第二章 辺境領主編
天界での一幕、神々の会話 その2
かくして、勇者の魂は新たな偉業を成し遂げ、王宮に認めれて王女と婚約。
その生涯を幸せに過ごしましたとさ。めでたしめでたし。
「めでたしじゃないが???????」
「ひぇ、なんですか大神様……やぶからスティックに」
天界より小世界を管理する神々。その一柱、生命と輪廻を司る女神ルチアス。
彼女は今、お気に入りの小世界を眺めなら大変ご満悦の笑みを浮かべていた。
そこの彼女の上司たる白髪白髭の老体、大伸が現れる。
「貴様……貴様あれほど言ったのにやりおったな!?」
「しりませーん!ちゃんと経験封印して勇者ではない一般人として生誕させましたー仕様書通りですー」
「ふっざけっ!? なんだあの《スキル》は!?」
「《スキル》に関しては指示はありませんでしたー」
ロイス・レーベン、女神ルチアスに気に入られたために2000回に渡り勇者として転生した人間。
知っての通り記憶は転生するごとにリセットするものの、魂が積んできた経験は蓄積される。
そうやってあらゆる生命は転生を繰り返し、魂を成長させていく。来世の世界をより良くするために。
だが勇者はという存在はあまりにも一度の人生で蓄積する経験値が大きすぎる。
だからこそ、勇者が転生する際に同じ魂を何度もリサイクルするような真似を神々は禁じてきたのだ。
一つの魂が突出して高い経験値を蓄積する。そんな存在はもはや人間から遠のく。
「見ろ、かわいそうに……精神がすっかり前世の影響を受けてしまっているではないか……」
「いいえ、それは違います。あの方の魂は例え経験を封印しても影響を止めることはできません」
それも事実。ロイスは《スキル》に覚醒する前から既に前世の影響を受けていた。
何をすればいいかはわからないが、何かをしなければならないという衝動。
それは勇者として世界を救い続けた彼の魂そのものに負ってしまった業。
「あの魂は人を救わずにいられないのです。ですが、あの世界は既に瘴気の発生が始まった危険な世界。力が無ければ何も守ることもできない小世界。力もなしにそのような生き方をすればすぐに死んでしまうしょう。それとも大神様は幾度となく世界を救った功労者に力もなく戦って死ねというのですか?」
「そうは言っておらぬ……」
「ならば、あの魂に見合った力を授けるのは必定。このルチアス、誓って越権行為は行っておりませんわ」
恭しく頭を下げるルチアス。
確かに彼女が与えた《スキル》はあの世界ではバランスブレイカーもいいところだ。
だがロイス・レーベンの魂にはそれだけの価値があることを大神は否定しない。
功には賞を持って報いるのは間違いではない。
だが…………
「そもそも二千回も勇者に転生させたのはお前の罪じゃいバカタレぇっ!!!」
今日も天界に眩い雷が降り注ぐ。
「まあ、ご安心ください。それはそれとしてちゃんと別の勇者は立てておりますので。魔王討伐はそちらがやってくれるしょう」
「勇者実質二人いる世界か……なんか魔王が可哀そうになってきたな」
「何を仰ります。ロイス様はこのまま順当に装備を揃えれば勇者より強いです」
「お前ほんと何してくれた」
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