魔王のタイムリープ戦記
タイシンエル
プロローグ
第1話 敗れた魔王
俺様は世界征服を企んでいる魔王である。その為には、目障りな敵を滅ぼしたり無能な部下をも切り捨てたりしてきた。しかし、今は俺様の城に最大の敵である勇者一行が乗り込んで来やがった。
「やっと見つけたぞ! 魔王!」
「ふん。よくぞ、ここまで辿り着いたな下等生物共よ。よかろう、この魔王である俺様が返り討ちにしてやろう」
こいつらは、三メートルもある扉をこじ開けて入って来た。しかし、俺様が育てた優秀な部下を何人も殺して来たので少しばかり興味が湧いているのだ。
「覚悟しろ!」
すると、奴らは俺様に向けて攻撃を仕掛けて来やがった。奴らのパーティーは、かなりバランス良く構成されていると感じる。俺様が見る限りでは、剣士の勇者と戦士の男が攻撃要員として配置されており、補助要員に魔法使いの女と僧侶の女が配置されていた。
しかし、奴らの攻撃は俺様にとって全く微弱な技だと感じた。俺様は、物理攻撃と魔法攻撃の無効化に全属性の耐性と共に下級魔法から上級魔法などこの世にある全部の魔法が使えるのだ。
それだけでは無く、俺様にできない事は何も無い程の能力をいくつも有している。だからこそ、俺様はこんな下等生物に負ける事は無いと確信していた。しかし、奴らは俺様に屈する事無く攻め込んで来やがる。
勇者の男は、金髪で金色の鎧と剣を装備していた。そして、戦士の男は銀色の鎧と斧を装備して俺様に近寄って来た。はたまた、他の女二人は派手な髪色と洋服を身に纏って何やら変な詠唱をしていた。
「ふはは!! そんな技が俺様に効くとでも思っているのか!?」
「くっ!?」
俺様は、奴らの攻撃を何度も喰らっていても無傷で佇んだ。奴らは、それを見て悩み苦しんでいる様子だった。俺様は、奴らの絶望を抱いた顔を見て気分が良かった。
「ふははは!! ならば、この俺様からも仕掛けてあげようではないか!!」
俺様は、そう言った後に僧侶の女に目掛けて強力なパンチを喰らわせた。この攻撃は、黒い炎に包まれた闇属性の魔法も付与させた。だからこそ、この攻撃を喰らうと身体が麻痺したり嘔吐や眩暈などの状態異常に襲われるのだ。
「ぐふぁっ!?」
「アミ!?」
俺様は、アミと呼ばれている僧侶の女を身動きができなくなる程に苦しませた。そして、僧侶の女は俺様が殴った腹を両手で抑えながら地面に蹲っていた。
「ふははは!! 流石は下等生物だ。本気で無い俺様の技を喰らって蹲るとは滑稽だ」
「この野郎!? ぶっ倒してやる!!」
すると、今度は戦士の男が叫びながら俺様に斧を振りかぶって来た。しかし、俺様は遅すぎる攻撃を避けて顔面に蹴りを喰らわした。そして、奴は吹っ飛んで奥にある壁に直撃した。
「ぐはっ!?」
俺様は、攻撃要員である戦士の男と補助要員である僧侶の女を潰した事で相手の戦力を削ぐ事に成功した。そして、俺様は全身麻痺で苦しんでいる僧侶の女に足で踏みつけながら派手に笑い散らかした。
「お前ら如きが!! この魔王である俺様に勝てるとでも思っているのか!?」
「くそ……。こうなったら、これを使うしか無いかもな」
すると、勇者の男が何やら変な足を取り出していた。俺様は、何の石なのか気になったので鑑定スキルでその石を覗いた。しかし、その石には黒い霧で覆い被されているので探る事ができなかった。
その刹那、勇者は何かを唱えながらその石を掲げた。そして、その石は赤色に輝き出して周りを包み込むかの様に眩しくなりやがった。すると、俺様は全身が燃えるかの様な痛みに襲われた。
「ぐあぁぁ!? 熱い!? 熱い!?」
俺様は、こんな所で負ける訳にはいかないんだ。絶対に、絶対に世界征服を果たすって決めたんだ。だから、こんなちっぽけな石の力で負ける訳にはいかないんだ!
「うおぉぉぉ!! 負けてたまるかぁぁ!!」
俺様は、全身が焼け死にそうな程の痛みに耐える為に叫んで力を振り絞った。しかし、俺様の背後に誰か居る気配がした。なので、俺様は振り向くと戦士の男が斧を振りかぶっているのが見えた。
「これで終わりだぁ!!」
「いぎゃぁぁぁぁぁぁあああ!!」
この俺様が、あんな下等生物に身体を切られてしまった。やばい、力が出ない。結局、あの石は何だったんだ。俺様が、鑑定スキルで調べた時には黒い霧で隠されていたから何も対処ができなかったんだ。
くそ……。俺様が、俺様が死んでしまうと魔王軍は全滅になってしまう。何故なら、俺様以外は勇者に倒されているからな。あぁ、俺様は最後まで自分の事だけしか考えていなかったんだな。
今思うと、俺様は能力だけが強くて頭は悪かったんだな。しかも、俺様の部下達は忠誠心が高すぎる為にどんなに無謀な戦いでも喜んで立ち向かっていたな。
あぁ、終わったな。全身に力が伝わってこなくなった。俺様は、俺様は、もう死んでしまったのか……。くそ、もう一度だけでも生き返れば今度こそは世界征服を実現してやる。
しかし、自分の能力に溺れていたせいで付けが回って来たんだな。俺様は、そう思いながら真っ白になった視界と共に儚くなった野望を強く抱きまくったのだ。
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