第18話 化け物
「!!!!!」
アナウンスは僕を呼び出すものだった。
マズい……このままでは恐らく、狂って消えてしまう。
いたるところに落ちていた商品だけが入った買い物カゴがそれを物語っている。
店から出れば消えずに済むのか?
分からない……だがこのまま店内に居ても消えるのを待つだけだ。なにかしらアクションを起こさなければ……
僕は周囲を見渡した。
出口らしきものはなく、普通に買い物をしている人が居た。
あの人もいずれ消えてしまうのだろうか……
そんな事を考えているとふと、目に黒い物体がチラついた。
なんだ?
物体は、高速で僕の周りをグルグル回っている。
目を凝らしてみてみると、物体は人の形をした化け物だということがわかった。
「!!!!!」
こいつが人々を消した化け物か……デカイ……体がもう少しで天井に付きそうだ……
化け物は手足が異常なほどに長く、1言でいうと“異形”だった。
「おい!お前は何故こんな事をする?目的はなんだ!」
僕がそう言うと化け物の動きはピタリと止まった。
そしてこっちを見た。
「ウッ……」
高速で動いていたのでさっきまで顔は視認出来なかったが化け物が立ち止まった今、初めて顔を視認出来た。
顔はかなり不気味なもので、僕は少し驚き、すくみあがってしまった。
「ギィィィィィィィ!!」
化け物が叫びながら突っ込んできた。
「うわぁ!!僕のそばに近づくな~!!!!」
化け物は僕の体に当たると、すり抜けて行ってしまった。
1人の買い物客がこちらを訝しむように見ている。
どうやらあの化け物は僕にしか見えていないらしい。
「僕に触れられないようだな……ハハ!今まで僕は何にビビっていたんだ?触れなかったら攻撃されない。人が消えたのは僕の勘違い……買い物カゴだけを置いて帰るやつなんて普通に居るしな……帰るか……」
化け物には知性はない。
知性があれば意味もなく突っ込んで来ないだろう。
しかも消えたしな。
「あっ!出口があった。以外と近くだったな……これが灯台下暗しってやつか……帰ろう、家に……買い物も“した”しな……」
僕は店を出た。
家までは特に何もなかった。強いていえば、すれ違う人が“居なかった”な……
「まぁどうでもいいか……ただいま〜」
僕は玄関のドアを開けて言った。
返答はない。
「ただいま〜?」
僕はリビングに行った。 誰も居ない。
「杜庵?居ないのか?」
僕は家中を探し回った。
杜庵は居なかった……
そして、鳴るはずのないアナウンスがなった。
―――ピンポンパン―――
「涼風杜庵さん!!急イデサービスカウンターまでオコシ下さい。」
―――ピンポンパン―――
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