『レザリア』の物語 Ⅰ —中編—
そうして私達は『魔女の家』を
リナは引っ込み思案な私にも、積極的に話しかけてきてくれます。嬉しいです。
私はエルフ族の中でも若い方ですが、幸運な事に戦闘能力に恵まれ、いつしか『月の集落』随一の戦士などと呼ばれる様になりました。
それもあってか、若輩者にも関わらず皆の代表を任される事も多くなっていったのです。
私は、ちゃんとしなくちゃと思って言葉遣いをしっかりしてみたり、
でも——それと同時に、私とふざけ合う者もいなくなってしまいました。仕方がありません、誰かがちゃんとしなくてはいけないのですから。
ただ、ニーゼだけは何かと私に絡んでくるのですが。
そんな風に思いを馳せながら、私達は順調に森を進んでいきました。その時です。
「——多いな」
セイジ様が足を止めました。これは私の見せ場が来たのかもしれません。『巨大な蜘蛛の魔物』三十体。
リナにいい所を見せるチャンスです。見ていて下さいね、リナ。リナは私が守ってみせます。そして、あわよくば——
「——君は空から支援してくれ」
「はいはーい」
ん? どういう事でしょう。空から支援?
次の瞬間、信じられない光景が。なんとリナは空へと飛び立って行きました。
「——あれは、リナの『飛ぶ』スキルっていうやつだ」
さすがはセイジ様のご家族、素晴らしいです、憧れます!
「よし、行くか」
セイジ様の声を機に、私達は魔物の
はっきり言って、楽勝でした。セイジ様の腕もさることながら、何といってもリナ。彼女は敵の注意を一身に引きつけ、蜘蛛たちを翻弄していました。惚れ惚れします。
私が木から降りたった時、糸でネバネバのリナの姿が目に入りました。私は慌ててリナの元へと駆け寄ります。
「リナ! 大丈夫ですか!?」
「あ、待ってレザリア! 今はばっちいから触らないで!」
え……もしかしたら私は拒絶されてしまったのでしょうか……。少し気落ちした私がリナの事を眺めていると——
「とうっ!」
なんという事でしょう。リナはセイジ様に抱きつきました。
——チクッ
あれ?なんでしょう、この心の痛みは。これは、いえ、そんなまさか——
私は会話を続けますが、どうも落ち着きません。私は自分の気持ちに目を背ける為、ヘザー様に話しかけます。
「リナさんってとても明るい方ですね——」
「四年前——リナがこちらに来た時、彼女はもっと大人びてましたよ。ただある時を
子供である事を捨て、無理に大人の振りをしている私。
大人の振りを捨て、明るく眩しくなったリナ。
大人の振りをするのが、いい事なのかどうか分からない。でも——
「ねえ、ねえ。二人で何話してんのー?」
——私はリナを抱きしめる。
「私はリナと……もっと仲良くなりたいです」
そう、これが偽りなき本心。エルフの抱擁は親愛の証です。思わずリナの頭を撫でたくなる衝動は、なんとか抑えましょう。
「——いや、私もレザリアと仲良くなりたいけどさ!」
「じゃあ私達、友達ですね!」
こうして、月の集落の皆を仲間とするならば、私にとって初めての友達が出来たのです。とりあえず、今の所は、友達で——。
セイジ様のお力により、私は月の集落の者達と合流出来ました。それどころか、攫われた同胞を助ける為にセイジ様が動いて下さるとか。感謝してもしきれません。
途中でライラが出て来た時は驚きましたが、彼女も気さくでとても素晴らしい人でした。ああ、もし叶うなら、エリス様にもこの姿を見せてあげたいものです……。
そうこうしている内に、リナが仮眠を取る事になりました。何せ、セイジ様と共に街へと向かうのです。心配です。私が守ってあげたい。
そんな時でした。ヘザー様がとんでもない事をおっしゃいました。
「——レザリア、あなたも仮眠を取りなさい。あまり眠れていないのでしょう?」
そ、それは添い寝をしろという事ですかっ!?
「い、いえ! 私は……」
大変です。そんな事をしたら、自分を抑えきれる自信がありません。私はやんわりと辞退しようとしましたが——
「いざという時に、万全の調子でいて欲しいのですよ」
「そうだぞ、レザリア。何かあったらすぐ起こすから」
——ヘザー様とナズールドが私を誘惑します。いけません、そんなふしだらな……。私は自分の中の天使と悪魔に相談します。
『GO!』
覚悟は決まりました。私は平静を装って、リナの布団に入ります。
「それでは隣り、失礼しますね」
「え、ちょ、レザリア!?」
「どうしました、リナ?」
「い、い、一緒に寝るってこ、こと!?」
そうですよね。嫌ですよね。ごめんなさい。でも、ここまで来たら押し通してみせます。
「?……はい、私たち友人ですから。あ、もしかして、狭いでしょうか?」
「いや、広さは十分だけどさっ!」
「ふふ。うふふ。よかった。あ、そうだリナ、寝つけない様でしたら子守唄でも歌いましょうか」
「うぅ……よろしくお願いします」
半ば強引にリナの布団に潜り込んだ私は、彼女の手を握り、耳元で『子守唄の魔法』を囁きます。程なくして、穏やかな寝息を立て始めるリナ。私は彼女の顔を眺めます。
ふわあ……かわいい……。
——こうして、かれこれ一時間程でしょうか。リナの寝顔をしっかりと目に焼き付けた私は、夕食の準備に取り掛かる為に起き上がりました。
「あれ、もう起きたのかい、レザリア」
「ふふ。ばっちりですよ、ナズールド」
そして時は過ぎ、夜。色々ありましたが、皆で楽しい夕食を終え、いよいよ別れの時がやってきました。
別れの挨拶を終え、リナは街へ、私は魔女の家へと向かいます。
でも、リナが男達にあんな目に遭わされるなんて——その時の私は知る
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