答合せ

石村まい

答合せ


五月闇母の着物の幾重にも


ハンガーの競り合ふ音や月涼し


草原にしろき犬立つ夏が立つ


無職なりぢつと見てゐる蝸牛


麦笛をたどりて夢の庭へ出る


絵筆より光染みゆく白夜かな


覚えつつ歌ふ童謡山滴る


鹿の子のまなざし我を透きとほる


触れらるるまま触るるなり梅仕事


青嵐むかし泣かせた子の家に


籠あかるく新玉葱の行脚かな


夏至の日の国道線のみな滲む


蛍狩手をやはらかき檻として


何人なんぴとも他人のごとき夜釣かな


蝙蝠の数より多き気配なり


暁光やわづかに動く睡蓮花


むつむつとつつく水羊羹の父


蚕豆を答合せのやうに剥く


振り返り振り返りゆく祭かな


海霧やガードレールのふと消ゆる

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答合せ 石村まい @mainbun

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