ミオの姉、レナとの遭遇

 今日は少し寝坊したので、家から直接冒険者ギルドへ向かう。今日はどんな依頼を受けるのが良いかな。そんなことを考えながら冒険者ギルドに到着すると、併設するバーにミオが一人で座っているではないか。今日はカフェ休みなのか? 声をかけてみることにした。

「ミオ、どうしたんだ? 今日は仕事は休みなのか?」

「…… すまない、誰か教えてもらえるだろうか?」

 あれ? 見た目はミオだが、声がミオと違ってクールな感じだ。別人か? よく見てみると髪の長さや全体の雰囲気も違う。


「すいません、人違いですかね」

「ああ。ただ、ミオは私の妹だ。見た目が似ているからよく間違えられるから大丈夫だ。私はミオの姉のレナという」

 ああ、昨日ミオが話していた姉か。領主の騎士をしているんだったか。


「ああ、ミオから聞いたことあるかもしれません。領主の騎士をされているお姉さんですか? 自分はカミトと言います」

「そう、私は領主の騎士をしているんだ。しばらく領主の出張に合わせて付き添って警備をしていたんだが、帰ってきたので休暇をもらっているのさ」

「なるほど。朝からお酒ですか?」

「ん? いや、お茶だよ。冒険者ギルドにいるのは…… ちょっと強そうな人を探していてね。良い奴がいたら訓練に付き合ってもらおうかと思ってね」

「ああ、そうなんですね。バーで飲んでいるのかと思いましたよ。休みの日にも訓練とは真面目ですね」

「それくらいしかすることがないんだよ。まあ真面目さでいうと、長女はもっとすごいぞ。王都で飲食店を経営しているんだが、まさに堅物、という感じだよ。今ちょうどサクラに帰ってきているから機会があったら紹介してやりたいよ。魔物と話す方が楽しいレベルだがな」


 もうミオには一人姉がいるのか。しかし王都で飲食店を経営しているとはすごい。王都は世界中から様々な種族を集める場所であり、スーパーエリートばかりだと聞いたことがある。その中で経営するのは…… 確かに普通ではないのかもしれないな。


「ははは、是非一度お会いしてみたいです」

「うむ。ちなみに姉もミオと私にそっくりだ。子供の頃は三つ子とよく間違えられたよ。そうだ。これも何かの縁。私と少し訓練をしないか?」

 時計を確認する。まだ集合時間までは少し時間があるな。

「良いですよ。あまり時間がないので軽くで良いですか?」

「ああ、すぐ訓練場に行こう」

 俺とレナは冒険者ギルドの隣にある訓練場に向かった。24時間空いている便利な場所だ。ただ、色々な冒険者に見られるので少し恥ずかしいが。


 キン、キン、キン、訓練用の剣で軽く打ち合う。

「ふむ、綺麗な剣筋だな。よく訓練された剣筋だ。この剣筋で本気で打ち合えるなら騎士にもなれるよ」

「ありがとうございます。剣には少し自信があるんです」

「よし、じゃあもう少し強く打ち合おうか」

 キン、キン、キン。レナの剣筋もすごく綺麗で、まるでエリスを彷彿とさせるような美しい剣だ。ただ、スピードが遅いのとフェイントがあまり上手くないのでそこまで強い剣士ではないな。俺はそんなことを考えながら、少し本気を出して見ることにした。


「むっ。少し剣筋が変わったな」

「ええ、少し本気を出してみました。どうでしょう?」

「うーん…… 可能性はあるな……」

 レナは何かを考えている。


「あ、もうそろそろ集合時間です。終わりにしないと」

「あ、ああ。ありがとう、ございました……」

 急にレナが敬語になった。ん? 急に他人行儀か? 何か変な勘違いをしているか?

「どうしました?」

「あ、いや…… 気にしないでください」

 気にしないでと言われても非常に気になるのだが……


「あ、そういえば質問なのですが」

 片付けの最中に、レナからの問いかけ。なんだなんだ?

「はい、なんでしょう?」

「ミオとはどういう関係なのでしょうか?」

「ああ、よく行くカフェの看板娘と常連の関係ですよ。ミオさんはいつも明るくて優しいのですごい人気なんですよ!」

「ああ、そうなんですね。それはよかったです」

「ちなみに、なんで敬語なんですか?」

「ああ、いえ色々ありまして……」


 レナが急に敬語になった理由はわからないまま、俺たちは訓練場を後にするのだった。

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