第25話 グー爺からのお願い

 ゴブリンジェネラルとゴブリンメイジが倒れたのはほぼ同時であった。

 二つを隔てていた『サンドウォール』を無くし、リュウト達は合流していた。


「アクモ達も無事だったか!」

「タナががんばってくれたからね・・・!」

「私はできることをしたまでです」


 戦いの様子を話しているところへ、普通のゴブリンを相手にしていたグー爺もやってきた。

 リュウト達の身体がボロボロなのに対して、グー爺はいつも通りだ。


「よくぞ倒した。君たちの成長を感じられて、ワシは嬉しいぞ」

「かなりダメージを受けましたけど、ギリギリ勝つことが出来ました」

「早く回復させた方が良さそうじゃ。・・・そこにいる男達もな」


 グー爺の視線の先にはゴブリンジェネラルによって倒された二人の冒険者がいた。

 バートンとスロアだ。

 ボロボロのリュウト達と意識のないバートンとスロアを、グー爺の回復魔法によって一瞬で回復させたのだった。


「やっぱりグー爺の魔法はレベルが違うなー」

「ほっほ。君たちも修練を積めばこれくらいたやすくなるはずじゃよ」


 リュウト達は問題なく回復されたが、バートンとスロアは目を覚まさない。

 身体に傷は無く呼吸もできているにもかかわらず、意識が戻らないのだ。


 これにはウラノやアレスも心配そうに様子を見ている。


「どうしちゃったのかな?」

「まさかグー爺の魔法でも回復できなかったのか?」

「それはないと思うがのぉ・・・。一度詳しく調べた方が良いかもしれん」


 グー爺とはいえ、その人がどんな状態にあるのかまでは分からない。

 そのようなスキルや魔法などは持っていなかった。


 冒険者の心配をするリュウトはグー爺に尋ねる。


「どうしたら調べられるんですか?」

「北に行くと『ヒューリッテ王国』という大きな国がある。そこに行けば詳しく調べられるじゃろう」

「人がたくさんいれば、それに特化した力を持っている人もいるかもしれないってことか」

「そういうことじゃ」


 リュウト達は二人の冒険者を助けるために、ヒューリッテ王国に向かうこととなった。

 しかし、ここで一つの心配事がリュウトの頭に浮かんだ。


「そういえば、魔物を連れて行っても大丈夫なのか?」

「国に入ることは出来るはずじゃ。ただ王都といった大都市に入るのは難しいじゃろうな」

「まあ行けるとこまで行こうか」

「あ、そうじゃ。言い忘れていたことがあった」

「何ですか?」

「ワシはここでお別れじゃ」


 突然の別れを告げられたリュウト達は目が飛び出るほど驚いていた。

 当たり前のように、グー爺も一緒に王国へ行くと考えていたからだ。


「そんな・・・」

「いきなりすぎるよー」

「私たち、何のお礼もしていないのに!」

「寂しいですね」

「俺はまだ一度も勝ってねぇのに」


「そんな事を思ってくれて、ワシは嬉しいぞ」


 リュウトは別れることが辛いということよりも、何も恩返しできていないことが嫌だった。


「グー爺!俺達に何か出来ることはありませんか!」

「そんなものないぞ。ワシは魔法を教えたかったから教えただけじゃ。お礼など要らぬよ」

「何でもいいんです!どんな些細なことでも!」

「うーん・・・」


 グー爺はリュウトの様子を見て折れた。

 何かお願いをしないと引いてくれないと感じたのだ。


「そこまで言うなら仕方がないのぉ」


 その時、グー爺の目が赤く光り始める。

 その赤い目のまま、リュウト達に対してお願いをした。


「王国に悪魔が現れたとき、聖女と聖母を拘束してほしい」


「そんなことでいいんですか?」

「いいんじゃよ。そんなことで。聖女と聖母は有名人じゃから、すぐにどんな人か分かるはずじゃ」

「わかりました」

「頼んだぞ」


 お願いを言い終えたグー爺の目は、元の黒い目に戻っている。

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