第6話 高嶺の花

それから、雫は俺の所に頻繁に訪れることになる。


だが、彼女が来ても俺は軽くあしらう。


そんな毎日が続いた。


俺との日々はそんな感じだった。



雫が、高嶺の花と呼ばれるようになったのは入学して間もなくしてからだった。


何人もの男子から告白を受け、告白を断る。


それから、少しずつ男子とは会話を避けるようになっていく。


会話をしても一言二言。


そこでついた渾名が、『高嶺の花』。


なのだが、俺に対しては変わらない。


まあ、俺の雫に対しての対応も変わらないが。


この一年、俺達は会話をするだけの仲だった。


それを、壊したのは今日の一件なのだろう。


なんだか、めんどくさいことになりそうだなと思う。



俺は、ファーストフード店を出てゼミへと向かう。


結局、ゼミの開始時間までに勉強はできなかった。


雫の所為だ。


そして、教室に入る・・・えっ。


教室に入ると雫がいた。


なぜいる?


彼女は、手を振って隣の席を指差すが俺は別の席に腰を下ろした。


それを見て、雫が席を移してくる。


「なんで、横に来てくれないんですか!?」

「いや、俺は勉強しに来たんだ。別に、いいだろ」


雫は、頬を膨らませていた。


なんだ、そのあざと可愛い仕草は。


・・・ん?可愛い?


俺は、どうしたんだろう。


「じゃあ、これからは私の方から席近づきます」


これは、諦めてくれない気がする。


彼女は、どうしてこんなに強引なんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る