SW2.5仮想卓リプレイ『夕焼の救済者たち』
桜楼
プロローグ
御禄「……うん、非日常的な日常が欲しい」
八十神カンパニー(世界線を股にかけて活動する超人の集まり。詳しくは作者の別シリーズ参照)本社の一角で、
日退御禄は日常が好きである。
それはそれとしてフィクションの中の非日常も好きである。
今現在の彼は、そのどちらも見たいというあまりにも矛盾した思いを持ち、彼からすれば近未来的なデザインのベンチに腰掛けていた。
方法は、あるにはある。それのために《欲しい物を欲しいときに合法的に手に入れられる》というカンパニー社員の特権を利用してもいる。が、如何せんその方法は特権でも手に入らないもの――友人、を必要としているがために、彼はかれこれ17分と41秒間、最高級の座り心地をしたベンチの住人となっているのである。
御禄「……あまり、コミュニケーション能力を必要とすることはやりたくはないが、声をかけるしか無いだろう」
日退御禄は、友人と遊ぶことに慣れていなかった。友人と呼べる人物は両手の指の数を少し超えるほどいるのだが、自分から遊びに誘うという行動は起こしたことがなかった。
それでも、無表情をあまり崩すことのない彼が難しい顔をして立ち上がろうとしたその時。
京刀「ん、御禄?」
千夜「ほんとだ。御禄くんが考え事なんて珍しいね」
一之瀬「そんなに難しい顔をしてどうしたの?」
英一之助「わしら、ちょうど宅飲みが延期になったところなんじゃ。話なら聞くぞ?」
御禄「……」
御禄「――頼みがある」
御禄「一緒に、TRPGをしてくれないだろうか」
――――――――
京刀「――それで、まず聞きたいのは、TRPGってなんなんだってことなんだが……」
そんなこんなで、5人はカンパニーの寮の一室、御禄の趣味の部屋に移動をしていた。
御禄「そうだね、まずそこから話そう」
御禄「TRPGとは、日本では『テーブルトークロールプレイングゲーム』、英語圏では『テーブルトップロールプレイングゲーム』と呼ばれる遊びだ。……ビデオゲームのRPGを知っているだろうか。あれは、指定された、もしくは指定したゲーム内のキャラクターをコマンドで操作してそのキャラに成り切る、追体験するものだね」
一之瀬「ゲームなら皆、俺の家で何度か遊んだことがあるから大丈夫だよ。RPGの意味も説明したことがあるはず」
御禄「それなら説明が省けそうだ」
御禄「TRPGは、自分で作成したキャラを、コマンドではなく口頭で動かす。例えば、『自分は勇敢な戦士のキャラなので、罠を気にせずに進もうとします。罠があったら怖いので、誰か止めて欲しいです』というように、自分の持ちキャラの行動やセリフを発言する。それを受けてGM……ゲームマスターと呼ばれる話の進行やNPCのロールなどを行う人物だとか、他のPL……プレイヤーが発言をする。この時、どういう方向に話を持っていきたいのか相談しても良い」
御禄「もちろんゲーム要素もある。敵と戦うために攻撃をする時やピッキングで鍵を開けようとする時、高い崖を登るときなど、GMが『成功するか失敗するか微妙だ』などと判断したとき、サイコロ……TRPGでメジャーな言い方だとダイス、かな。それを振って、結果でその後何が起こったかを決めたりもする」
御禄「それを繰り返して、GMが用意した骨組みだけの物語を完成させるのがTRPGだ」
千夜「ほぇ~……。つまり、運要素が絡むお芝居、脚本が未完成だからアドリブ多め、その代わり演じる人たち全員で相談してよし! って感じ? 私、やりたい!」
御禄「その認識で構わないと思う。今回は僕がGMをするから、皆にはPLをやってもらいたい。多分、まずはキャラクターの作成も含めて3、4時間ほどかかると思うが、どうだろうか」
英一之助「わしはええぞ~。ここまで説明されると、興味が湧いてくるもんじゃろ!」
千夜「私はさっき言った通り!」
一之瀬「俺もやるよ。御禄くんが遊びに誘ってくれるなんて、滅多にないし」
京刀「もちろん俺もだ。ということで御禄、まずは何をすれば良い?」
御禄「……ありがとう」
御禄「では、説明を続けるとしよう」
御禄「TRPGのキャラのデータのことをキャラクターシート、縮めてキャラシと言う。キャラシは専用の紙やサイト、アプリに書き込んで管理する。今回は管理がし易いという点でサイトを使わせてもらう。URLにアクセスすれば、全員が全員のキャラシを見ることができるからだ」
御禄「ということで、社内チャットでグループを作ってサイトのURLを送った」
英一之助「早すぎやせんか?」
御禄「……まあ、楽しみにしてくれているだろうから」
御禄「コホン。では、キャラクターを作っていくとしよう。今回のシステム……世界観やルール、ゲームで言うところのシリーズタイトルが一番適当かな……は、ソード・ワールド2.5。剣と魔法の世界で冒険者となって冒険をするものだ。そのシステムのルールや世界観はルールブックと呼ばれる本やサイトに書いてある。ソード・ワールド2.5のルールブック3冊と今回使用できるサプリメント……追加コンテンツは全員分用意した」
京刀「……多くないか?」
御禄「その分やれることが増えるからね。一つずつ説明していくから、まずはキャラクターを作ろう」
御禄「最初は一番シンプルな初期作成が良いとも思ったけど、少しやれることが増えた状態でやる方が面白いかもしれないと思ったから、今回は4~5レベル作成、レベル上限4でキャラクターを作成してもらう」
御禄「使用サプリは
御禄「そして、経験点の計算方式にハウスルールを使用させてもらう。具体的には基本経験点を1000点ではなく戦闘回数に500を掛けたものとし、そこにボスのレベルの100倍、ボス含む全ての討伐したモンスターのレベルの10倍の経験点を加算する方式だ」
御禄「それじゃあ、準備はいいかい?」
こうして、5人の冒険譚が幕を上げたのである。
――――――――
登場人物
GMを務める高校生。
元軍人。ツッコミ気質の不幸体質。
京刀の妹。ガチでフェアリーテイマーができる。
刑事。怒るとめちゃくちゃ怖い。
元ヤクザの鉄砲玉。お調子者だが恋愛に対しての免疫がない。
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