第23話 ゴブリンメイジ2

~ゴブリンメイジサイド~


 アクモとウラノは大きなダメージを受けた。

 次の攻撃に備えて一度距離を置きたいが、立つのがやっとで動けていない。


「うぅ・・・」

「やばいなぁ・・・」


 その間もゴブリンメイジは力を溜めている。

 タナはこの状況に焦っていた。


「逃げられませんか?!」

「立つので精一杯かな・・・」

「私も飛べそうにないよ・・・」

「分かりました。では、その場で魔法の準備をしていてください」


 タナが指示をしたのは攻撃の話。

 しかしこれからゴブリンメイジによる魔法が飛んでくる。

 その対処をどうするのか気になったアクモがタナに尋ねた。


「次に来る攻撃はどうするの・・・?」

「それは私が何とかします。魔法の防御に関しては、私が一番適任でしょうから」

「わかったよ。・・・タナのこと、信じるね!」

「はい」


 アクモとウラノに「何とかする」と伝えたタナ。

 しかしその内心は不安でいっぱいだった。

 2体には聞こえないように、弱音を吐く。


「・・・この作戦が一番可能性が高い。・・・でも確実じゃないのよね。やるしかないんだけど」


 アクモとウラノが魔法を使うために力を溜め始める。

 その時、ゴブリンメイジの魔法が完成した。


「コレデ、モウ、オワリダ」


 ゴブリンメイジの頭上には、無数の火の玉が用意されている。

 一つ一つがファイアボールと同じなのだ。


「火魔法・第二階位『火雨フレイムシャワー』」


 ゴブリンメイジによって、ファイアボールが雨のように降り注ぐ。

 一つのファイアボールには、エクスプロ―ジョン程の威力は無い。

 ただ数が多いため、相当なダメージを受けることになる。

 アクモとウラノは既にダメージを受けているため、『火雨フレイムシャワー』に対処しなければ命が危うい。


「コレダケ、カズガアレバ、フセゲナイダロウ」

「そんなことはありません。『分身』」


 タナのスキルは『分身』。

 自身の力や魔力などを分け与えることで、全く同じ姿の分身を生み出す。

 もちろん魔法やスキルを使うことも可能。


「ザコヲフヤシテモ、ナンノイミモナイ」

「そうでしょうか」


 タナと分身体は魔法のために力を溜め、発動する。


「「闇魔法・第一階位『ダークホール』!」」


 アクモとウラノの頭上に二つのダークホールがつくられ、火の玉を吸い込んでいく。

 しかし二つだけで防ぎきれるわけではない。

 そこでタナは、さらに分身を生み出す。

 最初に生み出していた分身も分身した。

 そして4体のタナで魔法を使う。


「「「「闇魔法・第一階位『ダークホール』!」」」」


 先ほどよりも多くの範囲を防ぐことが出来ている。

 タナはさらに分身を生み出し、魔法を使う。


 何度も繰り返し行うことで、頭上には『ダークホール』がいくつもつくられている。

 そのため、地上に火の玉が届くことは無くなった。


「ナゼ、ソンナコトガ・・・!」


 『ダークホール』は相手の魔法を防ぐだけでなく、魔力を吸収することが出来る。

 そのため、『分身』で魔力が半分になったとしても、『ダークホール』のお陰ですぐに元の魔力量に戻るのだ。


「相手の攻撃は防ぎました!あとはアクモとウラノに任せます!」

「ありがとう・・・!」

「任せてよ!」


 タナが全ての攻撃を防いてくれたおかげで、アクモとウラノは魔法準備に全力を注ぐことが出来た。

 ゴブリンメイジは『火雨フレイムシャワー』で倒しきることができると思っていたため、魔法を防ぐ準備をしていない。

 隙だらけだった。


「雷魔法・第一階位『サンダーショック』・・・!」

「氷魔法・第一階位『アイスボール』!」


「ワレガ・・・コンナザコニ・・・マケルハズガ・・・」


 2体の全力が注がれた魔法がゴブリンメイジに直撃。

 白目をむき、背中から倒れた。

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