第9話

「ちょっと颯斗!!あんたどこ居んの!!」



……わぉ

お怒り彩華が来てしまったようだ


でも怒られる理由がわからない

なんで怒ってるんだ?


「……家」


「今すぐ出てきなさい!」


「はぁ?なんで出なきゃいけないんだよ」


「ちょっと彩華ちゃん!さすがに良くないよ!!」


「茜は黙ってて!!」


おいおいそれは無いだろ

何に怒ってるのかは知らないけど、姫嶋さんに当たるのは良くないわ


「おい彩華、姫嶋さんに当たるな。彼女は何も悪くない。僕は今不機嫌なんだ、話は後にしてくれ。その間に頭を冷やせ」


ブチッ



結局なんだったんだ?

彩華の態度が尋常じゃないほどに悪いってことは、それほどの事ってことの仕出かしたってことなのか?


…何もしてないのに??


他にあるとしたら光関係しかないけど、今は考えたくない




ブーブーブーブー



またぁ?

頭冷えるの早くなぁい?


ポチっ


「現実から目を背けるなーー!!」



…っ!!!!


「お前に言われなくたってわかってんだよっ!!」


「…っ!!じゃ、じゃあ何故家に籠る!!」


「そんなん、想像したくないからに決まってんだろっっ!!光がいない世界なんて、考えたこともなかった!!そんな世界で僕は、自分は生きていけないんだよっ!!…そんな世界で生き続ける意味なんてない」




そう、光がいない世界なんて、自分にとってその辺に転がってる石と同じかそれ以下だ



今まで無意識だったけど、自分の判断・活動基準は全て光だった


光が入る部活と活動日が同じ部活に入って、光が喜びそうな話、物を集め、光が許す限りのサポートを買って出る




岡野颯斗という男の世界の中心は、いつだって南野光というたった一人の女の子だった



世界の中心、いわば、自身の世界の核を突然失うとなれば、誰もが心を折られ、希望を見失うだろう



どうしても、この事実には向き合いたくなかった


だって、光を失ってしまった時、自分がどうなってしまうのかと恐怖してしまうから



「そんなこと言うな!」


「じゃあどんなこと言えば良いんだよ!!光は良くなるから、今は英気を養って貰いたいって言えばいいのか!?…はははっ、そんなことが言えればよかったな!自分の都合の良い人生が送れてそうだ!!

…まぁ、今までの自分の人生は都合が良かっただろうがね!

ははっ、これが聞けて満足か?笑」


「…っ!!そ、そんなつもりで言ったんじゃ、、」


「んなこと知らねぇよ。さっき言った手前、八つ当たりしてるみたいで悪いが、神咲は勝手に人のパーソナルスペースに入ってくんな。不愉快だ」


「ご、ごめん。で、でも、あ、光はそんなこと望んでない」


「…そんなこと、言われなくても分かってる!!だから何もしてなかったじゃないか!自分はまだ何もしてない!!

それをぶち壊したのはお前、神咲だろ!

一体どれだけの地雷を踏み抜けば満足するんだ!!!」


「「……」」


彩華が押し黙った。自分でもわかるが、今の自分も神咲も、冷静に対応ができない。やはり、頭を冷やしてからの方が良い。だから、一旦通話を切ろう


「私が何を言っても逆効果なのはわかった。けど、これだけは言わけてもらう!!

あんたは過去と未来しか見てない!今が見れてない!!

そんなんじゃ、まだ光は生きているのに、最後まで観ることが出来ないじゃないか!」



「…っ!!」


「まだ、光は生きているのに、光がいなくなった時の話をするな!光はまだいるんだ!!光が許す限り、まだ関わっていけるんだ!!

光と水族館に行く約束があるんだろ!当の本人の光が、頑張って交渉してみるって言ってたんだぞ!

それに対し、お前は今何をしている!!」


「…ほ、ほんとに交渉してくれてる?」


あ、あの言葉を、本当に叶えようとしてくれてる?


「あぁ、本人から聞いたから本当だ」


「……」


「茜に八つ当たりしたのも、颯斗のパーソナルスペースに土足で入っていったのも、申し訳なかった。ごめん。けど、颯斗は今を見据えた方がいいと思った。本当にごめん」


確かに、自分は光が居なくなってからのことしか考えてなかった

光はまだいるのに



そうだ、光はまだいる。

だから、今ある全ての力を持って光を楽しませてあげたい


今は、どうやって光を楽しませるかを考えよう


「……助言ありがとう」プツッ



‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎﹋‎


この後、僕が今までと同じように過ごせるようになのか、俊太がいつも通りの態度で、

『水族館デートじゃん?笑もうルートとか決めたの?笑 相談、のるよ?』

とぬかしながらこのグループを作った



彩華との関係?

表面上は元に戻ったよ?

本音?

気まず過ぎるから2人にはしないで欲しい



―――チャット


俊太:まぁいいよ。で?プレゼントとか渡せたの

か?


颯斗:あ


彩華:え!?ウソ!ありえない!


茜:岡野くんそれは流石に…

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