復讐時代

鷹山トシキ

第1話 開戦

 2023年

 舞台は、京都府にある山内学園という私立高校だ。主人公のいつきは教師でありながら、事件の解決にも関わることが多い人物だ。受け持ちは3年7組、担当は日本史だ。ある日、彼の教え子である伊藤あさひが突然行方不明になる。樹は阿部寛あべひろしに、あさひは石原さとみにどことなく似ている。


 樹は伊藤あさひを探すために学校の教室から出発し、旧校舎の美術室に向かった。そこで彼は月の明かりの下、伊藤あさひと、アメリカから留学しているヒルが一緒にいる様子を目撃した。驚いた樹が近づくと、ヒルが何かを伊藤あさひに手渡した。


 しかし、その直後、突然の停電によって全てが暗闇に包まれた。停電が解消されると、伊藤あさひは姿を消し、ヒルも姿を消してしまったことに樹は戸惑った。


 樹は教師としての立場を駆使しながら、伊藤あさひとヒルの行動の謎を解明するため調査を始めた。彼は伊藤あさひの友人や他の教師に話を聞き、その中でいくつかの証言が食い違っていることに気付いた。


 その中で、伊藤あさひが最近、ヒルと一緒に下水道に入り浸っていたことや、彼とヒルの間には何か共通点があることが判明した。樹はヒルが何者かを突き止めるため、下水道への探索を続けた。


 樹が下水道を探索している最中、彼は伊藤あさひの遺体を発見した。一方で、ヒルの姿は見当たらない。樹は伊藤あさひの死因や、ヒルの行動の真相を解明するため、自身の推理力を駆使した。


 やがて、樹はあさひの死因が毒殺であることが判明した。

 毒はいつ、どのように盛られたのか、誰も説明できない。


 捜査担当の卜部健うらべけん警部は、あさひの死から最も大きな利益を得る磯子菜々緒いそごななおを第一容疑者と考える。菜々緒も7組の生徒だが、あさひから上履きを隠されたりイジメに遭っていた。

 樹は、菜々緒の行動が疑わしいと指摘する。菜々緒は当夜の行動を明かすのを拒み、魚屋でフグを購入したのは自分ではないと答える。フグには猛毒テトロドトキシンが含まれている。🐡


 卜部は菜々緒を逮捕しようとするが、樹は卜部が何度もミスを起こしていることを知っており、菜々緒の逮捕を思いとどまらせる。すると次の容疑者は、あさひの死で利益を得てアリバイがない無名竜也むみょうたつやである。彼はあさひと同じ文芸部の部員で、竜也はあさひから『金田一2世』という推理小説をパクられていた。

 竜也の家は貧乏で、スーパーで万引きしていたのをあさひに目撃されていたのである。

『先生に言うかわりに、パクらせろ』とあさひは竜也を脅したのだ。竜也はそれを拒み、あさひは顧問の樹にチクった。

 樹も若い頃、いじめっ子に脅され中古のゲームショップでファミコンソフト『さんまの名探偵』を万引きしたことがある。


 卜部はすぐに竜也を逮捕する。毒薬の入った小瓶が彼の部屋で見つかり、ヒルの絞殺死体も下水から見つかる。


 しかし、樹が竜也の容疑を晴らす。樹は、真犯人があさひの元カレ、福士和尚ふくしかずなおであり、彼のいとこ、山田美織やまだみおりが手伝っていたことを明らかにする。2人は敵対するふりをしながら実は恋愛関係にあった。2人はあさひの常備薬である睡眠薬に臭化物を加え、最終的に致死量にした。

「あさひは僕を裏切ってヒルと浮気をしていた」

 和尚は夕暮れの教室でゲロった。

 樹は彼をオショウと呼んで可愛がっていた。

 卜部は和尚の部屋を徹底的に調べ、押し入れの中のダンボールの中からロープを見つけ出した。漫画やオモチャに埋もれていた。


「今回はおまえのお陰で手柄を立てることが出来た。ありがとう」

 居酒屋で深々と卜部はお辞儀をした。

「お礼はいいから女よこせ」

 枝豆を頬張っていた樹は言った。

 彼は10年つきあった恋人にフラレた。

 明日、6月9日で40歳になる樹に悲劇が待ち受けていた。


 山田美織が刑務所の中で首吊り自殺し、元カノの豊後紅子ぶんごべにこの白骨死体が東京にあるD大学の地下から見つかった。


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