レナ、夢の羽に臨時加入 〜前編〜
夢の羽の集合場所に向かう。
「おはよう、ギリギリになってすまない」
「大丈夫だよ。ところで隣の人は誰?」
「ああ…… この人は銀の雫の店員、ミオさんのお姉さんでレナさんだよ。普段は領主の騎士をしている」
「そうなんだ。初めまして、マルクといいます」
「アズサです」
「ライエルです」
「あ、初めまして。レナです。普段は領主の騎士をしています。今日は休暇中なので、カミトさんに訓練を手伝ってもらっていました。あのーせっかくの機会なので一緒に依頼を受けることは可能ですか?」
レナは俺たちと依頼を一緒にしたいようだ。こっちを見てくる。俺としては問題ないが……
「俺としては問題ないけど…… どれくらいのレベルなんですか?」
「えーっと、冒険者のレベルで言うと4かな。騎士だからそこそこ役に立つと思いますよ」
「おお、LV4ならありがたい。それは是非一緒にやりましょう」
ライエルの一言で、レナと臨時チームを結成することが決定した。
「なら、今日は少し難しい依頼を受けたいわね。せっかくだし」
その後、レナの保有魔法を教えてもらう。レナの保有魔法は騎士らしく剣の切れ味をあげる「カット」、煙幕をはる「スモーク」、そして最後は切り札としての「バーサーカー」とのことだ。バーサーカーは、攻撃力と防護力を大幅に向上させる代わりに一定時間が経つと錯乱状態になる危険な魔法である。ヘッズオブドラゴンでエリスが保有している魔法のため、発動後の面倒な後片付けは何回も経験している。正気を失って暴れるエリスを止めるのは非常に苦労した。レナがバーサーカーを使う状況にならないことを祈りたい。
そして全員で話しあった結果、今日の討伐対象の魔物はケンタウロスに決定した。斧を持っており、戦闘能力が極めて高いことからLV4相当に設定されている。ただ、良い点は1匹で行動するため、複数匹と同時に戦うリスクが低く、集団で攻撃すれば勝てる可能性は高い。
「まあ5人で攻撃すれば倒せない魔物ではないだろう。ただある程度連携を高めた上で挑みたいな」
「そうだね。まずは弱い魔物で練習してから挑むようにしよう」
ライエルの主張に同意するマルク。まずは連携か。レナの特徴を把握しておかないとな?
「レナさんは近距離攻撃が得意ですか?」
「そうですね。剣による攻撃と盾による防御が得意領域です。遠距離攻撃も弓矢は扱えますが、それほど得意とは言えません」
俺の問いかけに丁寧に答えてくれるレナ。近距離攻撃が得意ということは俺とライエルと同じような立ち位置になるわけだな。マルクはより防御に専念してもらうのがいいか、それともマルクとレナで防御を担ってもらうか、そのあたりは実戦で判断した方が良さそうだ。
ギギギ。森を歩いていると早速大量のゴブリンと鉢合わせる。ちょうど良いウォーミングアップだ。
「各自、個別に撃破だ!」
俺たちはライエルの指示に従い、1匹ずつ向き合って退治する。ゴブリンは油断さえしなければLV1の冒険者でも簡単に倒せる敵だ。グサッ。俺は剣を突き刺し1匹倒すと周りを見渡す。うむ、当たり前だが全員苦労はなさそうだな。レナは1匹倒すと返す刀でもう1匹討伐していた。やはりLV4相当というだけあって強い。
「ふう、まあ流石に楽勝ね」
「ああ、この調子でどんどん行こう」
俺達は軽口を叩きながら討伐証明部位を回収し、森の奥へ進んでいく。
順調に進んでいくと、オオオ。ドシドシという音と共に、オーガが現れた。
「オーガか。ちょうどいいな。レナさん、先陣を切ってもらえますか?俺達はサポートするので」
ライエルはここはレナに任せたいようだ。確かにレナの実力を見るには良い機会だろう。
「わかりました。では行きます。カット!」
剣の攻撃力を高め、レナが突進する。ズサッ。ズサッ。ズサッ。切れ味のよい攻撃がテンポよく続く。オーガの攻撃は躱しながら切りつけ続けている。
騎士というのは防御力と攻撃力の両面で優秀な者が多い。主人の移動時に警備を担うことと魔物退治を担うことが多いため、両方の能力が必要とされるからである。それもあり、冒険者と比較すると騎士はバランス良く優秀な者が多い気がする。
ちなみに、冒険者のリタイア後の仕事として騎士になるものや有力者のボディガードになるものは多い。危険性は下がるが能力と経験は重宝されるためである。王族の警護ともなると冒険者時代LV6やLV7だった者が務めているそうだ。そして騎士は立場ゆえ、優雅さや華麗さも求められる。LV10になった際の王への接見時に手合わせをすることになったが、極めて綺麗な剣筋に驚いたのを覚えている。
「よし、俺らも支援に行くぞ」
俺とライエルも攻撃に参加する。上手く位置が被らないように調整しながらヒット&アウェイだ。そしてマルクが盾でオーガの攻撃を受け止める。その瞬間3人で猛攻撃を行う、という作業を繰り返した。
グググ。10分超の戦闘でオーガは倒れた。
「ふう、やはりレナさんがいてくれたおかげで早かったね」
「遠距離攻撃するまでもなかったわね。おかげで見てるだけだったわ」
「前線の3人の攻撃がもっと合えばもっと早く倒せたかもね」
「そうですね。ただ皆さん強くて安心して戦えました」
戦闘を振り返りながら討伐証明部位を確保し、肉を剥ぎ取る。この感じならケンタウルスも余裕で倒せるかな?しかし戦闘中から妙にレナの視線を感じる。目を向けると逸らされるがこっちをチラチラと見ているようだ。何か気になる点があるのか?
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