第7話
アルヴィンはアルヴィンで、頑張ってフィオナとの仲を修復しようと必死だった。
妊娠してからは、なるべく一緒にいるようにし、その身体を気遣った。
妊婦にいいという食べ物を取り寄せたり、胎教に良いという物は何でも手に入れた。
フィオナともなるべく会話しようとし、その度に愚かだった自分の言動を態度を謝罪した。それこそ、何度も何度も。
だが、その気持ちはフィオナには正確には伝わっておらず、「あぁ、この子を無事に産んでもらいたくて必死なのね」としか思われていないようなのだ。
そんなフィオナに「好き」だとか「愛している」などと言えるわけもなく、言ったところで伝わるはずもないだろうと一人涙で枕を濡らす日々。
妊娠してから・・・というより、初夜以降、既に寝室は別々にされてしまっていたのだから、致し方ない。
それもこれも全て、自分が悪いのだから。
結婚しているのに、まるで片思いしてるみたいだ・・・・
あぁ、ルヴィアンがそんなこと言ってたな・・・言いえて上手い例えだ・・・
とっても悲しいけど・・・・
国王と王妃の仲が今一つ上手くいっていない事は、貴族間では有名だった。
その所為か側妃を薦める貴族も出てきて、鬱陶しい事この上ない。
誰がフィオナ以外の女と結婚するかってんだ。
ルヴィアンにも、出産前までにフィオナを口説けと言われている。彼女は妃としての能力もずば抜けているから。
だが口説くも何も、一緒に居ても会話が続かないのだ。
彼女に会う度に彼女に恋しているというのに、伝わらない気持ちと、その切なさに既に心が疲れてきている。
昨日よりも今日、今日よりも明日、きっと彼女は美しい。
そんな彼女と毎日会って、恋をするのだ。とても不毛な恋を。
最近では、この関係の修復はもう無理なのではと考えてしまう時がある。
彼女は離縁を楽しみにしている。その為に、好きでもない自分と子供を作ったのだから。
ならば彼女の望むとおりに離縁してやる事が、自分の示せる誠意なのではとも思い始めたのだ。
だが、彼女に会いに行こうと思っただけで、悲しいかな心が浮き立つ。
会っても相手にされず、辛いだけなのに。
今日もこれからフィオナに会いに行く。そう考えただけでドキドキする自分が、なんだかただの道化のように思えてくる。
そんな事を考えながら、今日は庭に居るというフィオナの許へ近づくにつれ、女同士キャッキャと何やら楽しそうな声が聞こえてきた。
あぁ、マリアか・・・・二人は本当に仲が良いな・・・
そんな事を考えながらフィオナを探し、思わず足を止めた。
遠目から見てもわかる。マリアがフィオナのお腹に顔を付けているのが。
そして聞こえてくる歓喜の声。
「フィオナ様!動きました!!私、顔を蹴られちゃいましたよぉ」
「まぁ、きっとマリアが好きなのよ。今から遊んでるつもりなのかもね」
「そうでしょうか・・・なんだか、嬉しいです!」」
―――・・・・え?
アルヴィンは初耳だった。腹の子が、動いているなんて。
誰も、誰からも、そう、フィオナからも聞いていない。
毎日毎日顔を合わせているのに。
アルヴィンの顔からは表情が抜け落ち、うつろな眼差しで二人を見つめるのだった。
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