Day.6 アバター

 人間、誰だって楽して生きたいだろう。僕もその一人だ。働かずに部屋から一歩も出ず、食べては寝るだけの生活をしたい。

 どうにか理想を叶えたい。考えた末に、僕は適当に宗教をでっちあげて教祖になることにした。

 僕は神の化身であり、神たる僕に供物を捧げ続ければ必ず楽園に導かれる。それだけの文言を長々と仰々しく記した経典を作って、信者集めに奔走した。その期間は正直苦しかったけれど、努力は実るもので。片手で数えられるほどだった信者も、今では数えるのが面倒なくらい増えた。

 目的通り、僕は信者からの捧げもので腹を肥やし、寝たいときに眠る日々を送った。時には好みの若い娘をそばに呼び、精神を清めるだのそれっぽい口実で欲だらけの一夜を過ごしたりもした。

 それが日常と化したある晩のことだ。いつものように呼び寄せた娘が、僕の腹の上でほとほとと涙をこぼした。

「ああ、主様。天界を追放されてから百数年。ようやっと見つけたと思いましたのに、こんなただれた生活をなさっていたなんて」

 娘は痛ましそうに僕の全身を撫でて、さめざめと頬を濡らす。

 僕が神の化身だなんて、そんなはずがないことは僕が一番知っている。なのに彼女は「主様」と呼びながら、僕の首を両手で押さえこんだ。

「今すぐにこの醜い体から解放して差し上げます。ともに天界へ戻りましょう」

 まさか僕は本当に神の――そして彼女も神の使いの化身だったりして。それならきっと、でっちあげではない本物の楽園へ連れて行ってくれるはずだ。僕はうなずいて体から力を抜いた。

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