Colorful Bullet!!!
望月 幸
プロローグ
【色の思い出】
俺の「色の思い出」は三つある。
一つ目は〈青空事件〉だ。俺が小学四年生、兄さんが中学一年生になった時、それぞれ自分の部屋が与えられた。それ自体は嬉しかったけれど、明らかに俺の部屋のほうが小さかった。具体的には兄さんの部屋の七割くらいか。当然不満だった。
それで当時の俺は思った。「天井を空色に塗れば広く感じるんじゃないか?」って。実際、青は後退色なので部屋を広く感じさせる効果はあるわけだが、その時はこっぴどく叱られた。
ただ、塗ってしまったものは仕方ないし、意外と部屋の雰囲気を良くしていたから、俺の部屋には今でも青空が広がっている。
二つ目は〈公衆トイレ事件〉だ。俺が小学六年生の頃、自宅と小学校の中間にある公園の公衆トイレで、友達と一緒にいたずらしたことがある。トイレの出入り口には、青い逆三角形の「男性用トイレ」を示すマークと、赤い三角形の「女性用トイレ」を示すマークが貼られている。俺たちはそのマークの色を逆に塗り替え、離れた所から見ていた。
結果は、ある意味予想以上だった。ほどなくして、まず中年男性が狙い通り女性用トイレに入った。小便器がないことに気付いて周りをキョロキョロ見回し、首をかしげながら隣の男性用トイレに入った。その直後、これまた狙い通りに若い女性が男性用トイレに入り、すぐにキャーと悲鳴が上がった。
おじさんの小便姿を目の当たりにしたであろう女性は転びそうになりながら飛び出し、遠くで笑っていた俺たちと目が合った。俺たちは逃げ出したがすぐに捕まってしまい、平手打ちを食らった後に、やはりこっぴどく叱られた。まあ、これで上手く逃げられたらその後も調子に乗っていたずらを続けていただろうし、結果的には良かったんだと思う。
最後の三つ目は、俺が〈Colorful Bullet!!!〉というアーケードVRゲームと出会ったことから始まる。プレイヤーごとに割り振られた『色』の能力を駆使して戦うこの対戦ゲームは、ただの暴力的なゲームじゃない。『色』という形で具現化された、その人の裸の個性のぶつかり合いだ。だからこそ、このゲームは多くの人を魅了し、多くの人を
つまらない理由で自分の心を見失いつつあった俺にとって、〈Colorful Bullet!!!〉との出会いは心を開放するきっかけであり、大げさかもしれないが運命を感じずにはいられない。良くも悪くも多くの人生を狂わせてきた〈Colorful Bullet!!!〉――その出会いは高校の入学式にさかのぼる。
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