第22話 戦闘
日記を読み終わった僕は、深く絶望していた。
よく考えれば分かっていたことだった……この世界は余りにもおかしい……
「ははっ……結局僕は、全てにおいて“中途半端”だったんだな……能力も……存在自体も……」
あの日記に書かれていた事が事実なら……もう世界も終焉を迎えるかもしれない……そして、終焉の歯車を止められるのは恐らく涼風杜庵だけ……終焉を引き起こすのも涼風杜庵だ……
何もかも消えてしまう……
物語の主人公だったら、ここで立ち上がることが出来るのだろう。
だが……僕は主人公じゃない。
「この日記に書かれていることをあいつは全部するのか?だとしたらあいつはどうなるんだ?」
深い絶望の中、そんな疑問が浮かんだ。
僕にはまだ他人を心配する余裕があるみたいだ……
答えは分からない……だが、ただではすまないだろう……
いいのか?僕……あの料理人を失って……いや!ダメだ!!絶望するのは今じゃない!何か行動してダメだったら絶望したら良い。それに……よくよく考えたらこの世界の主人公は“僕”だ!!
僕は走り出していた。
涼風杜庵は僕らが最初に出会った場所“公園”に居る!
「はぁ、はぁ、見つけたぞ!涼風杜庵!一緒に帰ろう……」
「やはり来たか……日記を勝手に読んだんだな?だったら分かってるはずだ。家に……帰れ……ここに居たらお前まで巻き込んでしまう。これは俺がまいた種だ。」
「その種のお陰で僕達が居るんだがな……まぁ、帰るつもりはない……」
僕は臨戦態勢に入った。
元々説得出来るなんて思っていない……だったら無理にでも連れて帰るしかない!
「愚策だな……勝てると思ってんのか?俺に……一応言っておくが俺は“中途半端”なんかじゃない。」
「僕は素の身体能力は高い方なんだ。それこそ、“中途半端”じゃないぐらいにな。」
主人公と主人公の戦闘が始まった……
先に動いたのは僕だ。
僕は素早く相手の懐に潜り込み、パンチをお見舞いした。
「痛いな……だが……痛いだけだ。俺は本当の能力を使うぜ!嘘をついていて悪かったな。喰らえ!」
瞬間!僕の目の前の空間が歪んだ。
「これが……“世界を操る能力”か……チート能力だな……」
「俺もそう思うよ。俺の能力はこれだけじゃない。俺は色々な人から能力を奪って来たからな。それも少しじゃなく全部!」
「自分勝手だとは思わなかったのか?」
「お前には分かるのか?初恋の相手を失った悲しみが!」
「分からないな……自分勝手な野郎め!」
「この世界は俺を中心にまわっている!何処が自分勝手なんだ?」
喋りながらでもこの攻撃……避けるので精一杯だ……マズい!歪んだ空間に直撃してしまった!
体が……歪む!
「はぁ、はぁ、痛え。」
血は出ていない。殺さないように加減してくれているようだ。
「諦めろ……杜庵。俺とお前じゃ場数が違うんだよ。」
「そう、場数が違う……でも僕は諦めない。」
「そろそろしつこいぞ!もういい……眠れ……起きた頃には全てが終わっている……じゃあな……杜庵……」
刹那!僕の周りの空間が歪み、僕は意識を失った――
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