第17話 砂浜
「俺の妹、今度友達と海水浴に行くらしくて」
大悟が昼休みにそんなことを言い出した。礼央はまあそんな事もあるだろうと思ったが、大悟の顔は至って真剣だった。
「由々しき事態だ。まだ小学生だし、何かあったらと思うと心配で」
「いつ行くって?」
「来週の水曜」
「良かったな。台風の予報は今の所ないし、天気も良さそうだ」
礼央がスマートフォンで天気予報を確認してやったというのに、大悟はそうじゃなくてと語気を強めた。
「海は遠い、電車で一時間以上もかかる」
「まあ名古屋市内からだとそんなもんだろ」
「それに、近所の男の子やその家族とも一緒らしい」
大悟の懸念は専らそこにあるようだった。礼央の弟もよく友達とあちこちに出かけているが、礼央はそこまで心配したこともなかった。妹だとやはり違うのか。
「ちなみに、妹さん今いくつ?」
「小学一年生」
「結構離れてるんだな」
何にしても近所の家族が子どもの友達も連れて行くという構図だからさしたる問題はないように思えるが、大悟は心配性なのだろう。それにしても海水浴とは、礼央には随分懐かしい響きに思えた。久しく行っていないが、電車で行くこのあたりの海水浴場と言えば、おそらく郊外に位置する砂浜の海岸だろう。今年は無理だろうが、次の夏に大学生になっていたら、海を見に電車に乗ってもいいかも知れないと礼央は考えた。
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