🍓【ロリ巨乳の幼馴染み彼女が異世界からやって来たイケメン勇者に寝取られたと思ったら、実はイケメン勇者が男装した美少女で、しかも10年前に生き別れた血の繋がっていない妹だった話】

ぞいや@4作品(■🦊🍓🌏挿絵あり)執筆中

【序章(全10話/完結済み)】

1話:喪失 ~記憶は失う為にある~

*まえがき

 前半は過去の話をして、後半から本来の時間軸へ進みます。

 それではよろしくお願いします。

 ――――――――――――――――


「……あれ、何だろう?」


 その日、『赤羽あかばね彩人あやと(当時6歳)』は戸惑った。

 いつもの様に近くの神社で遊んでいたら、鳥居の中に“見知らぬ風景”が広がっていたのだ。


 見知らぬ風景――空には大地が浮かび、3つのお月様が世界を照らし、無数の星々と様々な形状の虹が天球を覆いつくしている。

 後に、それが「異世界の風景」だと知ることになる彩人あやとだが、この時の彼がそれを知る由もない。


「あやと、どうしたの?」


 背後から声を掛けて来たのは、一緒に遊んでいた同い年の子供。

 蟻地獄に蟻を落とすという、子供特有の残酷な行いを「遊び」と称し、彩人あやとと一緒に遊んでいた女の子だ。

 宝石の如く透き通る瞳でこちらを見つめる彼女に、彩人あやとは鳥居の中の風景を説明しようとして――



 突風ビュウッ!!



「わっ!?」


 強烈な風に彩人あやとの身体が地面を離れる。

 そのまま排水溝へ流れる水の様に、鳥居の中に浮かぶ光景へ吸い込まれる寸前で、彼は鳥居の「ぬき(中央の横棒)」をガシッと掴んだ。


 結果、強風下の鯉のぼり顔負けに、バタバタと激しく荒ぶる彩人あやとの服。

 一瞬でも気を抜いたら鳥居の中に吸い込まれてしまいそうで、しかし子供の握力ではそう長く耐えられる訳が無い。 


(もう、ダメだ……ッ!!)


 すぐに限界を迎えた彩人あやとの握力。

 彼が早々に手を離した――瞬間、突然の「なぎ」。


 先の突風が嘘の様に消え去った。


 結果、小さな彩人あやとの身体は重力に従い、神社の石畳にドテッと落下。

 うつ伏せの姿勢で落ち、受け身も取れずに頭を打った彩人あやとは呆気なく気絶する運びとなる。



 ――――――――

 ――――

 ――

 ―



 ~ 最寄りの総合病院にて ~ 


「ん~……ここは?」


 目を覚まし、彩人あやとが最初に覚えたのは疑問。

 真っ白い部屋の中にある大きなベッドの上に眠っていたようだが、まるで見覚えの無い光景に戸惑うことしか出来ない。


 しかし、この光景に戸惑う彩人あやとよりも戸惑っていたのは、ベッド脇でシーツの交換をしていた新人の看護師か。

 口を開いた彩人あやとをギョッとした瞳で見つめており、その後は部屋の入口から廊下に向かって叫び声を上げた。


「ちょっと誰かッ、先生を呼んで来て!! 彩人あやとくんが目を覚ましたわ!!」


 その言葉で、どうやらここは病院なのだと理解した彩人あやと

 だとすれば、看護師が病室でそんな大声を上げていいのだろうか? などという疑問を抱く彩人あやとに駆け寄り、新人の看護師が尋ねる。


彩人あやとくん、気分はどう?」


「……あやとって誰?」


「え? 彩人あやとくんは彩人あやとくんじゃあ――」

 ハッと目を見開き、新人の看護師は改めて質問する。

「ねぇ、自分のお名前はわかる?」


「ボクの名前? ボクは……あれ? 何だっけ……?」


 端的に言って、彼は記憶を失っていた。

 短いながらも人生の全てだった“6年間の記憶”を丸ごと全て。

 一緒に遊んでいた少女の姿が、神社から忽然と消え去っていた事すらも――。



 ■



 ~ 10年後 ~


「おはよう彩人あやと君」


「おう、いちごおはよう。今日も相変わらず小っちゃいな」


 平日の朝。

 高校生となった赤羽あかばね彩人あやとは、一軒家の玄関を出てすぐに声を掛けられた。


 玄関先で声を掛けて来た――彼を待っていたのは、隣の家に住む幼馴染みの少女『犬神いぬがみいちご』。

 天然の栗毛が淡い印象を抱かせる彼女は、彩人あやとの返事にムッと唇を尖らせる。


「背なんかすぐ伸びるもん。彩人あやと君の身長だってすぐに追い抜くんだから」


「おいおい、140が180に追いつくって? 流石にあと40センチ伸ばすのは無理だろ。お前が摂取した栄養、全部その胸に行ってるし」


「あ、すぐセクハラ言う~。彩人あやと君なんか嫌~い」


「そうか、俺はいちごこと大好きだけどな。でも嫌われたなら仕方がない、これからは別々に登校しよう」


「えッ!? やだッ、嘘嘘ッ、冗談だって」


 彼女を置いて歩き始めた彩人あやとと、そんな彼の大きな背中を追いかけるいちご

 朝っぱらから始まった追いかけっこも、すぐに彩人あやとが足を止め、追いついたいちごの手を取って二人仲良く登校。


 その後はいつも通り学校に辿り着き、正門を抜けて生徒玄関に向かう最中で――


(ん?)


 彩人あやとの視線が、ふと教員用の玄関に向く。

 そこにはクラスの担任が居て、隣には“変わった服装の不審者”が立っていた。


「誰だアイツ……なんかゲームキャラみたいな格好してるな」

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