小説の小ネタため書き

ひじま

こじんまりとしたバーに勤めている男性とお調子者のシェディーのお話


シェディーは街一番のモテ女。街に繰り出せば誰もが彼女の噂をして、男はナンパ、女は陰口を叩く。「魔性の女」と呼ばれ、馬鹿にされることも多かったが、本人は「女の僻みは怖いわ、そんな時間あったら自分磨きに使えばいいのに」と全く気にしていなかった。


実際シェディー自身も自分の容姿は可愛いと思っていたし、毎日言い寄られるのも悪い気はしていない。しかしなんだか憂鬱、陰口言われるくらいなら男どもにはやめてほしいと感じていた。


そんなシェディーの最大の悩みは「信頼できる友達がこの街にいないこと」である。


先程も言ったが、女は論外だし、男は脳みその中身がのことでいっぱい。

油断すれば流石に女として終わってしまう。


せめて私について知らない女か、女が嫌いな男がいたら、とあるはずのない想像ばかり望んでしまう日々だった。


しかし、彼女の願いは現実となる日が来たようだ。


とある日、町外れにある小さなバーによると、自分の顔を見るなり鼻の下を伸ばすキモい男どもの中に一人、しかめっ面をした屈強な男がいた。


シンプルでラフな着こなしと、きれいなブロンドの髪。おまけにすごいイケメンで、その場にいた女は皆彼に熱い視線を向けたままのようだった。


実際シェディー自身もその一人だったみたいだ。その場に突っ立っていると、ブロンドの髪の男がカウンター席へと案内してくれて。頼んだ少し高めのお酒を飲んでいる間、隣のキモい男がまじまじと私の胸を覗いていた。


しかし、正直そんなことどうでも良くなるくらい、シェディーは一瞬でブロンドの髪の男に惚れていた。


女嫌いっぽそうだし、おまけにイケメン!世間に疎そうな感じだし、私がいかに誠実で人情深いかを見せつければ男避け兼友だちになってくれるはず...!と。

最初のうちはその感情が恋だと思っておらず、単なる逸材を見つけた感動だと思っている。それからバーに行っては話しかける日々が数日続いた。


結果は見事に惨敗。


軽く話しかけてみると話には応じてくれたが、仕事以外のことを聞けば即無視。

話しかければ誰もが振り向くシェディーにとって、どうしたらいいかわからない状態だった。


そんな様子をみて、バーにいた数人の女たちは私のことを知らないのか話しかけてきてくれて、結局その子たちに会うためにバーへ向かうようになった。


それから結構経ったある日、事件が発生。

ブロンドの髪の男のことをすっかり忘れていた!


彼女はいつものようにバーへ向かうい、まずは男の名前を聞こうと企んでいた。


が、その後を街の数人につけられていたようだ。

みんなでワイワイ喋っていると、突然バン!と大きな音を立ててドアが開く。


「おいおいシェディーはこぉんな狭くてボロボロのお部屋で過ごすのがすきなのかい?」


きもい、今すぐどっかいって!!


こえをあらげようにもできなかった理由は、相手が酔っ払った状態で酒瓶を持っていたから。

もし反抗したせいで怒らせて、みんなに怪我させたらまずい...


他の人も皆怯えた表情で入り口を見つめている。

私があの男について行けば、みんなが怪我する可能性はなくなる...


「なにいってんの。...はやくいくわよ、」


キモい男の腕を絡め取り、下からゆっくりと視線を合わせ、舌を舐めずった。

キモい男はたちまちキモくなり、「ガハハ!今日は一日中付き合ってもらうからな!」と顔を歪ませながら言う。


思わず顔をそらし、照れたふりをしながら吐きそうになるのを抑える。


「やっぱりこんなところ来るんじゃなかった」


思わずこぼれた独り言にハッとする。

聞こえてないよね...?


みんなは変わらず怯えた表情のまま。

けど視線の先はキモいおじさんじゃなくて、私に向けられているような気がした。


いたたまれなくなったシェディーは急いでバーを出ていった。


翌日、見知らぬ部屋で目が覚める。

小さなベッドの上に寝転んでいたようだ。床にはキモいおじさんがなぜか縛られている。起きたことに気づいたのか、その状態でニコニコとした表情を向けてくる。


急な吐き気と嫌悪感に思わず泣きそうになった。


もうあの店には戻れないし、女としても終わった。彼にあったとしても、みんなに会えたとしても、街の人と同じように軽蔑、嫌悪されるんだ、と。


そんな事を考えながらふと、この場所がバーの内装と似ていることに気がつく。


そう、なんとシェディーが起きたところは、バーの中にあるブロンドの髪の男の部屋でした。


彼の名前はブレイブ、あのバーの店主さんで、この騒ぎを伝えに行こうと走っていると、泥酔したおじさんが酒を飲まされたシェディーに手を出そうとしているところを発見し、助けてくれたそう。

記憶がないのは多分そのせいだと教えてくれた。


「ありがとう、なんてお礼を言ったらいいか...」

「その前にこのじじいの話」


どうすんの?と聞かれ、シェディーは思わず


「この街から出てけ、顔もみせんな豚」


と叫ぶ。ブレイブはポカンとした直後、大きな声で笑い出した。


それからしばらくした後、二人はまたあのバーで再会。他のみんなにも今までのことを話し、謝った。


皆は優しく励ましてくれて、無事仲直りもでき......................。


と、ブレイブから話があると奥にあった彼の部屋に呼び出される。

俺の友達になって欲しい、と深々と頭を下げながら頼んできたのだ。


真面目で紳士的な彼を恋人にするのは、もう少し先でもいいかな。

シェディーは笑いながらいいに決まってるじゃん!と彼の背中を小突く。


数年後、とあるバーにて。


見知らぬ新しい顔の客がやってくる。ボロボロの服と、大事そうにお腹を抱えながら申し訳無さそうに奥の席へと向かっていく。


「おねーさん、これあげる!」


華やかな雰囲気の女性が、客の机いっぱいに暖かく栄養の高そうな品々を載せていく。


「ごめんなさい、払えません。こんなに高そうなもの...」


「シェディーはあなたにごちそうしたんです、お代は彼女から頂きます」


カウンターからやってきた男性がこちらにきて、お姉さんと肩を組む。


「すみません、...お名前を聞いても?今度お礼を...」


そういうと、二人はこういった。


「じゃあ、町外れにある小さなバーの料理は美味しいし、素敵な人がたくさんいたってみんなに伝えてください!」


それでチャラにしますよ、とブレイブとシェディーは笑った。


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