更なる襲撃 〜前編〜

 翌日は朝に通りすがりの行商人と馬車を交換し、俺も含めチームメンバー全員で厳戒態勢で挑むも、何事もなく過ぎ去っていく。

「もう諦めたんだろうか?」

「いえ、まだ攻撃はあると思います。第一波の状況を踏まえると、流石にキラービー如きで我々を出し抜けるとは思わないです。実力の把握、夜間の対応確認、と続いて次は本命の攻撃が来る可能性が高いです」

 俺の疑問にアリエッサが答える。


「そうね。次は、兵士も含めた攻撃が来る可能性が高いでしょうね。いくらなんでもLV10を倒せる魔物を使役することは不可能なはず。となると物量で攻めてくる可能性が高いと思うわ」

 カミラ姫の推測だ。確かにその可能性はあるな。俺は頷くと警戒体制を継続した。


「今日は平和だったみたいですね。後は夜ですか……」

 夕食の時間、アンがつぶやく。アンは夜対応のために日中は寝てもらっていた。

「ああ、攻撃が来る可能性はあるな」

「100%来ますね」

 俺の言葉に被せるカミラ姫。自信を持って断言した。


「ここまでの状況と今後を踏まえると100%今夜に攻撃があるでしょう。この先の地形は少し狭くなっており、挟撃されやすい場所です。待ち構えているとみて良いでしょう」

「なるほど。ルートを変更しますか?」

 ブロットはルート変更を提案する。しかしここからの変更はかなり遠回りをすることになる。現実的ではない。

「いえ、ここで遠回りするとサクラにたどり着くのが非常に遅くなります。その方がリスクは高いです。このまま行きましょう。ただ、カミト様とエリス様は私の馬車で待機いただけますか?」

 

 夕食をメイドのレーシェが片付けるとともに、俺とエリスはカミラ姫の馬車に同乗する。「夜は苦手……」

「まあ基本はアンとアリエッサとエッジに任せよう。両方向から攻撃が来た場合はエリス単独でどちらかに向かってもいいと思うが…… 一人だと撃ち漏らしが多数発生するだろうし、かといって複数だと同士討ちのリスクがあるから難しいな」

「私から意見させていただいていいでしょうか?」

「はい、姫様どうぞ」

「その場合は、前方にそちらの攻撃を集中していただいて突破するのが良いと思います。後方は私の騎士達でガードすれば良いでしょう。大量の魔物が後方から来た場合はエリス様に活躍いただき、撃ち漏らしは騎士達、そして最終防衛はカミト様にお願いしたく。いかがでしょうか?」

 カミラ姫は戦いに詳しくないはずだが、すんなりとアイデアが出てくることに驚きを隠せない。そしてそのアイデアは間違っていない。

「そうですね、そうしようと思います」


 静かな深夜。予想通りアンが前方に大量の魔物を発見する。といっても本人ではない。複数の死霊達が同時に戦いを開始したのだ。

「魔物の集団を発見しました! 前方300m先で戦闘を開始しています!」

「わかった!アリエッサは魔法を、エッジはいつも通り二人の防御だ!」

「騎士達は後方を警戒してください!」

 俺とカミラ姫は指示を飛ばす。ついに来たか。


「後方も戦闘を開始しました!」

 アンの声が聞こえる。やはり挟撃してきたか。

「エリス、後方で暴れてきてくれ」

「わかった」

 事前の打ち合わせ通り、エリスが馬車を飛び出していく。周辺はアリエッサが放つ魔法の爆発音が鳴り響く。



「さて、予想通りの展開ですね。ここからどうなるか…… まあ間違いなく撃ち漏らしは出ると思うので馬車が壊されないと良いのですが。カミト様は馬車の前方で待機いただけますか? 撃ち漏らしを倒していただければと」

「承知しました。しかし中の警備は大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です。私の魔法もありますし。何かあればお声がけします」

 俺は馬車を降り、周囲を警戒する。まだ近くに魔物は来ていないようだ。

 キン。突然殺気を感じ、剣を生み出した俺は飛んできたものを叩き落とす。どうやら矢のようだ。

 いつの間にか周辺には矢や剣を構えた兵士が5名、俺の方を向いている。

「おいおい、そんな武器で俺を倒せると思っているのか。舐められたもんだな」

 俺は周囲に気を配りながら話しかける。


「流石に我々もそこまで馬鹿ではないぞ。こうするのさっ!」

 5名の兵士達は一斉に何かをポケットから取り出し馬車に投げつけた。爆発物だろう。まあテロ行為の定番だな。俺は冷静な頭で考えながら魔法を唱える。

「タイムストップだ」

 時が停止する。時間に余裕はない。俺は全ての爆発物を回収すると遠くに投げ捨てた。2秒後、全てが元に戻る頃には爆発物は遥か彼方で爆発するのだった。


「何っ? 何をした!?」

「さあな。さて、大人しく降伏するか? 今なら命だけは助けてやるぞ」

「不要だ。我々は失敗した場合どうするか決まっている。王家に死を!」

「「「「王家に死を!」」」」

 突然5名は叫ぶと同時に崩れ落ちた。自決だろう。やられたな。全員苦しそうな表情をして死に絶えている。毒物を使ったのだろう。俺は更なる調査をしようとした。


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