第2の敵襲
「敵襲です! 前方から魔物の大群が押し寄せています!」
夜、俺はチーム用の馬車で寝ているとアンの大声で目を覚ます。
また襲撃か。俺は馬車を飛び降り、大声で指示を出す。
「わかった! アンはネクロマンサーで敵を粉砕してくれ! アリエッサもアンの指示に従って魔法攻撃を加えるように! エッジは二人の護衛だ! 俺とエリスは夜はあまり得意ではないので姫様の近くで待機する!」
「「「「了解です!」」」」
激しい爆発音が聞こえる。アリエッサがフレイムの魔法を連発しているのだろう。
「敵は、キラービーのようです! 全てこちらに向かっています!」
騎士から報告が上がる。
「キラービー? 夜行性ではないですよね?」
「ええ、昼に活動する種類です。やはり何者かに操られていると考えた方が良いかと」
カミラ姫の疑問に俺は回答する。
カキン、カキン。剣の音が聞こえる。騎士達が戦っているようだ。騎士は夜の護衛も行うため、夜に活動している訓練もしている。俺とエリスも対応できなくはないが、剣や魔法で味方を攻撃してしまったり、攻撃に巻き込まれるリスクがある。
時々聞こえる粉砕音はアンの死霊たちだろう。俺達のチームでは夜はアンの独壇場だ。死霊達の力はパワーアップし、召喚できる数も日中より多い。キラービーなら対応できるだろう。
とはいえ、俺とエリスは念のため撃ち漏らしがやってくる可能性を考え周囲を見渡しながら警戒する。
「攻撃を受け、騎士の1人がダウンしました! 命に別状はないですが戦闘継続は不可能です!」
新しい情報が飛び込んでくる。少し押されているようだ。とりあえず俺にできることは全員の無事を祈ることと、敵の撃破を願うことしかない。
数十分後、戦闘音が止んだ。
「全ての敵を撃破できたようです。私は斥候の探索に向かいます」
「ありがとう。頼んだ。エッジとアリエッサは無事か?」
「ええ、問題ありません。やはりエッジの防御力は素晴らしいですね。安心して攻撃できました」
アンは吸血鬼の特徴を活かして斥候を探してくれるようだ。夜目が効くのはありがたいな。
俺たちはその間に馬車周辺の調査を行う。
焼けこげた後と、大量のキラービーの死体が転がっている。やはり激戦だったようだ。
5人の騎士のうち1名がキラービーに刺され重症を負ったとのことで倒れている。アリエッサのヒールで回復したがしばらくは動くことはできなさそうだ。
「革命軍はキラービーにも先ほどと同じように首輪をつけたのでしょうか?」
「いえ、確認しましたが首輪が付いていた個体はいません。キラービーは何かを求めているようでした。この馬車に仕掛けがあったのではないかと推測します」
カミラ姫の疑問にアリエッサが答える。
「キラービーにしかわからない匂いなどがあるのかもしれないな。この馬車は交換した方がいいかもしれないな」
「そうね。朝になって行商人が通りかかったら交換してもらいましょう。王家の力を今は使った方が良さそう。少し辛い移動になるかもしれないけど…… 仕方ないね」
しばらくしてアンが帰ってきた。
「私の死霊達が苦戦していました。かなり強いキラービーだったと思われます。また、斥候と思われる者を1名確保しました。残念ながら戦闘になり、殺してしまいましたが遺体は回収しています」
そういうと死体をこちらに渡す。
「ふむ。普通のドワーフだな。奴らも夜目が効く者がいるわけではないから近くで見ていたのだろう。よくやった。こいつもサクラに連れて帰れば何かわかるかもしれないな」
「彼らは秘密主義なのであまり期待はできませんが、念のため持って帰りましょうか。革命軍が回収を企む可能性があるのでそちらの馬車に入れておいてもらえますか?その方が安全でしょう」
「ああ、わかった」
カミラ姫の依頼に俺は応える。死体と寝るのはあまり好きではないが数日の我慢だ。
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「報告、キラービー、全滅しました! 敵に夜活動できる種族がいたようで、斥候も一名確保されました! ただ斥候に関しては既に死亡済であることを確認しています!」
斥候の報告が革命軍の拠点にもたらされる。
「わかった。やはり夜も活動できる奴がいたか。まあここまでは想定通りだな。夜ならと淡い期待を抱いていたが流石に甘くはなかった」
冷静に感想を言うナーダ。
「うん、まあ想定通りだよ。斥候が捕まったのは残念だけど…… 仕方がない。切り替えて第3の攻撃だね。しかし向こうも流石に僕たちが居場所を特定して攻撃していることはバレているだろうに、問題なく連絡役と打ち合わせできるのかい?」
「ああ、奴らに気づかれることはないだろう。ルートが変わっても問題なく対応できる」
「わかった。楽しみだね。この攻撃には色々な方の期待がかかっているからね。何とか成功させたいよ」
「スポンサーか?」
「そうだね。結構な資金を支援してもらったんだ。まあ成功率はそれほど高くないと言っているから失敗しても大丈夫だと思うけどね。ただ何かしらの成果は残したいね」
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