第10話 カフェにて

 「嘘?それは一体どういうことだ?」


涼風杜庵は本当に何を言っているのか分からないといった顔で聞き返してきた。


「お前、瞬間移動の能力者じゃないだろう?」


僕はいきなり核心をつくようなことを言った。


「ほぅ、どうしてそう思う?」


「この世界に同じ能力者は絶対に複数人いない。だが僕は出会った。お前と同じ瞬間移動の能力者に!」


「それは“この世界”での話だろう?俺は違う世界から来た。故に同じ能力者が複数人いることもあり得る。」


「そうか……疑って悪かったな。」


「良いよ。別に俺みたいな怪しい奴なんて疑われないほうがおかしいもんな。」


「ところでさ、俺が作ったハンバーグ、食べるか?」


「あぁいただくよ。」


俺達はその後、ハンバーグを食べ、いつも通りのことをして各自、ベッドに入った。

疑われないほうがおかしい奴か……あいつは本当に何なんだろう。初めて出会った時も言うほど慌ててなかった……まるで、“何度か経験”したみたいに……流石にこれは考えすぎか……

僕はそんな事を考えながら眠りにつくのだった。


 誘拐されてから何日経っただろうか。あの日の翌日はまじで瞳に心配された。

朝から誘拐されてたからな。

そして僕は今、カフェ『カフェイン』でコーヒーを飲んでいる。

僕だって休日は1人でゆっくり過ごしたいのだ。

連日、災難続きで疲れたからな。

まぁ、退屈しないからいいんだけどな。それに今のところ命の危機は訪れてないし……

今日は平和に過ごせたらいいな……

そんなことを思った矢先、僕は面倒なやつに出会った。


「あっ!杜庵さん。お久しぶりです。」


出会ったのはヤンデレの神名だ。

最近、学校に来ていなかったからどうしたんだろうと思っていたが心配するほどでもなかったらしい。


「あぁ久しぶりだな。今日はどうしたんだ?もしかしてまた誘拐するつもりか?」


「まさか!もうそんなことをはしませんよ。私は改心したんです。今では誘拐なんかしなくても杜庵さんを落とせるように頑張ってます。最近、休んでたのは勉強してたんですよ。」


「そうか。まぁせいぜい頑張れよ。で、何しに来たわけ?」


「いや、たまたま見かけたので声をかけただけですよ。」


「じゃあ今度からは店の中でコーヒーを飲むことにするよ。」


「そう言わないでくださいよ~」


「用が済んだらとっとと帰ってくれないか?まぁ、何か僕の興味を引くようなものがあるなら話は別だが……」


「興味を引くもの?あっ!これならどうでしょう?この本、朝起きたらテーブルにあったんです。」


「ふむ……興味深い。ちょっと借りていいか?」


「いいですよ。」


「お前は中を見たのか?」


「いえ、怖かったのでまだ見てません。」


「じゃあ見てみるか。」


僕は本を開けた。


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