第7話

体育、疲れたな...





トイレに入って、早く着替え済ませて戻らないと。



ジャージは、脱がないと暑すぎて死ぬと思う。


シャツに袖を通す。



「......洗う気も、なくなっちゃった...」




赤黒くなった袖に目をやる。



...靴下だって、伸びる分伸ばさないと。




包帯なんて、巻くわけにはいかない。





我慢、しないと。





















教室、もどろ。




トイレのドアを開けて、教室に戻る。


トイレに着替えバッグを持って行っているのをすれ違いざまに誰かに不審がられた気もするけど、もうそんなのどうでもいい。






教室のドアを開け...





...あっつ、何これ...



近くにかけてある古臭い温度計に目をやる。


29℃。


馬鹿じゃないの...






みんなシャツだ。冬だってのに。



「あれ、蓮見さん、暑くないの?」



近くにいた女子が話しかけてくる。



「うん。」


「なんでセーターなんて着てるの〜」


「...冷え性なの。気にしないで。」




..........


























今日もそれなりの一日が過ぎていく。


毎日毎日同じすぎて、ほぼ覚えてないけど...。























...気づいたら、帰りのホームルームだった。



ただ息してるだけだとほんとに、


何も感じないし、


授業は教科書だけ開くけど、


あの子のことを考えてたら時間なんてすぐ...
















「「「さようならーー」」」





...家、帰りたくないな。



でも今日は私が夕飯作らなきゃだから、早く帰らないと。



誰よりも早く教室を出る。











下駄箱から靴を取り、校門を出る。



教室と比べて寒すぎる。


今日は風がつよい。



前髪......



もともとボサボサで、クセだらけの髪。


ヘアドネーションの存在で正当化してきた、


切るのがめんどくさいだけの長髪。



「.....はぁ」



寒いからか、ため息がもれた。




本棚みたいに立ち並ぶビル。


帰宅ラッシュもまだなのに、一般道で渋滞が起きている。


騒がしい。


信号機の音がうるさい。


平日の昼間から酒を飲む、中年男性の3人組が居酒屋で発狂している声が聞こえる。


もう気力がない。


普通の人が3歩で進む距離も、私は5秒くらいかかる。


そのくらい、もう気力がない。





私のことを動かしてくれてるのは本当に...


























玄関についた。


......ご飯、作らないとな...







だれもいない家の玄関をあける。






今日は何にしようかな......


あれから母がいなくなって、家事は私と父で分担するようになった。


父が仕事で忙しくて夜にならないと帰ってこない日は、私がご飯を作る当番なのだ。




無心で冷蔵庫をあさる。


...豚肉、切れそ。




とりあえず今日使い切っちゃって、明日にでも買ってこようかな...



肉を詰めているジップロックを外す。







ガチャッ







え...?




あ、郵便の人かな...?


お父さん、そんなこと言ってたような気、するし。





「はーい、今行きます」



玄関に歩いた。



......あれ...?いきなりチャイムもなし...に...




「...トワ.....」



「え......?」



そこには、顔を真っ赤にした父が立っていた。



「あ...お父さん、おかえり...」


「顔色......あ、お仕事は...?」



鼻息が荒い。


焦点があってない。



「......え...?」



瞬間、お腹に激痛が走る。



「.......ぁっ...」


「倒産したぁぁああああああぁあ!!!」




またお腹に鈍痛が響く。




「っ......」


「父さんが、とうさぁぁぁぁんんんん!!!!がっはっは!!!!!あああああああ!!!」





横腹を殴られる。



一瞬力が入らなくなり、うずくまってしまった。


髪を掴まれる。



「....いっ......」


「お前さァ!!!」



......



顔面を殴られる。


髪を掴まれていて倒れることすらできない。



「......」


「お前の顔見てるとあいつがチラつくんだよ!!!!!」




......



「.......っぁ....ぅ、」



痛い.....痛い、たすけ...



「あの女!!女!!!!!絶てぇ許さねぇ!!」



思い切り振りかぶる拳を見ることしか出来ない。


とっさに手を出して防ごうとしたが、当然間に合わなかった。




頬から液体の音がする。




なんとか倒れられた。


逃げないと。床を這ってでも、


にげないと...



「お前も離れてくのか!!あの女みたいに!!」



.....



「.......ぅ、...ぅあぁ...」



背中にかかと落としをされた。



「........い.......」



目の前に赤い液が広がる。


自分で出すのとは比べものにならないほど痛い...




意識が遠のく。















「......せ..........つ.....」





































辺りは白と黄色に彩られている。

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