第18話 海斗君を守ろう協定(朱莉side)
海斗君は私に部屋に戻ると言って、行ってしまった。
洸太君と二人になってしまったリビング。
私は洸太君に尋ねた。
「洸太君もだいぶ辛かったんじゃない?色々隠しながら海斗君と接したりとか。」
「いや、俺はこれぐらいしても感謝しきれないくらいあいつには恩しかないので。」
「海斗君が何かしたの?」
「いや僕って昔はこんなにコミュ力高くなくって。周りからもいじめられてたりしてて。その境遇を一緒に戦ってくれたのが海斗だったんです。」
私は海斗君と初めて会った時、この子は責任感の強い子なんだろうな、と感じていた。
家庭環境もあまりいいとは言えず、それもあって海斗君自身も辛い思いをしていたのだろうと初めて会った時に感じた。
しかしそれもまた私にも当てはまった。
責任感はある方だと思うし、それにあの家庭環境だったから。いつも光莉ばっかり可愛がられてきたのもあって親からの愛なんて信用ならなかった。
似たもの同士の二人が今こうして恋人同士になれていることが私にとって何よりも嬉しい。
それに親友の洸太君も海斗のことを心の底から慕ってくれている。
誇るべき人なんだと思う、海斗君は。
「海斗君はさ、多分人一倍責任感が強いからさ。洸太君を助けようと手を差し伸べたなら最後まで一緒にいてくると思うよ。だから洸太君もそんな海斗君とこれからも仲良くしてあげてほしい。」
「わかってます。海斗は俺の唯一の親友なので。」
「ありがと、海斗君に代わって私が感謝させてもらうね。」
洸太君と二人っきりの空間で少し変な空気感になってきたところで、洸太君が質問をしてきた。
「あのー、気になってたんですけど、お二人はなんで付き合ってるんですか?」
「き、気になるよね。」
「光莉と別れてすぐの海斗がなんで付き合うなんてことしたのかなって気になって。」
「そうだよねぇー。」
私は海斗君との馴れ初めから最近の話まで細かく説明した。
最初は夜の公園で出会ったこと。海斗君が私のことを好いてくれていたこと。でも私はその気持ちに応えれる自信がなくて逃げたこと。そして数年後に光莉の彼氏としてまた私の前に現れたこと。結局私の我慢がならなくって、奪いに行ったこと。
全てを話したけど、洸太君は驚きもせず、でもどこか物珍しそうに聞いていた。
「海斗は本当に光莉のことが好きだったらしくて。俺にも相談してきたりとかしたんですけど、結局フラれる羽目になって。でも朱莉さんが海斗のそばにいてくれるなら安心です。」
私はこの言葉をかけてもらって覚悟を決めた。
今までは、海斗君のそばにいるのが私なんかで良いのかな?なんて思ったりすることもあるけど、やっぱり海斗君はわたしが守りたいって想いが強いから。だからやっぱり私が守るんだって覚悟を決めた。
「私、海斗君のこと絶対に守ってみせる。何がなんでも。」
「俺も海斗の親友としてこれからもそばにいたいんで。よろしくお願いします。」
「一緒に海斗君を守ろ!」
「はい。」
私たちは海斗君を守ろう協定を結び、ここで解散することにした。
海斗君も落ち着くために時間が必要だろうし。
洸太君がまた遊びに来ます!って元気よく言って、帰って行った。
あんな子が海斗君の親友だったらとても安心できる。
私は洸太君を見送って、海斗君の部屋に向かう。
コンコン!
「海斗君?部屋、入るね?」
私が部屋に入ると、海斗君はベッドで眠っていた。
「寝顔まで海斗君は可愛いなぁ。」
なんだかんだで初めてじっくりと海斗君の寝顔を見る。
どんな姿であっても多分世界で一番かっこいいと思う。
「悪夢だけは見ないでね。海斗君。おやすみなさい。」
私はそうつぶやいて、海斗君の唇にそっとキスをした。
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