白馬のシュプール

しおとれもん

第1話

   「白馬のシュプール」


第一章「ペンションいくみの来客」


白馬五竜。


「TОプラス動詞の原形が不定詞なんだよー!あーーっ!」

眩しいくらいの白銀にぽット出の素人スキーヤーが、麓まで消えて行った。会社の同僚4人が滑り納めで年末の白馬に来ていた。

白馬のシュプールは、ジグザグではなく一直線だった。

それは美しい曲線のシュプールや斜滑降したシュプールがスキーヤーには迷惑な痕跡を真っ直ぐ打ち消した孝の直滑降の行き先は、宿泊先のペンションくるみ眼と鼻の先だった。

ゲレンデの白雪はペンションのエントランスにまで迫っていた為、ゲレンデの勢いで滑り込んで来る事が出来た訳だ。

ここの宿泊客の九割方が利便性の良い方を選らんでいる。

「あー怖かった。」もう3時か、宿に帰って風呂入って酒飲んで寝ようか?

「やっくーん!大丈夫?」

孝が振り返ると声の主は孝の後をパラレルターンで追い掛けて来た美世子だった。

「なんでそんなに速いの美代子は?」

「やっくんが下手くそだからそう見えるのよ、直美達も此処へ帰ってくるわ!ワイン飲もうか?」八束孝(やつかたかし)、南国功太(なんごくこうた)髙橋直美(たかはしなおみ)、龍山美代(たつやまみよ)ら、4人は揃ってチェックインをした。

台帳にサインをしている時ペンションの玄関自動ドアが、ウィーンと開いた拍子に冷気が孝の脚を舐めて通りすぎて行った。

台帳が2、3ページパラパラと捲れ慌てて孝の左手がそれを制した。

マホガニーの受け付けカウンターが、すべすべしていて肌触りは冷気が吹いても温かい。

アルファベットのUの字に湾曲して受け付けを形成していた。

「やつかたかし。っと、」

宿泊台帳に直筆して、夕食は6時半からですか?と聞こうとした矢先、

「やつかさんですか?」

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