔をじっと見ながら


「あつあつのうちに食べよ? 腕によりをかけたんじゃけぇね!」


体の上からどく

上体をあげ、乱れた髪を整えながら視線を床にやりつつ


「それに台所に立っとってうちも汗臭いじゃろうけ……お風呂入ってからが、ええし」//最後の方、照れて小声になりつつ


//SE ちゅっというリップ音


その後両腕を引かれお互い立ち上がる

おでこにキスされ驚き照れつつ


「ほんま、キス魔よね。うれしーけど。あとははヘラ用意すれば食べれるけん、ちょっと待っとって」


//SE パタパタとキッチンへと駆け込む音


脱いだものをそのままにしようとするのを見て


「あ、ちゃんとハンガーにかけとってよ〜。洗濯するもんはカゴに入れとって。うん、よくできました。えらいえらい♪」


ヘラを二人分持ってダイニングテーブルへと戻ってくる


「これでよし! 着替えすんだ? ああそれ、今日買い物の途中に似合うかな〜って思うてうてきたんよ。よぉ似おうとる、うちの見立てはハズレなしじゃね」//最後の方は少し得意げに


「早よ食べよ、保温のまま置いといて焦げたらやじゃし」


//SE 椅子を引く音


「じゃあ食べよっか。いただきま〜す」


//SE お好み焼きをヘラできる音


「ん〜ソースのええ匂い、やっぱ週に一回はお好み焼き食べんと力が出んよね」//ヘラの上に切り分けてのったお好み焼きへと、ふーっと息を吹きかけつつ


「(はふはふと熱々のお好み焼きを頬張りつつ)今日の仕事はどうじゃったん?」


//SE お茶を飲む音


「そうね、そりゃ大変じゃったねぇ。後でうちがマッサージしちゃろうか? え、サービスはあるか? んもう、ばかっ。いつだってサービスみたいなもんじゃろう?」//悪態をつきつつも照れている感じで


//SE ご飯を口に入れて咀嚼する音


「週一で自家製のお好み焼きを食べれて、美人で気立のいい奥さんじゃろぉ? しかも愚痴もきくし、ビールは用意しとるし至れり尽くせり。え、後はあーんのしあいこが足りん? ……しょうがないねぇ」


//SE お好み焼きを切り分ける音


「はい。口、開けて? あーん。……おいし?」//うかがうような感じで


「良かった。今日は隠し味に少しだけニンニクの粉入れてみたんよ。ふふふ、ありがと」//照れ笑いの感じで


//SE お好み焼きを切り分ける音


「うちにもあーんしてくれるん? あーん。……っん、おいし」


//SE もぐもぐした後ごっくんの音


「やっぱ、出来立ては違うねぇ。ん? 二人で食べるからなお美味しい? それはあるな〜、一人ん時とかさ、どうしても億劫になってしもうてから適当にインスタントとかやっとったけぇ」//しみじみと昔を思い出す感じで


「それに比べたら、好みとかうてくれるし、うちの好みにも合わせてくれたりもするしで、合わせ技でご飯自体も美味しゅうなったけぇ、なんか得した気分よね」


//SE お好み焼きを切り分ける音


「ふふふ、良い食べっぷり」


//SE ご飯を咀嚼する音


「ぇえ? 今日何して過ごしとったか? んーと、買い物しよったじゃろ? 郵便局寄って、それからカフェ見つけたけん、そこはいってお昼ご飯したかね〜。結構美味しかった。今度の休みに一緒に行こーや」


「ん? 結構ご飯ものそろっとったよ〜、店主がワイルドイケメンで、ガッツリ系もメニューにのっとったかな?」


//SE お茶を飲む音


「あ、今やきもち焼いたじゃろ? ふふ、そんなことないけぇね、うち一途じゃもん」


「それに左手薬指に指輪しとったし。え? ああ、だって友達がドンピシャ好みそうじゃったけ、お店教えちゃろう思うて確認したんよ」


//SE 手を合わせる音


「ごちそうさまでした! あー食べた食べた。お腹いっぱい。もう食べれん〜。ん? そう言いつつもたまにアイスとか食べよるじゃろ? だって甘味は別腹なんよ。うう、それ言わんでよ気にしとるんじゃけ。後で、じっくり確認する? っえっち!」

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