「ASMR」視覚が聴覚にささやき脳を撫でられる感覚にゾクゾクする小説だ

「G’sこえけん」企画参加の小説ということで、読んでみたところ非常に興味深かい作品でした。ほかの参加作品にも少し目を通しましたが、この小説には、ほぼ地の文がないうえ、口頭句をくくる「 」が皆無なのです。
 
 劇シナリオ等の手法を取り入れて、音に対してのSE表現等も付けられており、更に異形の要を呈しています。

 しかし、これが心地よい。

「 」はここは会話だよと示すものですが、この小説にはそれがなく、効果として文を追うと、ここからは会話だと身構える必要がないため目の延滞がありません。それにより、主人公ジーナの発する言葉が「ASMR」の副題にまごうことなくマッチし、ある時は抒情詩のように、そしてある時はまるで耳元で囁かれている感覚を受けてしまうのでした。

 ジーナの”お兄ちゃん”とちょっと甘え声を印象付ける言い回しの妙で、奥底をくすぐられるのもあり、彼女の役割や性格(性癖)が次第と露わに大胆に進んでゆく流れも、この異形にとてもマッチしているようです。

 地の文がほぼ無いため、読者に情景を伝える事に作者はかなりの考慮を要したと思われますが、この辺は想像力(妄想力)において読み手を選ぶのかもしれませんね。

 しかしながら、しっとりとそして妖艶に次の言葉に移らされ、ジーナが精神世界において捕食対象とした彼を蹂躙してゆく露わな姿に虜になってしまう。

 ドMのあなた、ぜひ一読ください(笑)