放課後のメリーさんが、リョウメンスクナを連れてきた

水鏡月 聖

序文

第1話 序文

 放課後の静かな旧校舎の一室、カバンから取り出した文庫本を開く。

 冷たい風が古い窓をたたく音さえもどこかいとおしく、風にさらわれる枯葉の音さえ聞こえてきそうなこの場所で、僕はただ読書をしていたかっただけなのだ。

 それなのに……


 とある放課後、突然として旧校舎の前に現れた野良犬の首なし死体。


さらに、一人きりの教室で響く文明的な呼び出し音に舌打ちしながら、伏せた本と入れ替わりにスマホを手に取る。


『あ、もしもし! わたし、麻里。今、旧校舎の裏山にいるの。

 大変です! ヤバいもの見つけてしまいました! 

 死体、本物の死体です。

 しかも、普通じゃないんです。

 これ、リョウメンスクナですよ!』

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