第2話 学校案内
時が経ち、放課後になった。既に日が傾き、沈もうとしている。
教室には、僕と瞳だけが残っていた。
最終下校時間まで後1時間といったところだろうか。
「なぁ、この後予定あるか?」
僕は瞳に聞いた。
「予定?特にないけど。」
「それなら良かった。君はこの学校に来たばかりだろう?だから学校を案内しようと思ってな。」
「別に私なんかの為にそこまでしなくても……」
「いいじゃないか。友達だろう?」
「それならお言葉に甘えることにするよ。」
僕たちは教室を出た。
そして、雑談をしながら歩き出す。
「能力は扱えるようになったか?」
「おかげさまで大分扱えるようになったよ。」
「そうか、それなら良かった。」
「どうして杜庵は初対面の私にここまでしてくれるの?」
答えは簡単なことだった。
「“興味”が湧いたからだ。僕は少しでも“興味”を持ったらそれを調べ尽くす性格だからな。“中途半端”が1番嫌いなんだよ。」
「じゃあ私に興味がなくなったら私から離れていくの?」
「それはないな。少なくとも君から興味がなくなることは無いだろう。」
「おっと、喋りながら歩いてたらもう着いたな。ここが音楽室だ。」
僕はその後も、瞳を案内していった。
恐らくは次が最後だろう。
「ねぇ、この扉は……」
「そうだ。屋上への扉だ。この学校は少し特殊でな……誰でも屋上に入れるんだ。まぁ流石に今は誰も居ないと思うがな……いるとしたら“馬鹿な奴”だけだろう。」
僕は扉を開け、そして絶句した。何故なら“馬鹿な奴”
が屋上で寝ていたからだ。
「ねぇ、あの人……死んでないよね……」
「あぁ、寝ているだけだ。とりあえず起こしてみるか……」
僕は“馬鹿な奴”を起こした。
「は!ここは?あ!そうか!私、屋上で寝てたんだった!あなたが起こしてくれたの?私の名前は時雨彼方。あなたが起こしてくれなかったらずっと寝てたよ。
本当に“運”がいいな~」
「1つ質問するけどいつから寝てたんだ?」
「朝からだけど……」
彼女は当然のように言った。
「朝から?!良く先生にバレなかったね。」
瞳が言った。
「私は“運”がいいところが取り柄だからね。」
彼女は自慢げに言った。
「屋上で寝てたら風邪をひくだろ。」
「“運”がいいから。」
「風邪をひかないのは“運”がいいからなの?」
「この高校に入ってからずっと屋上で寝てるけど1度も風邪をひいたことないよ。」
「僕はドン引きだけどな。」
よく退学にされなかったものだ。それも“運”がいいからなのか?まぁ、何はともあれこいつは変人だ。
瞳を連れてさっさと帰る事にしよう。
僕は瞳の手を掴む。
「ひゃ!」
「今すぐこの変人から逃げるぞ。こいつはヤバい。」
「酷くない?まぁ、来たかったら何時でもおいでよ。私は屋上にいるからね。」
「誰が来るかよ!」
僕はそう吐き捨て、屋上を後にした。
その後は――――瞳が顔を凄く赤らめていたこと以外――――何ともなく家に帰るのだった。
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