121話 反動


「それだけの力。如何に神を降ろせる肉体であろうとその反動は相当なものだろう? ましてや貴様はその力を制御する為に脳の力を限界まで引き出すという無茶をしている」


 黄泉は自らの頭を指で示しながら俺の状態を話す。同時展開する為にした事を正確に把握されていた。


「八雷神の力で脳の潜在的な力を引き出す。言うは容易く行うは難しというが貴様のそれは今この瞬間に脳が焼き切れてもおかしくはない」


 黄泉は剣を手にしてこちらに迫る。同時に黄泉の門から数多の骸を伴ってくるが再び武具を翼から射出して骸達を蹴散らすと黄泉と鍔迫り合う。


「いつまでも戦える訳ではない。貴様が限界を迎える時は刻一刻と迫っている」


 鎧から骸の腕が飛び出して掴み掛かる。雷をを全身から放出して黄泉ごとふき飛ばすが離れた位置で再び奴の体が復元していく。


「ならば貴様が力尽きるまで待てばいい。貴様がどれだけ強大な力を振るおうと、千度我を砕こうと我を……死を滅ぼす事は出来ない」


 黄泉の全身から言霊が放たれる。双剣に光と闇を宿して振り抜き、迫る言霊を斬り払った。


「我は死の概念存在。この世に命ある限り必ず存在するものであり遠ざける事は出来ても失くす事は出来ないものだ……貴様が世界を滅ぼす力を持つとしても我を消し去る事は出来ない」


 黄泉の門から放たれる冷気が圧縮されて一直線に放たれる。光の障壁を展開して受けるが冷気は周囲を覆って一瞬で氷の檻を形成した。


「あとどれくらいであろうか? 仮に貴様が我の予想を超えて粘ったとしても百年でも千年でも殺されながら待とうではないか」


 檻を砕いて脱出すると黄泉が骸を束ねて巨大な杭を形成していた。杭は大気を穿ちながら俺に向けて鋭い先端で貫こうとしていた。


「う、おおお!!」


 迫る杭を白剣で両断する。刃から伸びた光がそのまま黄泉にまで届いて肩から腰を裂くがその傷も一瞬で復元していく。


「黄泉の門も同じだ。如何に外殻を破壊しても門そのものを破壊する事は出来ない。そしてこの器がある限りは何度封印しようと我の意志ひとつで開けられる」


 黄泉の門に再び骸や黄泉兵達が群がっていく。今度や四頭の龍の首を形成した黄泉の門は俺に向けて青白い熱線を四頭の龍の口から発射した。


 熱線を掻い潜る様に避けると背後にあった山が熱線によって抉れる。熱線を避けた直後に黄泉が剣を振るってきて受け止めた瞬間、熱線が黄泉ごと俺を呑み込んだ。


 宙で体勢を直しながら相対する。黄泉の門を背後に再び体を復元した黄泉が世界を見下ろすかの如く睥睨する。


「貴様が燃え尽きるまでを待つなど、われからすればほんの少しの時でしかない」

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