マーダーブレイン
谷資
第1話
仮想世界。またの名をメタバース。人類は永遠の生を求めた結果、脳のみを仮想世界に繋げることで死がない世界にたどり着いた...はずだった。
「我々に死の恐怖を再び与えたバグがあったのだ、それは脳破壊であるッ!
精神的に強いショックを受けることで、我々人類の命綱であり敏感な脳がその負荷に耐えれず機能を停止してしまうのだ!
そして、ここにひとり天才殺人鬼がいる。そう、俺だ。この物語は俺の殺人英雄譚だ」
「いきなり、独り語りを始めるなよ、シゲオ」
…注意を言ってくるこの女はモトイ。俺の数少ない友人だ。コーヒー党の眼鏡女子。眼鏡の奥にあるのは、俺を汚物のように見る目がある。(俺調べ)そして、俺の裏の顔を知っている唯一の者でもある。
「今日もまた…するの?」
「当たり前だ!!この世で一番許せないものは彼女持ちの男だからな。俺にできなくて、他の男共にできるのは理解できん!」
それを聞きため息をするモトイ。まぁ、だれであろうと殺人なんて嫌だろうな。まして、友人がそれに手を染めているのは心が苦しいだろう。俺だってこんな顔のモトイを見るのは嫌なんだがな…。
「おやっ!もう、こんな時間か。それじゃあ行ってくるよ」
逃げるように、モトイに背を向け、出口へと向かう。
そんなシゲオを見て、
「私じゃあ、駄目なの...?」
そう小さく呟いてみるモトイ。仮想世界にテレパシーがあればなぁ、と思うのであった。
さて、ここで俺の素晴らしい脳破壊方法を教えよう。
それは―—NTRである。リア充な男に対する超効果抜群な方法だ。
今回は標的の女と既に知り合いになっている。あるホテルで会う約束まで交わしている。随分と手際がいいだって?それは、この英雄譚のために準備してきたのさ。3分クッキングだって出来上がりを準備しているだろう?
目的のホテルに着き、指定の扉を開けると、標的の彼女がいた。
それとなく会話を交わし、いよいよ作業にとりかかる。
三脚にビデオ通話用の機器を取り付ける。
「なんだか、動画配信者みたい。ウケる。」
女が笑っている。そう言われると古臭さが出で嫌だな。…今じゃあ、動画の中に求めていた輝く体験なんかが簡単に得られるんだから、衰退するの自明の理か。セッティングが終わったので、女を隣に座らせ、カメラを回す。同時に彼氏にビデオ通話をかける。
3コールもかからない内に、彼氏の端正な顔が映った。俺の敵だな。正真正銘のね。そう決意し、力強く第一声を出す。
「うぇ~い!!彼氏クン、見えているかい?」
標的の男は目を丸くしている。ふふふ、驚いているその顔がたまらない…!
男の目を見たまま女の口元に俺の口を近づけてみる。男の表情がみるみる変わってくる。
―—しかしその表情には、俺の求めていたものがなく、むしろ…喜んでいる?!
「こ、これは、もしかして寝取られってやつですか!?う、嬉しいぃ!!」
は?
「あ、そこのあなた!もっと悪者ぶってください!!」
ありえない。ありえないありえない!俺が失敗なんてありえない!
「おれが失敗するわけがない!俺は天才なんだ!だれもが称賛する天才なん..」
俺は倒れた........。
マーダーブレイン 谷資 @tanishi70
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます