デンタル・キャピタル・リサイタル

壊し屋本舗

第1話 私に目は4つもない(そう、グレンラガンみたいに)

ぶるん、ゆさゆさ。ぶるん、ゆさゆさ。私が歩くときの脳内BGM。これが頭に流れていると、リズムよく歩けている気がする。


まだ朝だというのに、夏のお日様は容赦なく私たちの大いなる大地を照らし、むしむしとした蒸気を立ち昇らせる。と、同時に、私の大きなるおっぱいは燦燦と輝き、むんむんと色気を立ち昇らせる。


だから、というわけでもないが、さっきからスーツのおっさんたちとやたら目が合う。もちろん、頭部に付いた目ではなく、胸部に付いた目だ。昔からそうだ。下のおめめはたいそう人気で、上のおめめが嫉妬するレベル。


うーん、やはり朝早いからと言って、ノーブラはやりすぎたか。アルコールを切らせていて、徒歩3分のコンビニに行こうとして、また二度寝を決める気満々だったから、まあいっかと思ってしまったのがよくなかった。朝早くのコンビニには、いかにも大学生といったかんじのにーちゃんが、眠そうな顔をして立っていたけれど、わたしの大きなおめめを見て目がギンギンになってしまったみたいで、申し訳ないことをしたと思う。あるいは、私のヨレヨレTシャツに書いてある、「I LOVE TENGA」の文字を見て催してしまったのかも。かわいそうに。今から寝ないといけないのにね……


「……というわけで、朝から反省することばっかりだったわけ! はい、これゆかりんの好きなまるごとバナナね」


「な~~~にがまるごとバナナじゃい!」


ツインテールをバサバサさせながら、ゆかりんこと、小林由香は言った。はあ、ゆかりんは今日もかわいいなあ。


「えー、ゆかりんバナナ好きじゃん? まあ、いらないならじぶんで食べるけど。あーん、べろべろりーん」


「ええい、やめい! そんなふうに舌を出しながらくわえようとするな、はしたない!」


「こうやって食べたらうまさ1.5倍増しなんだよ~」


「そんなわけあるか! ……いや、はなからそうやって決めてかかるのは良くないな。よし、わしにも食わせろ」


ゆかりんは本当にかわいい。こういうまっすぐなところとか、推せる。


「もちろんいいよ! こうやって、あーんぺろぺろりーんってするのがコツね」


「こ、こうか? ぺろーん」


「ああ、だめだめ、ゆかりん下手すぎ!」


とか言いながら、こっそりゆかりんの破廉恥な姿を写真に収めるのを忘れない。うひひ。


「また練習しといてね!じゃ、私二度寝するので!おやみす~」


「む、おぬし非番か。うらやましいかぎり。じゃあの~」


私はゆかりんとお別れをして、自分の部屋に戻った。我ながら芸術的配置。足の踏み場がマリオのステージ。やっふー。布団にダイブ。目を閉じる。目を閉じると、どうしてもあの人の顔が浮かんでくるけれど、入手したアルコールで無理やり溶かして眠る。代わりに浮かんできたのは、目をギンギンにしたコンビニアルバイトのにーちゃんだった。接客中、袋がなんだといろいろ話しかけてくるくせに、目線はずっと私の胸部に注がれていた。てやんでい、私はグレンラガンじゃないんだぞお。顔はひとつしかないんだよ!

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