陽は昇らずとも群星は輝く#3
アルクは、歌と共に自身へ語りかける。
これは私の最後のステージ。
寂しくなんて終わらせないわ。
誰も置いてきぼりになんてしない。
この世界が負けたのは事実。
でも・・・だからと言って終わりが暗いってのは決まっていないわ。
決して美しくなかった世界だけど、いま、私の眼下に広がる景色は、こんなにも美しい。人々が魅せる命の輝きはこんなにもきれいなの。
だから、怖がったまま、怯えたまま、絶望したまま終わるなんてもったいない!!
でも・・・・・・ごめんね、エルス、ミュー、ジャンヌ。
あなた達にあんな辛い計画を押し付けてしまった。あなた達には「象徴」だからっていったけど本当は違うの。
私は・・・もう戦いに疲れちゃったのよ。もう楽になりたかった、向こうに世界で待つあの子達の元に行きたかった。
・・・レリアに会いたくなったの。
きっと彼女は怒ると思うけど、必死に謝るつもりよ。うん、許してもらえるまでね。
・・・そのためにも、今は歌い続けるわ。
文字通り、
言葉通り、
この命すべてをかけ、
私のため、
残された数少ない人類のために。
私の歌は痛みを和らげる麻酔なんかじゃないけど、人の心を動かし、沸騰させることが出来る。
怯えたままの最後なんて許さない。
恐怖に支配された最後なんて許さない。
絶望の最後なんて許さない。
そんなこと、奏者の英傑が許していいはずがない。
・・・えぇ、私が許さない、許してたまるか!皆、皆、皆、連れて行く。この世界も最後は悪くなかったって思わせてやる!
このステージは終わらせないわ!
タイムリミットを知らせるサイレンが街に鳴り響く。
しかし、それを聞く人なんていなかった。
熱は収まることを知らず、人々の興奮は最高を更新し続ける。
その中心には、命を燃やし最後まで人々のために戦い、歌う女性がいた。
太陽が沈み、堕ちていた人々に夜空の星々による光があることを歌い続ける女性がいた。
英傑として授かった名の意味を示すため歌う女性がいた。
未来を託された仲間のために歌う女性がいた。
・・・親友への謝罪のために歌う女性がいた。
これが、人類を守るために戦った英傑たち、その最後の一人が魅せる生き様。
光翼から放たれる力を行使し続け、遂に彼女の声が音が光が地球を覆い、熱に満たされた時、
終わらない歌が始まる。
そして
「世界のみんな!!!誰も置いていかないから、安心して付いてきてね!さぁ、いくわよ!」
文明は**された。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数万年後
ユーラシア大陸連邦旧モンゴル地区
崩落した建物、
燃える木々、
纏わりつくような黒い霧、
その中を若い男が息を切らしながら走っている。
戦場に向かう戦士たちの波の波をかき分け。
瓦礫の山を飛び越え。
街を燃やす炎を潜り抜け男が走り抜けていく。
そして、作戦本部に駆け込み、スキンヘッドで筋骨隆々の大男の元へ滑り込むようたどり着いた彼は敬礼を行った。
「ガラナ
ガラナと呼ばれた大男は空を仰ぎ、若い男に尋ねる。
「はぁ・・・。堕ちてしまったか。・・・その戦場はどうなっている。」
「現場に居た
「クソッ!協会からの増援はまだか!」
大男は、転がっていた缶に怒りをぶつける。その直後、彼の後方にて機械に囲まれヘッドセットをした少女から言葉が飛ぶ。
「ガラナ隊長!協会からの増援連絡です!」
「やっとか!それで、誰がくる?」
「フィア様です!」
「よし!それまで何としても耐えるのだ!ミア!フィアはいつ来る?」
少女は大男の問いに慌てて確認を行う。そして信じられないような表情をし立ち尽くしてしまっていた。
「どうしたミア?」
「もう・・・この上空にいます。」
「な、なにぃ!?相変わらず規格外すぎる!全隊員に大至急伝えろ!物陰に隠れるんだ!!!」
一方そのころ、戦場を見渡すことが出来るほどの高度の上空では金髪の少女が戦場を見下ろしていた。
黒い靄が広がりを見せる街は至る所が破壊され、火が上がっているのを確認することが出来た。
少女は腰に帯刀している変わった模様の鍔をした刀を抜き、峰を自身側にし刃を下に向けた状態で胸元まで運んだ。
まるで祈りを捧げるかのように目を瞑り、両手で柄を握る。
そして、少女は遠い昔の英傑たちと同じ言葉を呟く。
人々を護るために。
「・・・
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