エピローグ あと少し

 小説かドラマか映画か。


 落ちているときスローモーションになっているのをよく見るけど、本当だったんだな。


 ベランダから身を乗り出している羽衣の顔。


 絶望に染まった顔。


 滑稽。


 これから死ぬというのに笑いが止まらない。


 馬鹿だなあ。


 本当に。


 そう思うだろ、千亜。


 ごめんな、一人で先に逝かせちゃって。


 寂しかっただろ。


 これからは一人じゃないから。


 てか、千亜のことだから天国で友だちつくってたりして。


 それはそれで腹が立つ。


 嫉妬しちゃうね。


 だけど、寂しくさせたのはボクだから。


 許してあげるよ。


 その代わり。


 ボクを早く見つけてよ。


 ボクも頑張って千亜を捜すからさ。


 自殺したヤツは地獄逝きって聞いたことある。


 ホントか嘘か知らない。


 正直どっちでもいいや。


 多分天国にいるであろう千亜の元に、必ず辿り着いてみせるから。


 もうちょっと待っていて。


 あと少しの辛抱だよ。


 再会したらまず、離れ離れになってからの互いの人生を話そう。


 あっ、千亜は天国から見守ってくれているから全部知ってんのかな。


 知ってんだろうな。


 あぁ……楽しみだ。


 使い古された言葉だけど言わせて。


 もう二度と手を離したりなんかしない。


 約束する。


終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る